能楽師で太鼓方の上田悟さん(72)=大阪府和泉市=と、次男の小鼓方の上田敦史さん(48)=兵庫県丹波市=が15日、和歌山県田辺市中辺路町にある安珍・清姫伝説ゆかりの「清姫の墓所」を訪れた。上田さんらは文化庁の支援事業で、安珍と清姫の物語の能を新作した。田辺市文里2丁目のハナヨアリーナでの上演(12月10日)を前に、墓参りし、その報告をした。
 これまでも、田辺市内で新型コロナ感染症の平癒を祈願して新作した能「アマビエ」を上演したり、能楽太鼓教室を開いたりするなど、紀南地方と縁がある。敦史さんは「伝楽舎」(丹波市)という会社代表でもあり、能楽を主とした伝統芸能の振興に取り組んでいる。
 安珍と清姫の物語は、平安時代、中辺路町真砂の庄屋の一人娘として生まれた清姫が、僧の安珍に思いを寄せたが裏切られ、蛇に変化し、道成寺(日高川町)で鐘ごと安珍を焼き殺したという悲恋の伝説。
 敦史さんは今回、その後日談として、2人が死後、供養によって結ばれ、蛇道から救われて天に昇るという物語の新作能「清姫淵」を作った。 真砂には、清姫の墓所や近くに清姫が水浴したと伝わる「清姫淵」があり、地元で供養が続けられている。
 この日、上田さん親子は、清姫が祭られる「清姫堂」の前で、新作能の謡(うたい)の一部を奉納。墓所を管理する一願寺の住職や、物語や地域の歴史に詳しい地元の人からも話を聞いた。
 敦史さんは「新作能は2人の霊を慰め、地域の人の思いに寄り添ったものをと考え、いろいろと調べながら作った。今日、墓所で報告できたことはうれしい。12月の上演では多くの方に見ていただき、地域の財産として一緒に継承していってもらえれば」と語った。