川崎志穂は千葉県出身で、2017年のプロテストに合格。22年シーズンはステップ・アップ・ツアーを主戦場として戦っているが、ここ数年は思うような成績が出ていない。そんな川崎の心のうちに迫った。
川崎の持ち味は、なんといってもドライバーの飛距離だ。平均飛距離250ヤード超えと、女子プロの中でも飛ばし屋のほうである。ティショットで飛距離を稼げるのは、スコアを作る上でアドバンテージになる。だが、ここ2年〜3年は過酷で辛い“イップス”になっていたという。
「そのときは、もう選手を辞めようかなって思いました。恐怖と不安で試合に出られなくなって、選手として自信を失くしていました。ツアー選手としては、もったいない期間に感じたし、まさしくどん底でした」と、辛い時期の気持ちを打ち明けた。
「試合に出る以前に、ゴルフ場に近づくにつれて体調が悪くなっていました」というように、自身にストイックな川崎は思いどおりにいかない恐怖心から、自分を追い込んでしまっていた。
イップスになった原因について聞いてみると、「ドローヒッターだったんですが、持ち球をフェードに変えようとしてスイングの修正をはじめたときでした。トップでクロスしてしまう動きをレイドオフ方向(トップのポジションでクラブが飛球線と平行ではなく左の方向を指す形のこと)に変えたのがきっかけです」。
スイングを改造には1年〜2年はかかると言われ、シーズンを棒に振らないといけなくなることもある。プロゴルファーにとっても、スイングを変えるということは簡単なことではない。
「もう無理だろうな」と、何度も思っていたと振り返る。だが、野球選手のイップスを治すコーチにも協力してもらい、「着々とイップスから抜け出せるようになってきた」と話す。
23年のトーナメント出場は、限られた試合数になる。その中で優勝を目指すのはもちろんだが、川崎らしいゴルフをまた見せられるようになることが望ましい。
23年のツアー出場権をかけたQTは1次で落ちてしまったが、川崎自身は「今後の自分のゴルフにいい意味でつながった」と話し、「結果としては落ちてしまい、選手としてはよくないことですが久しぶりに恐怖感なく試合に挑めていたので、自分のゴルフ人生的にはいい方に向かっているのだと思います」と心の内を明かした。
イップスから恐怖と不安につぶされそうになっていたところから、しっかり前を向けるところまで歩みを進めたのだ。
「23年シーズンは出られる試合にはすべて出場したい。頑張りたいです。昨年、11年ぶりに優勝を果たした金田久美子さんや藤田さいきさんたち先輩の活躍にも勇気をもらいました。怖がって試合に出たくないとか言ってられないなって…、背中をおされました」。
イップス期間を通して心の変化もあったという。「いつか、自分が経験してきたことを伝えられるようになりたいです。私みたいに辛い経験をしないように、教えられるようになりたいなと思うようにもなりました」と辛い道を経験したからこそ見えたものもあり、いつかはプロを目指すジュニアたちの力になりたいとも話した。
いつも笑顔で元気な川崎だが、最後は「選手としての人生をまずは頑張りたい」と強いまなざしで言い切った。ゆったりとしたスイングから放たれる驚きの飛距離で、きっとまたギャラリーを「おおっ」と言わせるに違いない。(文・高木彩音)
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