国内女子ツアー「富士通レディース」は申ジエ(韓国)の今季初優勝で幕を閉じた。初日から寒さと風、さらに2日目には強い雨が降り、カットラインはトータル6オーバーと例年以上に厳しい戦いに。一方で最終日は晴れ間が見えるコンディションと日ごとに全く異なる対応力が求められた3日間。なぜ、ジエは日本ツアー復帰3戦目というなかで厳しい戦いを制することができたのか。上田桃子らを指導しており、今大会では上田のキャディも務めた辻村明志コーチが解説する。


■今までで一番過酷な富士通 でも素晴らしいセッティング
優勝したジエが「今までで一番過酷な富士通」とした今大会。辻村氏も「例年とはまったく違う。難易度がかなり上がりました」と話しつつ「とても素晴らしいセッティング。やりがいがありました」と振り返る。

「寒さと雨風に加えて、ラフがとても長くティショットからの組み立てが求められる。さらにピン位置はかなり振られていました。だけど、いいショットをすればちゃんとチャンスになる、アンフェアな切り方はなかった。だから、力がある人が上に来ました。さらに元々総距離も長いですから、長いクラブの精度も求められましたね。加えてラフも場所によって長さが違う。練習ラウンドでしっかりと確認できる選手でなければ戦えませんでした」

トップ10に入った13人のうち、実に7人もが前週の「スタンレーレディス」でもトップ10に入っていた。「調子が良くなければピンのショートサイドに打っていけません。そのあたりの勢いや自信も求められましたね」と、今回のリーダーボードを振り返った。

■手術明けの申ジエが選択した“振らない”飛距離アップ
そんななか、優勝したのは前週12位タイのジエ。コロナ禍の影響で来日が遅れたブランクが、3試合目となり調子が上がってきたのも要因のひとつ。ただ、それ以上に元々のうまさがずば抜けていたと辻村氏は見ている。特にポイントに挙げたのは最終日の最初のバーディとなった8番ホールだ。

199ヤードと相当距離の長いパー3で、さらにピンは左に切られ、左、手前と奥にはバンカーが、右手前に乗せれば30メートル級のロングパットが残る。さらに最終日のピン位置は左から4ヤード、奥から4ヤードというギリギリの位置。風は右から。そこでジエはピン左3メートルという位置につけてバーディを奪った。

「フェードでうまく右風にぶつけたショットもお見事ですが、なぜそこまで狙っていけるかといえば厳しい位置に外しても寄せられるアプローチがあるからにほかなりません。16番ホールでも奥から逆目の難しいアプローチを上からうまくトンっとクラブを入れて寄せてバーディ。この技術があるからこそ攻めていけるのです」

一方で今年から変えているものがある。それがドライバー(テーラーメイド『SIM MAX』)だ。しかもロフトはまさかの7.5度とかなり立ち気味。このクラブにはどういう狙いがあるのか。辻村氏はこう見ている。

「ジエさんは去年よりもティを高くして、下から軽くアッパー気味に振り抜いています。そしてドライバーをロースピンのモデルにしてロフトを立てた。その結果、スピン量が減り、去年よりも振っていないのに飛距離が伸びています。今年2回行ったという手首とヒジの手術を経て、“無理のないスイング”で飛ばす道を選んだのではないでしょうか。これはアマチュアの方も真似していい部分です。シャフトを軽いものにしてヘッドスピードを上げると、なおいいでしょう」

その飛距離が伸びたティショットで、手術を経て迎えた総距離の長いコースでも対応できたというわけだ。元々兼ね備えていた技術と最新のトレンドに頼る部分。その2つがマッチした結果の日本ツアー25勝目だった。「“振らなくても飛ばせる”を身に付けたということは、まだまだ先まで長く第一線で戦えるということでもあります」と、辻村氏は今後の長きにわたる活躍に期待を寄せた。

解説・辻村明志(つじむら・はるゆき)/1975年9月27日生まれ、福岡県出身。ツアープレーヤーとしてチャレンジツアー最高位2位などの成績を残し、2001年のアジアツアーQTでは3位に入り、翌年のアジアツアーにフル参戦した。転身後はツアー帯同コーチとして上田桃子、山村彩恵、松森彩夏、永井花奈、小祝さくら、吉田優利などを指導。様々な女子プロのスイングの特徴を分析し、コーチングに活かしている。プロゴルファーの辻村明須香は実妹。ツアー会場の愛称は“おにぃ”。

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