小中学生に1人1台のタブレット端末が配備され、学校でICT(情報通信技術)を活用した授業の導入が進む中、和歌山県田辺市では専門的な技術を持つ「ICT支援員」が教員の「助っ人」として奔走している。

 「う〜ん」。大塔中学校3年生の総合学習の授業中、男子生徒がタブレットのキーボードから手を離し、頭を抱えた。来月、修学旅行で訪れる出雲大社(島根県)や鳥取砂丘(鳥取県)などの名所を調べ、紹介するスライドをグループで共同編集していたが、レイアウトがまとまらなかったからだ。
 すると、ICT支援員の柳原修さん(63)がすっと近づき、「ここを押してみて」と画面の一角を指さす。生徒が指示通りに操作すると、AI(人工知能)で最適なレイアウト例が表示された。「こんな機能があったんだ」。生徒は目を輝かせて、画面をのぞきこんだ。
 田辺市は本年度、ICT支援員を3人導入した。いずれも元教員で、ICT機器に精通しているだけでなく、学校教育にも理解が深いという。
 支援員は全39小中学校を回り、教員が授業に専念できるようサポートしたり、教員にICTを活用した授業づくりの提案をしたりしている。そうした支援もあり、授業での活用が広がっている。
 大塔中ではオンライン上で編集できる機能を使って、図や絵の入った行事の案内チラシを共同で作ったり、タブレットで分かりやすい学習ノートを作って共有したり。教科を問わず活用している。
 3年の宮野優波君は「数学でもタブレットを活用している。黒板と違って数式が消えないので、分からなかった部分を確認しやすい」、同じく3年の荒瀬心音さんも「ネットは家でも使うからなじみがある。みんなでの共同作業をもっとやってみたい」と新しい授業を歓迎している。
 柳原さんは「ICTの活用は目的ではない。大事なのはどのような授業がしたいかで、そのためにタブレットをどう生かすか。熱心な先生が多く、2学期に入って活用のレベルが上がっている。子どもたちも興味を持って取り組んでおり、これからの授業に無限の可能性を感じている」と話している。