生鮮品や惣菜、日用品を専用車両に積み込んで販売する移動スーパーが、和歌山県紀南地方で拡大している。過疎地域だけでなく、市街地でも店舗が減り「買い物弱者」と呼ばれる高齢者が増えているためだ。ただ、業者側には運転手の確保や車両維持などで課題もある。

 「5枚切りのパンを取って」「今日はプリンないの」「ざるそばがあってよかった」―。田畑が広がる白浜町安居の空き地にJA紀南の移動スーパーが到着すると、すぐに10人ほどの高齢者が集まり、にぎやかな買い物が始まった。

 JA紀南は昨年11月から白浜町日置川地域と上富田町で移動スーパーを始めた。利用者の9割が高齢者。販売を担当する三木昌美さん(42)は「車が来るのを待ってくれていてうれしい。お年寄りとの会話が楽しい」と話す。

 移動スーパーは、山間部だけではない。田辺市の住宅街では、軽快な音楽を流し、移動販売車が走っている。

 同市を拠点にスーパーを展開する「たかす」が、移動スーパーの運営専門会社と連携した「とくし丸」だ。昨年6月に白浜町内で始め、今年2月には田辺市芳養地域を巡る「2号車」が誕生した。

 過疎地域で30年以上移動販売を続ける田辺市秋津町の浅尾商店は、町内会の要望を受け、2014年から上屋敷や中屋敷町など中心市街地でも営業している。固定客が付き、売り上げも堅調だという。

 浅尾商店代表の浅尾篤さん(69)は「今後さらに買い物弱者は増える。しかし、専門業者はいずれも高齢化し、車両も老朽化。車両の買い換えは中古でも仕様変更で費用負担が大きい。廃業を検討する同業者もいる」と指摘。「社会課題解決のため、行政は業者への助成を検討してもらいたい」と話している。

 JA紀南、たかすとも他地域から移動販売の要望を受けているが、専用車両や販売員の確保が難しいという。