西村優菜が3日間ボギーなしのプレーで「ニチレイレディス」を制し、今季初優勝を遂げた。ツアー最小ともいわれるグリーンを攻略した西村。接戦から抜け出し、最後は3打差をつけたその強さはどこにあるのか。上田桃子、松森彩夏、吉田優利らを指導するプロコーチの辻村明志氏が勝因を分析する。


■グリーン面が小さいからこそ生きた強み

日本伝統の2グリーンで林間コース。各ホールは林にセパレートされ、グリーンはツアーで最も小さいといわれている。一度グリーンに乗せれば、チャンスとう選手もいるほど、グリーンは極小。加えて「雨も降りましたし、梅雨ということもあって、グリーンはいつもより止まっていました」と辻村氏が言うように、果敢に攻めることができたのがバーディ合戦につながった。

「グリーンを外しても、バンカーに入らない限りそれほど大きなピンチにはならない」という状況で、最後に優勝を争ったのは優勝した西村と森田遥だった。そしてこの二人には共通点がある。西村はパーオンホールの平均パット数が1位。森田は1ラウンドあたりの平均パット数が1位と、ともにパット巧者であることだ。

「グリーンに乗せればバーディチャンスという感じで、西村さんはロングパットでも“入れにいく”という目をしていましたし、森田さんは小技がとにかくうまい。グリーンを外してもアプローチで寄せて、シビアなパーパットも決めていきました」(辻村)

辻村氏によれば、グリーンが小さいぶん「2段グリーンもなく、乗ればいわば“射程圏内”です。この二人ならなおさらですね」と、パット巧者にはもってこいのセッティングだったといえる。

■優勝争いでも動じない西村優菜の“心拍数”

3日間を通して1ラウンドの平均パット数はともに「24.33」で全体1位。西村も森田も長いパットから短いパットまでことごとく決める展開。そのなかで、最後に森田を上回った要因のひとつとして、西村の落ち着きもあるという。

「15番でバーディを獲って首位が入れ替わってから、17番パー3のティショット。この日は175ヤードでしたが、決して簡単ではない。その場面でも西村さんは焦りがなく、いつもと同じタイミングで打てていました。いつも通りの心拍数にしか見えないんです」。優勝を決定づけたともいえるこの勝負の一打。西村は9番ウッドでは少し大きいと判断し、「(持ち球の)ドローではなくストレートで距離を抑えた」と振り返った。結果はグリーンに落ちてピンに向かい50センチにピタリ。バーディでとどめをさした。

喉から手が出るほど欲しかった今季初優勝を前に、この冷静さを持てるのも西村の強さ。「普通なら気持ちのブレなどもありそうですが、それくらい勝つことに対して動揺といったものがないんです。あの場面であのタイミングでスイングできるのはさすがのひと言。呼吸が全くズレていませんでした」と辻村氏も驚きの1ショットだった。

■敗れた森田はこのあとどんどん勝てる?

「あらためて見ましたが、森田さんの小技は本当にうまいですね。元々そこが強みですが、特に今回は久しぶりにしっかりと見ることができて、それを感じました」と辻村氏も森田のグリーン周り、グリーン上のパフォーマンスにはあらためて感嘆した。「パットの厚みが違います。ヘッドとボールの当たり方の厚みがすばらしい。小さい幅でしっかり打っているので、いちばんエネルギーが伝わるんです」(辻村氏)。

大会2日目も中盤でピンチの連続だったが、2、3メートルのパーパットをことごとく決めた森田。最終日15番にシャンクというアクシデントに見舞われ5年ぶりの勝利を逃したが、「ショットが向上すれば、どんどん勝ってきそうです。ごぼう抜きしてきそうな感じがします」(辻村氏)。

「3パット率が最も低く、タッチを合わせるうまさがあります。自分の中で距離感を持っています。パーオンホールのパット数も3位なので、長いパットも入っている証拠です」。最終ホールを2打差で迎え、パー5の2打目をグリーンそばまで運んだ森田。「あのアプローチも完全に狙いにいっていましたね」と最後は惜しくも外れたが、小技で魅せた森田の復活優勝も近そうだ。

解説・辻村明志(つじむら・はるゆき)/1975年9月27日生まれ、福岡県出身。ツアープレーヤーとしてチャレンジツアー最高位2位などの成績を残し、2001年のアジアツアーQTでは3位に入り、翌年のアジアツアーにフル参戦した。転身後はツアー帯同コーチとして上田桃子、松森彩夏、吉田優利などを指導。様々な女子プロのスイングの特徴を分析し、コーチングに活かしている。プロゴルファーの辻村明須香は実妹。ツアー会場の愛称は“おにぃ”。

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