これ、トーナメント競技だよね?思わずそんな疑問が浮かぶほど、どこかまったりとした空気が流れていた「ISPSハンダヴィックオープン」。長年オーストラリアンツアーの試合として行われてきたが、今年から米国女子ツアーと欧州男子ツアーが加わり、世界中から300人以上の選手が集まった。


開幕前は、違うツアーの選手どうしで「ハーイ、久しぶり!元気だった?」となんだか同窓会のよう。本戦を2日後にひかえた練習日には、クラブハウス前に選手が数人集まってなにやら動画を撮影している。のぞいてみると、米ツアー3勝のキャサリン・カーク(オーストラリア)とクリスティーナ・キム(米国)が向かい合ってギャグを連発しているではないか。

大会前だよ!?と突っ込みたくなったが、ただ単にふざけ合っていたわけではなく、これはれっきとした大会公式のプロモーション動画の撮影。“オヤジギャグチャレンジ”と称して、選手が1対1で笑ったら負けのダジャレ勝負をしている。ほかにも、オモシロPR動画の種類は豊富。ギャラリープラザのコーヒーショップを使って“バリスタ体験をしてみた”や、世界ゴルフ殿堂入りを果たしたローラ・デービース(イングランド)が、テニスプレーヤーのトッド・ウッドブリッジ(オーストラリア)とテニス対決をするレアな動画まである。

「グランドスラムウィナーとテニスができるなんて、思ってもみなかったわ(笑)」とデービース自身も楽しんだ様子。「何年か前は、ステイシー・ルイスがスカイダイビングをしていたと思う。こういう、ゴルフゴルフしていないアピールの仕方はおもしろいんじゃない?」とノリノリだ。

日本に比べて、海外ツアーは試合や選手のPR動画を積極的につくっているが、この大会はとくにその色が濃い。本大会を取材し続けている、大会公式ライターのマーク・ヘイズ氏は「この大会はとくに雰囲気がオープンだね」と語る。「欧州ツアーはもともとオモシロ動画をたくさんつくってきたけど、この大会に関わる人は“イベントを楽しもう”っていう気持ちが強い。選手たちも、真剣にプレーするだけじゃなくて面白いことをしたいって思っているんだ」。

その思いは確かに大会全体に行き届いていて、クラブハウス前のオープンカフェではDJやバンドが生演奏。中にはラウンドを終えた選手も加わって、どこかのバーかと思うほど、大会期間中もにぎやかだ。

観戦の方法もユニークで、コース上にはローピングが一切ない。ギャラリーがフェアウェイのど真ん中を歩いていて、スタンスを取る選手の数メートル後ろからプレーを見ることができる。

オーストラリアの大会では常識なのかと思いきや、日本ツアーでも活躍する地元出身のブラッド・ケネディも「ちょっとおもしろいよね」と、この大会ならではのようだ。「選手がどの番手を使ったのかとか、どういう作戦を立てているのかも分かるからおもしろいだろうね」。米国女子ツアーで海外を転戦する上原彩子は、「近くで見られるっていいですよね。私はラウンド中に“グッドショット”って話しかけてもらいました(笑)」と、なかなか経験できない雰囲気を選手たちも楽しんでいたようだ。

とはいえ、大会4日間のうち2回も予選カットが行われるシビアな戦いに、本戦が始まれば選手たちの空気も当然、引き締まる。この落差も大会の魅力のひとつなのだろう。全力で戦って全力で遊ぶ。そのちょっとしたユルさに、ファンを楽しませるための極意を見た気がした。(文・谷口愛純)

<ゴルフ情報ALBA.Net>