クラブセッティングを考える際に、誰しも悩むのがウッドとアイアンの境目のクラブだ。パワーやスイングタイプによって境目となるポイントが変わったりするが、概ねロフト21〜26度になるだろう。このロフト帯には、フェアウェイウッド(FW)やアイアンはもちろん、ユーティリティ(UT)もあり、さまざまなモデルが選べる分、自分に合ったモノを探すのが非常に難しい。


そこで今回は、同じロフトに設計されたFW、UT、アイアンがある場合、どのような違いが出るのか考えていく。

まず、それぞれのクラブを見ていくと、シャフト長と重心深度に違いがあることが分かる。モデルによって微妙な違いはあるが、FWが最もシャフトが長く、ヘッドが大きい分、重心深度も深くなる。一方、アイアンは同じロフトでもシャフトが短く、重心深度も浅くなり、UTはいずれもFWとアイアンの中間になる。

このシャフト長と重心深度の差によって生まれるのは“インパクトロフト”の違いだ。

スイングしてクラブを遠運動させた場合、インパクト付近でシャフトがしなり戻る際に、ヘッドの重心はシャフトの延長線上に来るように動く。つまり、重心深度が深いクラブほど、インパクトでお尻が下がりやすく、その分、ロフトが寝て当たるのだ。しかもFWの場合、クラブが長い分、ヘッドスピードが上がりやすく、シャフト自体もカーボンでやわらかくなっている。大きなしなり戻りが起きやすく、より一層、インパクトロフトが寝る傾向にあるわけだ。

つまり、同じロフトであっても、FWは打ち出し高さを稼ぎやすく、高いボールが打ちやすくなる。たとえばロフト21度というと、アイアンではよほどのパワーと技術がないとボールの高さを出すのが難しくなるため、プロであってもUTやFWに置き換える選手が出てくるわけだ。

また、ミスへの寛容性という面でも大きな違いが出てくる。FWのように重心深度が深い大きめのヘッドの方が当然ながら慣性モーメントも高くなり、アイアンよりもミスヒットに強くなる。ソールの形状が工夫された最新FWであれば、ダフリやトップにも強くなっており、安定して飛距離を稼ぐという意味ではかなり優位だと言っていいだろう。

これだけ聞くと、境目のクラブはFW一択に思えるかもしれないが、現実は決してそうはならない。当然ながらFWにもデメリットがあるからだ。

そもそもシャフトが長くなれば、それだけ振りにくさが出てくる。また、高さが出るというメリットも、人によって“高さが出過ぎて、飛距離をロスしてしまう”といったことにもなりかねない。そして、使用する上で大きなネックとなるのが、ロフトが寝るほどFWは出っ刃で構えにくい「顔」になってしまうことだ。

ゴルフのクラブを見る際、シャフトの軸線に対してリーディングエッジがどこにあるかを示す「FP(フェースプログレッション)」という指標がある。FWというクラブは基本的にシャフト軸よりも前方にリーディングエッジがあるクラブだが、ロフトが寝たクラブでこのヘッド形状にすると、極端に出っ刃な顔になりやすいのだ。

実際、ロフト21度のFWを使用するプロは一定数いるが、もっとロフトが寝たFWとなると一気に使用者が減ってくる。その大きな理由の一つが独特な顔にあるのは間違いない。そういった意味で考えると、UTやアイアンはシャフト軸よりもリーディングエッジを後方に下げたモデルが作りやすく、ロフトが寝ても顔が整えやすいクラブになる。

結果として、アイアンよりも性能的にやさしく、FWよりも振りやすく“構えやすい顔”のUTを選ぶプレーヤーが多くなるわけだ。最新モデルを見ていくと、キャロウェイの『ローグST MAX FAST UT』やヤマハの『RMX VD UT』などは、クラウン部分に対してフェースが大きく見えるように顔を工夫して、“当てやすさ”を強調したモデルも増えている。

このように、同じロフトであっても、FW、UT、アイアンで振り心地や弾道が変わり、構えた際の顔にも大きな違いが出てくる。顔に違和感があったら、どんなに性能の良いクラブでも結果が整わない危険がある。新しいクラブを購入する際には、試打をしてデータを見ることはもちろん、そのクラブが自分にとって構えやすい顔かどうかもしっかりチェックしてほしい。(文・田辺直喜)

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