<マスターズ 最終日◇11日◇オーガスタ・ナショナルGC(米ジョージア州)◇7475ヤード・パー72>

「マスターズ」で日本勢の悲願だったメジャー制覇を達成した松山英樹。宮本留吉が日本人として初めて「全英オープン」に出場してから89年、ようやく日の丸を背負った男がビッグタイトルをつかんだ。


松山にとって何度も壁に跳ね返された戦いだった。アマチュア時代から数えてメジャーに出ること33回目でようやく頂点に立った。これまで何度も手をかけながらも届かなかったトロフィー、その激闘の歴史を振り返りたい。

初めてトップ10に入ったのは、メジャー3試合目、そして初出場だった2013年の「全米オープン」。3日目を終えて通算10オーバーの39位タイで最終日を迎えたが、最後の18ホールで6バーディ・3ボギーの「67」をマーク。トータル7オーバー・10位タイの好成績を挙げた。この10位タイという成績は、全米オープン初出場の日本人選手としては、1987年に尾崎将司が記録した17位タイを抜く最高順位だった。

その年の全英オープンではさらに上位に入った。予選ラウンド通過順位は20位タイだったが、最終日に1つ伸ばして最終的に6位に入った。一方でこの年はプレーの遅延でペナルティを科されるなど、同時にほろ苦い全英デビューとなった。それでも大会を通してパーオン率1位など、順位だけでなくショットメーカーぶりも世界に知らしめた。

初めてのトップ5は15年のマスターズ。前年予選落ちの悔しさを晴らすかのように好プレーを連発。10位タイで迎えた最終日には「66」をマークして一気にジャンプアップ。メジャーで初めて上位5人に名を連ねる。

さらに翌年のマスターズは最終日を迎えた時点で首位とは2打差3位。歴史が変わる瞬間を誰もが待ち望む日曜日となった。しかし、最終日は前半4番でボギーを叩くと、5番でもボギー。さらに6番のパー3ではダブルボギーを叩いて優勝戦線から脱落。後半巻き返して7位タイに入ったが、初めて目の前に見えたトロフィーは、するりと手から落ちた。

同年の全米、全英オープンは予選落ち。予選カットラインの設けられる戦いでは実質5月の「ザ・プレーヤーズ選手権」から予選落ちが続くなかで迎えた8月の「全米プロゴルフ選手権」。首位とは5打差の8位タイで決勝ラウンドに進出。3日目は雷雨のためサスペンデッドとなり、最終日に36ホール戦う長丁場となったが、最終ラウンドを「68」で2つ伸ばし自身のメジャー最高位を更新する4位タイでフィニッシュした。

17年の全米オープンで順位的には最も優勝に近づくことになる。エリンヒルズゴルフコースで総距離7845ヤードに設定された初日は84位と大きく出遅れ。だが、2日目にボギーなしの7バーディ「65」で8位タイへと急浮上すると、最終日にベストスコアとなる「66」をマークし、トータル12アンダーの2位タイでフィニッシュ。メジャー大会での自己最高位を更新するとともに、80年の全米オープンで青木功がマークした日本選手最高位に並んだ。

そして、最もタイトルに近づいたのが、同年行われた全米プロ。前週の世界ゴルフ選手権「WGC-ブリヂストン招待」で優勝という、最高のかたちで入った松山には周囲の期待も大きく、米ツアーの公式サイトでの優勝予想ランキングでは堂々一位に挙げられる。

日本の怪物は、そんな前評判に違わぬ活躍を見せる。初日こそ首位と3打差の15位タイに終わったが、サスペンデッドとなった2日目に「64」を叩きだし暫定首位に浮上。3日目にスコアを落としたが、首位と1打差のトータル6アンダー2位タイ。タイトルを狙える位置で最終日を迎えた。

決戦の日。「ヒデキー、マツヤマ」のコールに大歓声を受けてスタートした松山は、6番、7番で連続バーディを奪うと、ケビン・キスナー(米国)が7番でボギーを叩き単独首位に浮上。リーダーボードの頂点で折り返し、日本の期待は最高潮となった。

10番パー5でも約7メートルを沈めてバーディを奪った松山だったが、直後、悲劇の展開が襲う。11番でフェアウェイからの2打目を右に曲げてグリーン右ラフに。そこから1メートルに寄せたがパーパットがカップに蹴られてボギーとなると、12番、13番と3連続ボギー。同組のジャスティン・トーマス(米国)に一気にかわされそのまま18ホールが終了。最終的にはトータル5アンダー・5位タイで幕を閉じた。

ホールアウト後にはめったに見せない涙を浮かべた松山。「日本ツアーでアマチュアとしてやっていたときのような緊張でしたね。ここまで来た人はたくさんいると思いますし、これから勝てる人と勝てない人の差が出てくると思う。勝てる人になりたいなと思う。これを次に生かしていきたい。何をすれば勝てるのか分からないですけど。一生懸命練習したいと思う」と話した。

最後の「優勝に1番近づいた?」という質問に「最後の3ホールまで近いところにはいたので、そういう意味では近づいたんじゃないかなと思います」と目を潤ませながら、言葉をつないだ。

いくつもの悔しさを乗り越えてつかんだ栄冠。これまでの経験の1つ1つが今日の勝利につながったのは言うまでもない。

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