山下美夢有が4打差を逆転して、今季初の地元・関西で行われた「宮里藍 サントリーレディスオープン」でシーズン2勝目を挙げた。六甲山の麓に位置した丘陵コースで、山下は4日間アンダーパーを並べ続け、ボギーはわずかに2つのみ。その安定性はどこに隠されているのか。上田桃子らを指導するプロコーチの辻村明志氏が勝因を語る。


■フラットに見えて、絶妙な傾斜があるフェアウェイ

指導するアマチュアの六車日那乃のキャディとして、会場となった六甲国際カントリー倶楽部を回った辻村氏。大会アンバサダーを務める宮里藍がピンポジション設定を担当していたセッティングについて、「ひとつひとつに意図がありました。狙っていけるホール、ガマンしないといけないホールが分かれていて、選手たちも頭を使ったと思います」と話す。

18ホールを振り返って一番印象的なホールは、やはり最終18番ではないだろうか。激しい打ち下ろしで、2打目は左足下がりの傾斜が必須になるが、実は傾斜に翻弄されるのはこのホールだけではないと辻村氏は明かす。「神戸の六甲山にある丘陵コースです。足場が左足上がりやつま先上がりになったりと、フェアウェイはフラットに見えて、細かい傾斜が多くあります」。

その「ぼこぼこ」した傾斜に、どれだけ対応できるか。そしてアンジュレーションに富んで締まっているグリーン周りで、どれだけいいパフォーマンスができるか。ティショットからパッティングまで「総合力」の高さが試された。

■傾斜の攻略ポイントは、山下美夢有の“軸”にアリ

では、4日間のパーオン率は56/72(77.8%)で全体2位の数字を記録した山下はどうだったのか。傾斜地からのショットについて、辻村氏は山下のスイングをこのように分析する。

「山下さんの強みはスイングがシンプルなことです。そして傾斜から打つために大切なのは“軸”。山下さんは傾斜に軸を合わせてバランスよく立ち、その軸を崩さないまま、腰と肩が平行に回って打つことができます。スイングの“シンプル度”と“バランス度”はトップクラスです」(辻村氏)

フラットなライからのショットの精度が高いことに加え、足場に傾斜があるような打ちにくい“イレギュラー”なライからでもピンを狙うことができる山下。この強さは、「体の軸が傾かないというバランスの取れたシンプルなスイング」から生み出されていると辻村氏は話す。現に山下も優勝会見で「疲れてくると軸がブレてくるので、意識してプレーしていました」と明かしており、“軸”はスイング修正のチェックポイントのひとつだった。

そしてその“軸”を支えるポイントとして、辻村氏は山下のある動作に注目した。「構えたときに足をパタパタとさせるワッグルを行っています。手だけでワッグルをする選手は多いですが、山下さんは足裏を動かして、軸の位置や傾斜に対する重心を取っています。これでリズム感も作れますし、山下さんのリズムは構えたときから始まっていますね」。この足を動かすワッグルは、リズムを生み出すのはもちろんのこと、傾斜に合った“軸”を作り出しているのだ。

■パッティングのフィニッシュに垣間見えた自信

もちろん、ショットだけではない。「最終日ノーボギーで回れたのはパターのおかげかな」と山下が話すように、グリーン上でも山下の強さが光ったと辻村氏は話す。

「ボールがカップに向かっていくときのスピードが、前回優勝したときよりさらに良くなっています。自分の目線と打ち出しが合っているからこそ、フィニッシュでヘッドがピタッと決まって止まっています。自信を持って打っていることが垣間見えますね」

傾斜からの軸を保ったショットでカップと同じグリーン面を捉え、そこから自信を持ってストロークするパッティングで決める。この総合力の高さは、今大会を終えて1位になった“パー4平均スコア”にも表れている。

解説・辻村明志(つじむら・はるゆき)/1975年9月27日生まれ、福岡県出身。ツアープレーヤーとしてチャレンジツアー最高位2位などの成績を残し、2001年のアジアツアーQTでは3位に入り、翌年のアジアツアーにフル参戦した。転身後はツアー帯同コーチとして上田桃子、松森彩夏、吉田優利などを指導。様々な女子プロのスイングの特徴を分析し、コーチングに活かしている。プロゴルファーの辻村明須香は実妹。ツアー会場の愛称は“おにぃ”。

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