タイガー・ウッズ(米国)の「マスターズ」優勝は、世界中のゴルフファンをクギ付けにした。2008年「全米オープン」以来、11年ぶりのメジャータイトル。1997年マスターズから数えて15回目の快挙だ。


プロ転向から半年余りで初めてグリーンジャケットに袖を通してから22年の歳月が流れ、すでに43歳。全盛期にはメジャー最多18勝の記録を持つジャック・ニクラス(米国)を追い越すのも時間の問題と言われたが、その後、失速。故障やプライベートのトラブルなど、人生の辛酸をいやというほどなめた。もうメジャーでは優勝できないと本気で思ったこともあったと言う。そんなドン底から這い上がってのマスターズ5勝目は、ゴルフの奥深さ、素晴らしさを改めて浮き彫りにすることにもなった。

体力も気力も充実し、怖いもの知らずだった21歳。メジャー4連勝を飾り“タイガースラム”という言葉を生み出したトッププレーヤー時代。そして、ドン底からあきらめることなく努力を続けて手にした43歳での優勝…。ウッズだからこそできたことかもしれない。それでも、力だけでなく、自分でゲームを組み立て、自分自身をコントロールする。さらには自然の力に抗うのではなく、それを受け入れ、身をゆだねる。ゴルフというスポーツならではのことでもあるだろう。

老若男女が一緒に楽しめるのがゴルフの魅力だが、競技となると少し話が違ってくる。全員が同じ条件でプレーするのだから、体力、筋力のある者にアドバンテージがあるのは仕方がない。だが、それだけではなく、経験値や考える力、自分を見つめ、それときちんと向き合う力が問われる割合が大きいからこそ、今回のように大きな感動が生まれる。

一方、世界のゴルフツアーで活躍する選手にジュニア出身者がどんどん増えてきた。子供のころから、ゴルフ一色の人生を歩んできた者も少なくない。そのせいもあって、一部からは「ゴルフは30歳くらいまで。その後は第二の人生を歩みたい」という声も聞こえてくる。

特に女性であれば、出産という人生の大仕事とトップアスリートとのバランスは難しいし、同じ仕事を長く続ければいいというものでもない。セカンドキャリアを考えるのも悪くない。それぞれの人生に選択肢はいくつもある。だが、それでも、人生で出会ったゴルフというスポーツが持つ力の大きさを改めて考えてみて欲しいと思う。体力や筋力だけでは推し量れない奥深さ。

せっかくゴルフと出会い、深く付き合ってきたのなら、様々な角度からゴルフと向き合ってみてはどうだろう。ウッズが、ゴルフファンだけでなく、世界中の人々にそれを示したゴルフの力。ご自分のゴルフを見つめることは、自分自身を見つめること。

年齢を重ねないとわからないことはたくさんある。若い頃、人生の先輩に言われたことで、その時には聞き流してしまい、ずっと後になって「ああ、こういうことだったんだ」と気が付くことも多い。

ウッズも、21歳の時には気が付かなかったことをかみしめながら、オーガスタナショナルをプレーしたのだろうか。それとも後から、ジワリと感じたのか。

最初の優勝では待っていてくれたのは父のアール氏だったが、22年が経ってその父はなく、最初に祝福してくれたのは、10歳の息子だった。感慨深いものがあったろう。長いようで短いのが22年という時の流れ。若い時には、想像もつかないほど先のことだと思っていても、過ぎてみればあっという間だ。タイガーの22年間が極めて濃厚だったのは想像に難くない。特に、メジャータイトルから遠ざかったこの11年間は、苦しくも濃いものだったに違いない。

若い頃にはピンとこなかったことでも、見聞きしておくだけで財産となることがある。タイガーの優勝をどんなふうに受け止め、そこから何を得るのか。考えてみることで、世界が変わってくるかもしれない。(文・小川淳子)

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