かつて祖父が経営し、昭和30年代に和歌山県田辺市の文化交流の拠点だった旅館「愛和荘」の屋号を、孫の石山喜重子さん(46)が今秋、古民家ゲストハウスとして復活させた。上野山城跡の高台にあり、市街を一望できる立地。石山さんは「地域の新たな交流拠点にしたい」と意気込んでいる。

 田辺市古尾にあった旅館「愛和荘」は、故・田内栄一さん(1923〜2008)が「市の文化発展のために」と1957年に創業。営業したのは10年ほどだったが、国内外の著名な文化人が訪れ、マスコミにもたびたび取り上げられた。
 木造3階だった旅館は残っていないが、隣接していた築100年ほどの古民家を改装した。1人で暮らしていた石山さんの祖母が老人福祉施設に入り、空き家となったため、地域のために活用できないかと考えたという。
 祖父の残したスクラップブックや写真アルバムを開くと、染色工芸家で人間国宝の芹沢銈介さん(1895〜1984)や世界的なバイオリニスト、辻久子さん(1926〜2021)ら、著名な文化人が旅館に泊まり、田内さんらと交流していたことが分かった。
 石山さんは「旅館の話は何となく聞いたことがあったけれど、あらためて調べると、祖父の情熱や当時の活気をひしひしと感じられた。私も地域に貢献したいと思いを強くした」と話す。
 ゲストハウスは一棟貸し。部屋は三つあり、5人まで宿泊できる。純日本家屋の趣をそのまま残しながら、風呂やトイレはバリアフリーに改装している。庭には縁側から続く月見台を設置した。
 石山さんは「殿様気分が味わえる眺望も自慢。花火大会や田辺祭のお笠の引きそろえもきれいに見えるはず。観光客はもちろん、イベント会場として地域の方にも気軽に利用してもらえる場所にしたい」と話している。