昨年、3人もの日本勢が優勝した米国女子ツアーは、日本よりも一足早く1月から熱戦が始まっている。参戦の仕方はそれぞれだが、過去に類を見ないほどの多くの選手が海を渡り、世界の舞台で戦う。そんな米ツアーに挑む選手たちについて、WOWOWなどで解説を務める小田美岐に語ってもらった。今回は海外女子メジャー中心にスポット参戦をする鈴木愛。


以前から米ツアーへの意欲を見せており、これまで何度もスポット参戦を重ねてきた鈴木。19年も「全米女子オープン」、「全英AIG女子オープン」に出場した。だが、全米は22位タイ、全英は予選落ちとまたしても壁に阻まれた。だが、日本で行われる唯一の米ツアー「TOTOジャパンクラシック」で2位に3打差をつける完勝劇で米ツアー初勝利。フル参戦の権利をつかんだ。

だが、鈴木は熟考のすえに米ツアーメンバー登録を見送った。「中学生の頃から行きたい思いが強かったので、ギリギリまで決断を迷いましたが、今年はケガに悩まされ、現在は体調面での不安も抱えており、まだ万全ではないこと。また、専属トレーナーや帯同キャディをはじめとしたチームを選定する時間もないことから、今回のメンバー登録を見送る決断をしました」と理由を明かした。

特にこの「体調面」が大きかった。詳しい病名は明かさなかったが、9月下旬頃に発症し極度の腹痛に悩まされた。痛みが落ち着いた後も食事面が大きく制限された。高タンパクのもの、脂っこいものは控えるように指示された。米国の食生活を考えれば厳しい状況だというのも理解できる。

そんな鈴木の決断を小田は「詳細までは分からないので」としながらも、「食生活に不安があるなかで、一年戦うのはちょっと厳しいかなと思います」と理解を示した。

「『食』はすごく大事。トレーナーの人とか理学療法士の人とかとお話をしていても、ケガの話になるたびに筋肉の質とか靭帯の強さとかも絶対にご飯は関係ありますって口をそろえてみなさんおっしゃる。ゴルファーって練習がしたいんですよ。ご飯を食べている時間が惜しい、と思うくらい。たぶん、鈴木さんなんてその最たる例。結果、食への意識が弱くなる。けれど、アメリカでサクッと済ませようとすればジャンク系がメインになりますし、ちゃんとしたご飯を用意しようとすれば時間もスタッフもかかる。そう考えると、このタイミングではないのかもしれません」

とはいえ、全試合とはいかないが出場権を有するメジャーに関しては出場する予定。だが、これまでの鈴木の海外メジャー最上位は17年「全英リコー女子オープン」の14位タイ。未だトップ10はなく、日本での強さを考えれば苦戦を強いられている。その理由の1つとして小田は飛距離を挙げる。鈴木の昨年の国内ツアードライビングディスタンスは25位(242.69ヤード)。日本で見劣りすることはないが、世界のトップが集まる状況ではどうしても“飛ばない”ほうになってしまう。

「鈴木さんの飛距離だと向こうの選手がショートアイアンを持つところで、ユーティリティを持たなければいけないような状況が多くなる。鈴木さんはユーティリティはうまいです。ただ、たとえ宮里藍さんのように針の穴に糸を通すくらいの精度があったとしても、スピンでグリーンを噛んでいかないから止まらない。どれだけピンポイントで落としてもどうにもならない、というセッティングがメジャーでは特に多い。そうなると、どうしてもアプローチでしのいで、長いパットを入れて、と苦しい戦い方になってしまいます。さらに、向こうのグリーンは芽が強くて、日本の芝の用に綺麗に転がっていってくれない」

かといって、米ツアーで通用しない選手かといったらそういうわけではない。「アメリカツアーは通常のトーナメントとメジャーでセッティングが全然違う。だから1年通じてやっていれば何勝もできると思います。アメリカで全然通用していないと思われてしまっていますが、そうは言い切れないと思います」。しかし、東京五輪、さらにその先のことを考えれば海外メジャーで活躍するしかない。そこで小田が「ヒントがある」と話すのが、先週の「ISPSハンダ・オーストラリアン女子オープン」でツアー20勝目を挙げたリオ五輪金メダリストのインビー・パーク(韓国)と、フォン・シャンシャン(中国)の2人だ。

「2人は申し訳ないけど飛ぶ方ではありません。だけど、毎年のようにメジャーを含めて活躍している。なぜかといえば2つ理由があると思います。1つは自分の飛ぶ範囲のなかで、きっちり好きな距離を残しているということ。飛ばないというより、飛ばしていない。だけど、これが2つ目ですが、、たまに『え!?こんなところまで来ている!』って思うくらい飛ばしている。申ジエさんもそうですよね。昔からアメリカのツアーの人たちはそうでしたから、これが世界の戦い方なのかな、という気がしています。要は力の出し入れです。いつもは省エネでやって、ここ一番の時だけ『ガーン!』と飛ばす。毎回100%の力を入れないからケガの可能性も減りますから」

それでも、小田は海外メジャーに挑み続ける鈴木が好きだという。「カッコをつけるなら、別にメジャーに行かなくても全く平気なわけですよ。日本にいれば普通に勝ち続けられるし、距離的にもアメリカは結構厳しいっていわれている。それでも『海外メジャーに行きたい』という思いは、やっぱりゴルフ好きなんだなと感じますし、すごく応援したくなります。自分よりうまい人がいるところへ行って、頑張りたい、と。向こうに行って打ちのめされて、『私のゴルフじゃまだ全然ダメだ…』と思うこともモチベーションにつながっているのかなという感じもします。そういうストイックさは彼女の大きな魅力だと思います。頑張ってほしいですね」。

小田美岐(おだ・みき)/1959年4月5日生まれ、京都府出身。通算6勝。ティーチングプロフェッショナル資格A級も保持している。現在は解説者として国内女子ツアーだけでなく、米国女子ツアーの解説を努めることも多い。

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