連載第2回では、2020年にジャパンゴルフツアー選手会が取り組んできた“ミッション”の一部をお伝えしました。


今回のテーマは、コロナ禍の中で大会開催の大きな壁となっていた、外国籍選手の『入国問題』についてです。

政府は新型コロナウイルスの感染拡大防止のための水際対策として、9月末まで厳しい入国規制を実施してきました。そのため、「フジサンケイクラシック」には海外に住むシード選手が出場することができませんでしたが、10月1日に菅義偉首相が入国規制の緩和を発表。すべての国と地域を対象に、ビジネス関係者やその家族、留学生などによる入国が認められ、11月の「三井住友VISA太平洋マスターズ」から、ようやく外国籍選手の活躍を見ることができるようになりそうです。

ゴルフ界にとっても朗報ですが、実はジャパンゴルフツアー選手会と日本ゴルフツアー機構(JGTO)も裏側で奔走してきました。ある意味で“幻”となってしまいましたが、未曾有の事態に最後まで立ち向かってきた奮闘を、前回に引き続き池田勇太副会長兼事務局長に伺いました。

■ツアー再開にむけてのボーダーラインをどうするか? 十数回にもわたる話し合い
記者「ジャパンゴルフツアーには海外からの選手がツアーメンバーとして数多く在籍しています。その中で、まずツアー再開に向けてはどのような話し合いが行われましたか」

池田勇太副会長(以下、池田)「まず、ツアーメンバー206人のうち、外国籍の選手は78人と4割近くを占めています。この選手たちが入国できない状況でツアーを再開していいのかという議論がありました。6月に2020-21年シーズンの統合が正式に発表されてからも、海外にいる選手への対応について何度も何度も話し合いが行われ、“全体の何割の選手が出場できるようになれば、ツアーを再開できるのか”というところからでしたね」

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6月初旬に、ニュージーランド、オーストラリア、タイなどからの入国緩和に向けて、政府が協議を進めていると発表。これらの国籍の選手と日本人選手を合わせると、ツアーメンバーのおおよそ4分の3以上を占めることになるため、試合再開に向けて本格的に動き出すこととなる。
8月には『新型コロナウイルス感染症対策特別トーナメント規程』の中で、入国規制により出場できなかった選手に対する救済処置も発表。着実に外国籍選手の受け入れに向けて前進していきました。


■JGTOと協力して、政府への直接交渉へ
記者「実際に選手が入国できるようにするために、どのようなことを行ったのでしょうか」

池田「政府への働きかけですね。最初は7月初旬。青木功JGTO会長と一緒に西村康稔経済再生担当大臣(コロナ担当)にお時間をいただき、我々のおかれている現状を説明したうえで陳情書をお渡ししました。しかし、思うようには話が進まず再度9月に青木会長が申し入れに伺い、同時にスポーツ庁の鈴木大地長官(当時)へもお願いに伺いました。そして、念願の『海外に住むジャパンゴルフツアーメンバーの入国に関して、優先的に取り扱う』という通知を9月中旬にいただきました」

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入国規制の緩和に関してようやく希望が見えてきたわけですが、次に控える10月15日開幕の「日本オープンゴルフ選手権」には、入国後14日間の自主隔離期間や、事前の複雑な事務手続きなどが間に合わず、「三井住友VISA太平洋マスターズ」(11月12〜15日)に向けて準備を進めることになったのです。


■ホテルや移動手段の確保に、必要書類が山積み… 膨大な準備に追われる日々
記者「政府からは、どのような対応が求められたのでしょうか」

池田「入国する選手の管理は基本的にJGTOが行う必要があり、ビザの申請手続きに関してもJGTOで管理し、14日間の自主隔離をするためのホテルや、空港からの移動手段の確保なども必要でした。ホテル一つとっても、コースの近隣で、かつ外出が禁止されるためパター練習や素振りが行える広さの部屋を準備しなければならない。ツアーメンバーに手続きの流れについて細かな連絡も必要です。JGTOと選手会で協力しながら早急な対応が求められました」

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加えて、膨大な量の事務手続きも必要。一人あたり十数項目におよぶ確認作業が必要であり、入国後も専用のスマートフォンアプリでの体調管理や、JGTOからスポーツ庁へ逐一、選手の動向を報告する義務も発生。約2カ月後に迫った試合に向けて、JGTOとジャパンゴルフツアー選手会が協力しながら急ピッチで準備を進めていました。


■10月に入り状況が一変… それでも苦労が水泡に帰すわけではない!
池田「我々としても、ここまで急いで作業を進めてきたのですが。実は、これまでお話しした入国後の選手管理をJGTOとして行う必要がなくなったんです」

記者「なぜですか?」

池田「10月1日に菅義偉首相から、入国規制緩和の発表がありましたよね。これとあわせてスポーツ庁から通知があり、入国に関する手続きや行動の管理は、選手の各マネジメント会社が責任をもって行うことになったのです。ここ数週間でやってきたことは何だったのかとも思いましたが、無事に海外選手を迎えられることに変わりはありませんので、これは朗報ですね」

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14日間の自主隔離や基本的な手続きに変わりはないものの、入国に関する行動は各自で管理すればいい、という方針に変更。結果的に、ジャパンゴルフツアー選手会とJGTOとして、ビザ申請の管理やホテルや移動手段の手配などの必要がなくなってしまいました。

しかし、選手たちのために働きかけてきた「思い」が消えるわけではありません。

スポーツに国境はない、ツアーメンバー全員がそろってこそのジャパンゴルフツアーだという信念を胸に、コロナ禍の苦境と戦う日々は続きそうです。

<ゴルフ情報ALBA.Net>