50歳以上のプロゴルファーが持てるテクニックを駆使して真剣勝負を行う国内シニアツアー。レギュラーツアー時代から勝負にこだわり続ける者もいれば、新たな気持ちで挑む者もいる。今季、密かに爪を研いでいるのがプロ34年目を迎えた56歳の鈴木亨だ。レギュラーツアーで8勝を挙げ、シニアツアーでも5勝を挙げている鈴木のゴルフ観や技術に触れながらその横顔に迫る。(取材/文・山西英希)


■左右の体重移動はないが縦の小さい動きはある

プロゴルファーといえども加齢とともに20代の頃のようなスイングをするのは難しいもの。56歳となった鈴木もしかり。ただ、アプローチに関してだけはシニアツアーに転向してからも技術的に落ちていないという。その理由は、常に基本となる打ち方を守り続けているからだ。

レギュラーツアー時代から、アプローチにおいて鈴木が大切にしているのは、体の軸である背骨を中心に体を回転してボールを打つことだ。それさえ守っていれば、ベアグラウンドからでもボールをクリーンに打てるという。

アプローチが得意ではないアマチュアを見ると「手だけでクラブを操作したり、パッティングのように下半身を固定してまったく動かさないからミスが出るんです」と話す。「ショットのように左右への体重移動は行いませんが、カカトからツマ先への縦の体重移動はあります。狭いスタンスの幅の中で縦の体重移動を行いながら、両手が常に体の正面にくるように体を回転します」。小さな体重移動を使うことで手打ちを防いでミス知らずのアプローチが打てると鈴木。

■ボールを追いかけるようにヘッドは目標に出す

アプローチの基本となるピッチエンドランの構えとして、両足を広げすぎると下半身を使うが難しくなるので、スタンス幅はボール1〜2個分程度。ボール位置はクリーンに打つためにスタンスの真ん中で、手元は左足太モモ前。緩やかなハンドファーストの形になる。

アドレス時は左右の真ん中ぐらいに体重を乗せているが、バックスイングでは背骨を軸とした体の回転に合わせて右足カカトに体重を乗せ、ダウンスイングからフォローにかけては左足ツマ先に体重を乗せていく。このとき両ヒザが左右に流れないように注意し、小さい動きの中で縦の体重移動をする。

「上体を回して打ちますが、クラブヘッドはボールと目標を結んだターゲットライン上を動きます。特にフォロースルーではヘッドがボールを追いかけていきながら、ターゲットラインと重なるようにしましょう」

体は背骨を中心に横に回っているが、ヘッドは目標に向かって出ていく形ができれば、自然と狙ったところにボールを打ち出せる。インサイドやアウトサイドにヘッドが動くと狙ったところに打ち出しにくくなるという。体横回転、クラブは縦に動くイメージ。体の正面に両手があるからこそ可能な打ち方になる。

■クラブを極端に短く握って手打ちのチェック

どうしても手だけでクラブを操作してしまう人向けのドリルがある。「クラブと一緒にスティックを握ってみるとすぐに分かります。スティックがなければ、クラブのシャフトの真ん中辺りを握って素振りをしてみましょう。フォローでクラブが自分の左サイドに当たる人は手だけで操作しています。体を回している人は、クラブが体には触れません」。ボールを打ち終えたら胸は目標方向に向くのが正しい動き。この体の回転が身につくと、ショットにも好影響を与えるという。

ボールをクリーンに打てるようになったら、実戦編として距離の基準を作る。「アプローチは自分の基準となる距離を作ることが大切です。キャリーで30ヤードを打つときの振り幅でもいいし、腰から腰までの振り幅で打ったときに何ヤード打てるかでも構いません。確実にこの距離なら打てるという基準を持っていれば、あとは振り幅の大小微調整するだけで、距離を打ち分けることができます」。練習場でいろんな目標に向かって打つ練習法もあるが、確実に自分が打てる距離をつくったほうが、実戦には有効だといえる。

取材協力・季美の森ゴルフ倶楽部


■鈴木亨
すずき・とおる/1966年5月28日生まれ、岐阜県出身。身長178センチ、体重80キロ。日本大学ゴルフ部時代は「日本アマ」などのタイトルを獲得。同期には川岸良兼がいる。89年にプロ転向後は、93年にツアー初優勝をはじめ、通算8勝。2011年までシード選手として長年活躍。シニア入り後は、3年目の18年に3勝を挙げて賞金ランキング2位。今季は賞金王を目指す。シニア通算5勝。ミズノ所属。

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