予選ラウンド終了後の会場には、やはりここまでの試合とは異なった緊張感が漂っていた。多くの選手にとってシーズン最終戦となる本大会。この試合を終えれば、来年の出場権がかかる賞金シードが確定する。クラブハウスの2階には、翌週行われるファイナルQTの申し込み手続きをする場が設けられており、シード獲得ラインに届かなかった選手のほとんどは、ホールアウト後にそのまま2階へと上がっていった。


2日目を終えて96位タイ、無念の予選落ちとなった小林正則もその一人だった。2013年の「日本オープン」優勝で翌年からの5年シードを獲得したが、今年が最終年。14年以降は低迷が続き、賞金シード獲得圏内には入ることができていない。今年も賞金ランクは78位に終わり、賞金シード復活を果たすことはできなかった。

「自分のゴルフが戻ってこない歯がゆさが残った。気持ちと体が合致してくれず、どうしても試合でなにか新しいものを見つけようとしてしまう。常に試すことも多くなるし、でも、それは試合ではなくなってしまう」。結果を出そうともがく中で、自分のゴルフを見失っていき、苦悩の5年はあっという間に過ぎ去った。「日本オープンに勝った翌年から賞金シードを落として、恥ずかしいと思っていた」と肩を落とした小林。出場権の有無にかかわらず、公式戦覇者として賞金シードにこだわる思いは、当然持ち続けていた。

翌年のツアー出場権がかかる賞金シード。職場を得られるかどうかの生命線のひとつでもあるが、積み上げてきた功績が目に見える、キャリアの指標でもある。勝負師ならば、当然目指したいものだ。それを手放したことへの喪失感は、どれほどのものだろう。

昨年、腰痛の影響などで16年間守ってきた賞金シードを手放した近藤智弘は、「去年はメンタル的にもかなりやられていました。上でやっているときよりもゴルフがすごく難しくなったし、苦しかった」と振り返る。昨年はQTに臨んだが、53位タイとふるわずに今季は生涯獲得賞金25位内の資格を使って参戦。賞金シード獲得ラインのギリギリで、最終戦を迎えた。「シードはもちろん気にはなりますが、そればかり気にしていてもいいプレーにはならないし、何のためにゴルフをやっているのか分からなくなってしまうし、楽しくない。今は自分の中でいいゴルフをしたいというところに目標を置いている」と切り替え、賞金ランク65位で再び賞金シードに返り咲いた。

今季、華麗な復活劇を遂げた選手がもう一人。「日本ゴルフツアー選手権 森ビルカップ」でツアー初優勝、1試合前の「ダンロップフェニックス」で2勝目を挙げた市原弘大だ。2010年にプロ転向後10年目で初の賞金シードを獲得したが、12年には約6万円差でシードを手放した。14年に返り咲いたが、昨年は2度目のシード陥落。今季はQT10位からの参戦だった。「12年は、結果に左右されながら1年間苦しくて、ギリギリで落ちて。でも、そういう経験があったから、今こうしてプレーできていると思います。去年は指を痛めていたのもありましたが、この試合に来たときは開き直っていた。日本がダメでも、アジアのQTも、下部ツアーもある。探し求めればゴルフができる環境はいくらでもあるし、そこが終わったら全部終わりという考えはなかった」と語る。日本ツアーでの複数年シードを獲得した今年も、より多くの戦いの場を求めてアジアンツアーのQTに挑戦する予定だ。

強制的に気持ちを切り替えなければ、やっていけない部分も大きかったのかもしれない。しかし、一度どん底を味わったからこそ、改めてゴルフをする意味や楽しさを見つめ直すきっかけにもなったのかもしれないと感じる。深くしゃがみ込むほど、より高く飛べるもの。厳しい戦いも待っているが、ここからどんな復活劇を見せてくれるのか期待せずにはいられない。(文・谷口愛純)

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