50歳以上のプロゴルファーが持てるテクニックを駆使して真剣勝負を行う国内シニアツアー。レギュラーツアー時代から勝負にこだわり続ける者もいれば、新たな気持ちで挑む者もいる。今季、密かに爪を研いでいるのがプロ34年目を迎えた56歳の鈴木亨だ。レギュラーツアーで8勝を挙げ、シニアツアーでも5勝を挙げている鈴木のゴルフ観や技術に触れながらその横顔に迫る。(取材/文・山西英希)


■シニアはスタート前の準備は千差万別

シニアツアーに参戦して今年で7年目を迎える鈴木だが、スタート前の練習場でほかの選手を見ていてあることに気がついた。「レギュラーツアー時代は、どの選手も必ずサンドウェッジからボールを打っていました。それから徐々に番手を上げていき、ドライバーを打った後は、短いクラブを打って終わり、というパターンが多かったですよね。でも、シニアツアーではいきなりドライバーから打つ人も珍しくないんです」。

そのドライバーはもちろん、マン振りするわけではない。あくまでもウォーミングアップとして、ドライバーを軽く振ってボールを打つのだ。球筋を確認したり、形を作るのが目的ではないので、打球は気にすることはない。あくまでも一番長いクラブを振ることで、スイングの動きを体に伝えることが目的だ。

また、9番アイアンから打ち始める選手もいる。「これもウォーミングアップが目的で、腕だけで振るのではなく、ヘッドの重さを感じながら全身を使ってスイングします」と鈴木。この場合はリズムよくボールを打つことが大切になるという。

シニアプロは長年の経験から自分に合ったアップの仕方を見つけている。中には省エネを兼ねてボールを打たずにストレッチだけしてスタートする選手もいるほどだ。

■スタート前に左素振りをするのが鈴木流

当の鈴木は、どのようなウォーミングアップを行っているのだろうか。「自分の場合はストレッチをしっかりやった後に、長くて重い素振り用の器具を使ってスイングします。ゆっくりと振るんですけど、トップでは左肩がアゴの下にくるまで上体を捻転させる意識を持ちます」と長いバットのような素振り棒を使っている。

「ある程度長さと重さがあるので、それにつられるように振る感じ。筋肉を伸ばすイメージで振ることがポイントです」。遠心力もかかるためウォーミングアップには最適という。練習器具がなければクラブを2本持って振ってもいいが、長いほうが体全体を使おうとするとのこと。

素振りは練習前だけではない。「スタート前の練習が終わったときに、必ず行うのが左打ちの素振りです。おそらくアベレージゴルファーの人はあまりやっていないと思いますが、練習場でボールを打ち続けていると、体の右サイドだけ縮んだりするので、それを修正するためにも有効です。言ってみれば、これも一つのウォーミングアップだと考えましょう」。

この左打ちの素振りを行うだけでも、体の負担が軽減されることは言うまでもないだろう。ゴルフスイングは日常的にはない動きや使わない筋肉を動かすため、スタート前のウォーミングアップを欠かさないことがケガの防止にもつながり、長くゴルフを楽しめるというもの。昨年の春先以降、頚椎ヘルニアからくる右腕のダルさに悩まされた鈴木。だからこそ、アベレージゴルファーにもスタート前のウォーミングアップを大切にしてほしいと話す。

■鈴木亨
すずき・とおる/1966年5月28日生まれ、岐阜県出身。身長178センチ、体重80キロ。日本大学ゴルフ部時代は「日本アマ」などのタイトルを獲得。同期には川岸良兼がいる。89年にプロ転向後は、93年にツアー初優勝をはじめ、通算8勝。2011年までシード選手として長年活躍。シニア入り後は、3年目の18年に3勝を挙げて賞金ランキング2位。今季は賞金王を目指す。シニア通算5勝。ミズノ所属。

取材協力・季美の森ゴルフ倶楽部

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