■万人には当てはまらない? 早起きは三文の徳

昔からの言い伝えでは、早寝早起きが褒めたたえられ、朝が弱い人は「宵惑いの朝寝坊」などと言われて、取り得がなく役に立たないかのように非難されます。

また、最近のビジネス界では「朝活」と称して早起きが勧められています。確かに朝は作業能率が上がるので、勉強や仕事がはかどりますが、ごく一部には否定的な報告もあります。

京都大学の研究者が健康な成人を調べたところ、早起きをする人は高血圧や脳卒中を起こす可能性が高いことがわかりました。この報告だけで早起きを否定できませんが、早起きは良いことだと信じ、就寝時刻を早めずに起床時刻だけ早めて睡眠不足に陥ると、メタボや生活習慣病になりやすいのは確かです。

■昼寝の時間が長いと認知症になりやすい?

たしかに認知症が進むと、よく昼寝をするようになりますが、昼寝をすると認知症になりやすい、とは一概には言えません。

毎日1時間以上も昼寝をしている人は、そうでない人に比べて認知症になる確率が2倍になります。しかし、30分以内の昼寝を習慣にしている人は、逆に認知症になる確率が5分の1に減ります。

高齢者は老化のため、眠る能力「睡眠力」が衰えます。夜間の睡眠時間が短くなり、睡眠の質が低下してしまうのです。夜の睡眠を補うために、昼間に短い時間の仮眠をとることは、認知機能を維持するためには良いことです。しかし、長い時間の昼寝をとると睡眠・覚醒のリズムが崩れるため、脳の働きを悪くしてしまいます。

■成長ホルモンが大量分泌! 寝る子は育つ
「寝る子は育つ」という言い伝えは本当です。子どもが育つには、成長ホルモンがとても大切です。成長ホルモンは、寝ついてから3時間に多く現れる深い眠りときに、脳の下垂体から大量に分泌されます。

この成長ホルモンのシャワーを浴びることで、子どもが大きくなっていきます。成長ホルモンは大人になると量が減りますが、日中に傷ついた細胞のメンテンスには欠かせないホルモンです。

睡眠は脳の発達にも影響を与えます。夜更かしや睡眠不足の子どもでは、脳の発達が遅れます。また、十分な睡眠をとらないと、気持ちを落ち着かせる脳内物質のセロトニンが不足したり働きが悪くなるので、うつになったりキレて攻撃的になったりします。

■金縛りは心霊現象?
日本では金縛りは霊の仕業とされ、世界的に見ても悪魔や魔女、悪霊によるものと考えられてきました。しかし、睡眠学の研究により、金縛りは「睡眠麻痺」という科学的に説明できる現象であることが分かりました。

睡眠には、体が休むレム睡眠と脳が休むノンレム睡眠があります。レム睡眠中には脳の活動が盛んで、夢をよく見ます。レム睡眠中に目覚めるとき、通常は脳も体も同時に覚醒します。しかし、精神的なストレスが強かったり、睡眠の質が悪かったりすると、脳が目覚めても体が眠ったままで動かせず、金縛りになります。

■寝言に返事をしてはいけない?
隣で眠っている人があまりにもはっきりした寝言を言うと、つい質問したり合いの手を入れたくなります。しかし、寝言に返事をすると、眠っている人が目覚めなくなるとか死んでしまう、という言い伝えもあります。

寝言が出るのは夢を見ているレム睡眠のときに多いのですが、深いノンレム睡眠中にも見られます。レム睡眠中の寝言は喜怒哀楽の感情を伴ったものが多く、ノンレム睡眠中には最近の出来事や今の状況に関するものがよく聞かれます。

睡眠中にも「見張り番」と呼ばれる情報収集機能が働いているので、寝言に対する返事を夢に取り込んだり、もう一度寝言を言ったりすることがあります。寝言に返事をしても健康を害することはありませんが、睡眠の邪魔になることもありますから、返事は小さな声でしたほうが良いでしょう。

ここでは皆さんに、現時点で正しいとされている睡眠や不眠に関する情報をもとに、真偽を判断しました。睡眠にはまだ、解明されていないことがたくさんあります。今後、科学の進歩によって、新しい格言や言い伝えが生まれるかもしれません。

坪田 聡