ウインドサーフィンをする神主がいる――そう聞いて和歌山県串本町くじの川の橋杭海水浴場に行くと、その人はいた。日焼けした細身の体でさっそうとボードを操るのは、県無形民俗文化財「水門祭(みなとまつり)」で有名な水門神社の神主、猪野久次さん(71)=串本町大島=だった。(滝谷亘)
 三重県志摩市生まれで、3年前に和歌山市から大島に移住した。真珠養殖業をしていた父の仕事の関係で、小学校5年から中学校1年まで、大島で暮らした経験があった。今回の移住で、曽祖父も大島で暮らしていたことを知ったという。
 今から8年前、子どもの頃に過ごした大島を懐かしく思い、ふらりと遊びに寄ったところ、当時の同級生や後輩らと会い、意気投合。大島へ毎年遊びに行くようになった。同級生らとの会話で、水門神社の神主が高齢で神事を営むことが厳しくなってきているという話になり、神主の資格を取得して移住することになったという。
 ウインドサーフィンを初めて見たのは30代の頃。「もっと若かったら、やってみたかった」と思っていた。40歳の時に大病を患い、生死の境をさまよったが、手術で回復。その後「昔の夢をかなえよう」と思うようになり、52歳から独学でウインドサーフィンを始めた。
 「なんといってもスピード感。時速50キロぐらい出る」とその魅力を語る。今は週1回ほど海に出ており、風が良い日には、大島から古座の鯛島周辺まで行くという。「大島での生活をのんびりと満喫している。神様のおかげで最高の人生を送っている」と笑った。