ツアー唯一となる福岡での戦い「ほけんの窓口レディース」は高橋彩華とのプレーオフを制した渡邉彩香の今季初優勝で幕を閉じた。市街地のトリッキーなコースでなぜ飛ばし屋は勢いに乗る黄金世代をねじ伏せることができたのか。上田桃子らを指導するプロコーチの辻村明志氏が勝因を語る。


■今年の和白でスコアが出た理由
福岡カンツリー倶楽部 和白コースは総距離6299ヤードとツアーでも1、2を争うほどの距離の短いコース。それでも例年優勝スコアは一桁台。「ほとんどはティショットが打ち下ろしで2打目以降は打ち上げ。右ドッグレッグ、左ドッグレッグとあって、短い番手で打つことが多いなかでも、縦距離の精度が非常に求められます」と辻村氏。だが、例年とは異なる部分があった。

「いつもは、そこに硬いグリーンがあって選手の行く手を阻んでいましたが、今年は雨の影響もあってそこまでコンパクションが出ていませんでした。だから、スコアが出たのだと思います」。2012年に和白に移ってから初めてカットラインがアンダーパー、そして優勝スコアがトーナメントレコードとなったのにはそんな理由があった。

■渡邉彩香が守った3つの鉄則と長いクラブと短いクラブの打ち分け
そんな今年の和白で美酒に酔ったのがトータル11アンダーまで伸ばし、プレーオフを制した渡邉。「攻めのゴルフ」で一時は14アンダーまで伸ばした。開幕から好調の飛ばし屋を辻村氏は「フェードの3つの鉄則を守っている」と表現する。

「下からヘッドが入らない、出球は必ず左、インパクトからフォローにかけてスエーしない。この3つが守られているから、今の渡邉さんは曲がり幅が一定で少なめのフェードが打てています。スランプ時はサイドスピン量も多くて引っ掛けもあった。いいときのショットに完全に戻ったといえますね」

特にスエーに関して今大会でも意識が見て取れたという。「打つ前のルーティンのなかに左に流れず、腰を切る動きを確認していました。体が突っ込まずに打てていた理由だと思います」と準備からスイングのイメージができあがっていた。

また、こんな部分にうまさも。「渡邉さんと言えばドライバーを力強くインパクトするイメージがありますが、ウェッジではバチンと入れることなく程よく柔らかく打ってスピンコントロールしていました。だから、柔めのグリーンで戻りすぎることもないですし、縦距離も合っていましたね」。まさに柔よく剛を制すといったところか。

■出球を管理する練習と道具選び
ウェッジ以上に「ドライバーの飛距離と同じくらい渡邉さんのストロングポイント」として辻村氏が挙げるのがパッティング。パーオンホールの平均パット数は2勝を挙げた15年は12位となるなど常にトップ10に近い数字。今年は7位(1.7727)とさらに良化している。

「特に渡邉さんの良いところは出球を管理できているところです。ショットではフック気味に握りますが、パッティングでは両手を合掌のように手のひらをスクエアに握っています。だからフェース面の管理ができていて打ち出したい方向に打てています。道具選びにもそれは表れていて、センターシャフトのトラスを使うことでフェースローテーションを最小限に抑えています」

出球管理のために練習にも一工夫。「4メートルほどのゴム紐を張って、線に打ち出す練習を福岡でも行っていました。線に対してのアライメント、目線を徹底して確認していましたね。そういった基本的な部分ができているからこそのスタッツでしょう」と解説した。

プレーオフにピリオドを打ったバーディパットは15メートル。幸運も重なったが、打ち出し、転がりが良かったからこそカップに収まったのは言うまでもない。


解説・辻村明志(つじむら・はるゆき)/1975年9月27日生まれ、福岡県出身。ツアープレーヤーとしてチャレンジツアー最高位2位などの成績を残し、2001年のアジアツアーQTでは3位に入り、翌年のアジアツアーにフル参戦した。転身後はツアー帯同コーチとして上田桃子、松森彩夏、吉田優利などを指導。様々な女子プロのスイングの特徴を分析し、コーチングに活かしている。プロゴルファーの辻村明須香は実妹。ツアー会場の愛称は“おにぃ”。

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