<三井住友VISA太平洋マスターズ 最終日◇13日◇太平洋クラブ 御殿場コース(静岡県)◇7262ヤード・パー70>

前週の「三井住友VISA太平洋マスターズ」で2010、12年に続く大会3勝目、ツアー通算18勝目を挙げた石川遼。そのクラブセッティングを見てみると、かつては2本だったウェッジが5本に増え、アイアンは4本に減っている。


20年7月のツアー外競技「JGTO共催ゴルフパートナーエキシビショントーナメント」からウェッジの数を増やした。19年まではアイアンセットのPWに加え、52度、59度のウェッジを使っていたが、PWを抜き、47度、52度、56度、60度の4本のウェッジを投入。ここにはウェッジのロフトピッチをつめて、距離の階段を狭めることで「140ヤード以内を自分の得意ゾーンにしたい」という狙いがあった。

それに伴って、ドライバーで飛ばせるところまで飛ばして、ウェッジでコントロールしなければならない中途半端な距離を残すよりも、ティショットで刻んで、ウェッジでフルショットできるポジションに置くことを重視するマネジメントに変わった。スイング改造と平行していたため、シーズン3勝を挙げた19年シーズンに比べると、2020-21年シーズンのバーディ率は落ちてしまい、セッティング変更の効果をデータから読み取ることはできない。

そして、今シーズンに入ると、ついにセットの9番アイアンを抜いて、43度のウェッジを投入した。これは市販されていない石川特製モデルで、世界を見渡しても43度のウェッジを使う選手は見たことがない。これでウェッジのフルショットで狙えるレンジを「150ヤード以内」に拡張。それと引き換えに、9番アイアンよりもスピンが入って飛ばない43度と8番アイアンの飛距離差は大きくなり、8番アイアンでカバーする距離が増えた。

「三井住友VISA太平洋マスターズ」でのフルショットの番手別キャリーを本人に聞いてみると、他の選手との違いがわかる。( )内には上の番手との飛距離差を入れた。

【石川遼の番手別キャリー】
1W:288ヤード
3W:265ヤード(23ヤード)
3U:243ヤード(22ヤード)
4U:226ヤード(17ヤード)
5I:208ヤード(18ヤード)
6I:197ヤード(11ヤード)
7I:180ヤード(17ヤード)
8I:163ヤード(17ヤード)
43度:146ヤード(17ヤード)
48度:135ヤード(11ヤード)
52度:122ヤード(13ヤード)
56度:109ヤード(13ヤード)
60度:97ヤード(12ヤード)

狙うというよりも飛ばしていくウッド系の飛距離差が開いているのは、他の選手と同じ。ただ、通常はアイアンの上のほうの飛距離の階段は10ヤードくらいで、ショートアイアンからウェッジになるにつれて15ヤードくらいに開いていく選手が多いところを、石川はまったくの逆。ユーティリティから43度までは、17〜18ヤードのギャップができ、ウェッジ5本の間は11〜13ヤードと狭くなる。石川だけの変則的なクラブセッティングといってもいい。

■5本のウェッジでピンをアタックする

本人は「8番アイアンと43度の間をあえて空けている」と表現する。「8番アイアンで打っていく幅を持たせ、8番では攻められないかなと諦めて、43度から下でピンをアタックできるように43度を飛ばなくしている」。8番アイアンより上のクラブで、番手のちょうど間の距離が残ったら無理にピンは狙わない。でも43度から下はピンを積極的に狙っていくクラブと完全に分けているのだ。

かといって、アイアンで番手の間の距離が残っても完全に諦めるわけではない。『フル、フル3、10-10、10-3、等速』と5つのスイングを使い分けることでカバー。「特に8番アイアンはフォローを3時で止める『フル3』で打ったり、10時10分の振り幅で打つ『10-10』で打ったりと仕事が増えます。まだ飛びすぎたりすることもあって、力感が安定するのにはもう少し時間がかかるかな」と課題も残す。

■3年前には入っていなかったクラブでバーディ量産

それでもウェッジを5本に増やした効果は出ている。最終日の1、3、12、15番では、100ヤード前後を56度でチャンスにつけてバーディを奪い、正規の4番と優勝を決めたプレーオフ2ホール目の3打目は48度でピン側につけてバーディパットを沈めた。これはどちらも3年前には入っていなかったクラブだ。

「きょう(最終日)は56度でけっこうバーディが獲れていますけど、長く52、58度という番手でやってきて、最初は56度でイメージがまったく湧かなかった。アプローチのために入れるというよりは、100ヤード前後の距離をもう少しピッチを狭めるためと割り切っています」

また、3番ユーティリティ、4番ユーティリティ、5番アイアンの間も17〜18ヤードと番手間の飛距離差は大きい。本来なら3Uと5Iの間に2本入れたいところだが、ウェッジを5本に増やしているために、4Uの1本でカバーするレンジも広くなってしまう。

■最難関パー3は「パーを続けられたら勝ち」

4日間で2番目に難しいホールとなった230ヤード設定の17番パー3では、最終日に4番ユーティリティの『フル3』で、ピンの右5メートルに乗せるナイスショットを放ち、危なげなくパーで切り抜けている。ちなみに17番の実測値を見ると、初日は238ヤード、2日目は227ヤード、3日目は233ヤード、最終日は219ヤード。つまり、最終日のピン位置はちょうど4Uと5Iの間だった。

「17番でパーオンができたのは、きょう(最終日)が初めてなんです。このくらいの距離のパー3は乗せるのがすごく難しくて、方向性と縦の距離感をウェッジのように合わせるのは現実的ではない。あそこはバーディチャンスではなく、むしろパーを続けられたら勝ちというホール。ああいうきついときに難しいパー3でパーオンすることは優勝するために必要なことですし、本当に自分が思った以上のいいショットが打てました」

石川の17番を振り返ると、初日はグリーンの外からチップインのバーディ、2日目からは3日連続でパー。17番ホール用にクラブを入れたくなるところだが、パーでいいと割り切ってマネジメントしていた。「4番ユーティリティでハーフショットを練習しておけば、5番アイアンとの間は作れる。クラブセッティングに関しては、そのピッチをどこで空けるかというのを明確にしました」。飛距離の階段を滑らかにせず、“あえて”ギャップを作ったことで、パーでいいホールと、バーディを獲るべきホールがはっきりしていたのだ。

■11年前から使い続けてきたL字パターを変更

そして、ツアー屈指の高速グリーンでタッチが合っていたことも大きい。最終日の平均パット(パーオンホール)は1.6923の5位で、4日間を通して3パットはゼロ。その手に握られていたのは、2011年から使い続けてきたL字型のエースパター、オデッセイ『プロタイプ iX #9HT プロトタイプ』ではなく、ショートネックのブレード型、オデッセイ『TRI-HOT 5K THREE』だった。

大会の2週前に投入したばかりの1本については、「真っすぐ真っすぐストロークしやすくてやさしいし、直進性が強い」と話していて、新しいエースになりそうな予感もある。3年近く取り組んできたスイング改造が大きく注目されているが、ウェッジ5本体制に加えて、L字以外のパターで勝ったことも、石川の新しいゴルフスタイルを印象づけた。(文・下村耕平)

【石川遼の優勝クラブセッティング】
1W:キャロウェイ ローグST MAX LS(10.5度/Tour AD CQ-6X)
3W:キャロウェイ ローグST ◆◆◆T(14度/Tour AD CQ-7X)
3U:キャロウェイ APEX UW(19度/Tour AD UB-8X)
4U:キャロウェイ APEX UW(23度/Tour AD PT-9X)
5〜8I:キャロウェイ APEX TCB(N.S.PRO MODUS system3+ S)
43,48,52,56度:キャロウェイ JAWS FORGED(N.S.PRO MODUS system3+ S)
60度:キャロウェイ JAWS RAW(DG EX TOUR ISSUE S200)
PT:オデッセイ TRI-HOT 5K THREE
BALL:キャロウェイ CHROME SOFT X

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