2021年3月まで日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)の理事を務め、いまは女子ゴルフ界発展のため尽力し、自身のゴルフ向上も目指す、女子プロゴルファーの原田香里。まだまだこれからと話すゴルフ人生、そして女子ゴルフ界についての未来を語る。


ゴルフを愛するみなさん、こんにちは。原田香里です。早いもので、もう師走。みなさんもお忙しい日々を過ごしていらっしゃることでしょう。

さて、女子ツアーは、長い長いシーズンが終わりました。稲見萌寧さんと古江彩佳さんの手に汗握る賞金女王争いにもようやく決着がつきました。それについてはまた後日、お話しするとして、厳しい勝負の世界を改めて感じさせたシード権争いについて、今日は触れたいと思います。

このコラムでも何度か書いてきているように、コロナ禍の2020-2021年は、ロングシーズンという特殊な環境を余儀なくされました。試合数は2020年の14を加えて全部で52。その分、獲得賞金額が大きくなるのは当然ですが、それにしても2億円超が3人、これを含めて1億円超が14人という結果には、本当にびっくりしました。

高い賞金を出してくださっている大会主催者のみなさんのおかげであることはまちがいなく、感謝の気持ちでいっぱいです。同時に、先の見えない中で長いシーズンを戦い抜いた選手たちには、心から拍手を送りたいと思います。みんな、本当に頑張りましたね。

俗に”賞金シード“と呼ばれるシード権は、これまで賞金ランキング50位までに与えられてきたのですが、今年はポイント制のメルセデスランキング(こちらも50位まで)が併用されています。そのため、52人が来季のシード権を獲得しています。

賞金ランキングのほうが、なじみがあるかと思いますので、そちらでお話しすると、50位の有村智恵選手の獲得賞金は3201万1751円。51位のささきしょうこ選手は3190万9083円獲得したにもかかわらず、メルセデスランキングも61位でシード獲得には至りませんでした。試合数が多かったとはいえ、明暗を分けるボーダーラインが3000万円以上になっていることがわかります。

シード権を獲得するには、年間通しての体力、モチベーションの維持が必要です。約9カ月と長いシーズンの中で、自分の心や体と対話をするように、様子を見ながらプレーを続けるのです。長距離走、というか耐久レースに近い部分がありますね。これが実はとても難しいのです。

一番難しいのは休む、ということです。毎日毎日練習するのが当たり前のアスリートにとって、休むことも大事な仕事の一つです。ところが、どうしても休むことには不安が伴います。特に調子がよくないときには、不安が大きくなってしまいます。疲れているのに無理な練習を行って疲労をさらに募らせたり、スイングを壊してしまったりすることも少なくありません。時には思い切って休むことも大切なのです。

現在、ツアーに出場しているプロたちのほとんどは、ジュニア時代から何万発もボールを打って、自分のスイングを作ってきています。もっと自信を持って、休む時にはしっかりと休むほうがいいのではないでしょうか。

多くの選手にはコーチがついています。トレーナーに見てもらっている選手も珍しくありません。そんな環境でも、自分のことを一番わかっているのは自分自身だということを忘れないで欲しいと思います。もちろん、自分では見えなくなってしまっていることを、客観的な立場からアドバイスを受けたり、相談したいことはどんどん相談すればいいと思います。それでも、決めるのは自分なのです。クラブを使いこなす方法、練習方法、トレーニングの仕方など、言葉にできない本人の感覚でしかわからない部分がたくさんあるからです。

自分自身と向き合った結果、勝ち取ったものだと言ってもいいシード権。今季の結果を見て感じるのは、長い間シード権を取り続けることの難しさです。初シードの選手が13人。そして、失ったシードを取り戻した選手が7人。当然、今季、持っていたシード権を失った人もいるわけです。”賞金シード“だけで見れば、これを失った選手は19人います。

入れ替えがこれほどあるのは、ツアーの層が厚くなり、選手たちの実力が拮抗してきたからと言っていいでしょう。ツアーにとっては素晴らしいことですが、選手一人ひとりにとっては、それだけシビアになってきたわけです。

初シードの選手の中でも賞金ランキング4位、5位に入った西郷真央選手と西村優菜選手の活躍は驚くばかりです。

「絶対にもう一度シードを取る」という気持ちが強くないと難しい“復活組”にも注目したいですね。特に、3シーズンぶりのシードを獲得した藤田さいき選手は、ベテランらしく長いシーズンでも心身をうまく調整することができたのだろうな、と感じます。11月22日に36歳になったということを考えても、気持ちを切らすことなくいられたのはすごいことです。本人のモチベ―ションの維持はもちろんですが、周囲のサポートも大きかったでしょう。藤田選手ほどのベテランになれば、いつもいつも張りつめていることができない、ということはよくわかっているはずです。そのなかで自分をコントロールしたのだと思います。

残念ながらシードを失ってしまった選手たちにはみんな、頑張って復活を目指してほしいと強く思います。

福田真未選手(賞金ランキング57位)、成田美寿々選手(同102位)はそろって29歳。この2人に限ったことではありませんが、女性は、これくらいの年齢でゴルファーとしてだけでなく、人生そのものを改めて考える人が多いのではないでしょうか? その長い人生の中で、ゴルフが占める割合を探りつつ、再びツアーの第一線で活躍して欲しいと願っています。

対照的なのが、同学年の青木瀬令奈選手。「宮里藍 サントリーレディス」で優勝した後、調子を上げて賞金ランキング21位でシード維持をしました。優勝した時には「一時は引退も考えた」と打ち明けていたようですが、サントリー前週の予選落ちで「基本に返る」ことを決めてよくなったと聞きました。

プロゴルファーというのは常に、不安を持ちつつプレーしているものです。そんな中で、クルっと気持ちを入れ替えることが必要なこともあります。青木選手にはこれがうまくできたのでしょう。自分をしっかり持ちつつ、切り替えるべき時には切り替える。長い間、ツアーで戦い続けるためには、こんな難しいことをする必要もあるのです。

今季、思うような結果が出た人も、そうでなかった人も、本当にお疲れ様でした、と伝えたいと思います。そして、体も心も一度開放して、改めて来季、そしてその先へと向かっていくことを祈っています。

1日、1日、着実に積み上げながら、1試合、また1試合とプレーする。そんなシーズンを毎年、重ねながら、プロゴルファーの生活は続いていきます。そんなことも少し、皆さんに知って頂くことができれば、また違う目でツアーを楽しんでいただけるのではないでしょうか。

原田香里(はらだ・かおり)
1966年10月27日生まれ、山口県出身。11歳からゴルフを始めると、名門・日大ゴルフ部に進み腕を磨いた。89年のプロテストに合格しプロ転向。92年の「ミズノオープンレディスゴルフトーナメント」でツアー初優勝。93年には「日本女子プロゴルフ選手権大会」、「JLPGA明治乳業カップ年度最優秀女子プロ決定戦」勝利で公式戦2冠を達成。98年には賞金ランキングでも2位に入るなど通算7勝の活躍。一線を離れてからは日本女子プロゴルフ協会の運営に尽力。今年の3月まで理事を務めていた。

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