「他人を妬んではいけません」とは、誰しも子供の頃、周りの大人の誰かから言われた覚えはあるはず。でも、言うは易し、行うは難しで、誰かを妬んでしまえば、その相手の悪口を言うようになり、しまいには、その相手に何か意地悪をしたくなるかも。

例えば、柿がおいしそうに色づく頃。そんな隣の柿を見て、「あら、嫌だ、ウチの柿より、おいしそうじゃない。頭に来る!」なんて腹が立ったせいか、後で、その家の庭にこっそり○○を投げ込んでしまうようなことは、あってはならぬこと!

ここでは、こうした妬み心が原因で生じる問題行動の芽を未然に摘み取り、さらに、妬み心が原因で生じてくる心の様々な不調、例えば、イライラが止まらない……といった事態を回避するため、精神医学的観点からぜひ、知っていただきたいことを詳しく解説します。

■妬み心は心の健康を損ないやすい
もしかしたら、「私は他人を妬んだりしません」と、はっきり断言する人もいるかもしれませんが、人は誰しも時に誰かを妬んでしまうもの。もっとも妬みの視線は通常、自分の見知らぬ人には向きません。例えば、テレビで世にもきれいな人を見たとしても、「あら嫌だ! 頭に来る!」なんてことはまずなく、大抵は、「何てきれいな人!」でおしまい。妬む相手は通常、自分の身近な人です。

例えば、姉妹関係。仮に、妹は男子に大変人気がある、かわいい女子だとして、姉は、その正反対で全然、男子に人気がないとします。そんな姉が、ボーイフレンドと楽しそうにはしゃぐ妹を見たりすれば、思わず妬んでしまうかも。人によっては、そんな妹を見ても、「あら、楽しそうにやっているわね」と、やさしく見守れる場合もあるでしょうが、もしも妹を妬んでしまい、こっそり意地悪をするようになってしまっては大変です。もっとも、こうなっていく背景には姉の心理に何らかの不合理性が生じているもの。

例えば、自分を妹と比べてみては、「自分の方が○○なのに、どうして妹だけモテるの?」と怒ってしまったり、場合によっては、自意識が強過ぎて、自分よりモテる妹が許せない場合もあるでしょう。でも、他人をいつも上から目線で見ていては、自分に寄って来る男子は、なかなかいないでしょうし、そもそも自己評価なんてものは、他人が自分に下す評価とは往々にして大変、違うもの。自分ではオードリー・ヘップバーンのように、イケてる女子のつもりでも、周りの自分を見る目は残念ながら、かなり厳しい場合だってあります。

このように嫉妬心は時に誰の心にも生じるものとはいえ、家族関係など、大切な人間関係を壊すポテンシャルがあることには皆さん、充分、お気をつけください。

■妬み心には、うつ病、パーソナリティ障害などの可能性がある場合も
嫉妬心は時に、心の病気のきっかけになってしまう可能性もあります。その際、まず第一に気をつけておきたいのは、うつ病。うつ病は代表的な心の病気のひとつで、一生のうちの罹患率は、10〜20%前後もあり、誰でも何らかの要因によって、脳内環境が悪化すれば、うつ病を発症してしまう可能性があります。もしも嫉妬心が原因で何らかの悪循環に陥ってしまえば、脳内環境が悪化してしまい、うつ病を発症する可能性があることには要注意です。

次に、妬み心に関連する可能性がある心の病気に、パーソナリティ障害があります。パーソナリティ障害の症状は、一般に本人の気質による部分が大きく、簡単に言えば、「元々、そんな人なのです」と言って済ませる面もあります。しかし、その性格のために日常生活上、深刻な支障が生じやすくなります。例えば、妬み心が強くなり過ぎて、もしも、ちょっとしたことで周りの人を妬んでは、その人の悪口を言ったり、意地悪をしていては、周りの人から白い目で見られてしまうでしょう。

こうしたパーソナリティ障害で見られやすい問題行動は、特にストレスが強くかかっている時、強まる傾向があり、できるだけ早期に精神科(神経科)を受診して、心理療法などを受けることが望ましいですが、本人が自分自身に問題行動があることを認識することは少なく、精神科を受診されることは少ないです。

■それでは、チェックを!
では以上のまとめとして、嫉妬心が病的になる傾向を示す症状を箇条書きにします。

・特定の誰かが気にかかって仕方がない
・その相手の悪口をよく言ってしまうだけでなく、何か意地悪をしてしまったこともある
・周りの誰かから妬みっぽさを指摘された覚えがある
・気持ちが冴えないことが多く、毎日を楽しめていない
・イライラして目先のことに集中できない
・眠りが浅くなってしまっていたり、食欲が大きく変化している
・何か深刻な心配事を抱えていて、不安が強い毎日になっている
・ギャンブル、飲酒、衝動買いなど、それに対する依存が強まれば、日常生活に多大な支障を起こし得るものが、イライラの解消手段になっている

もしも、上記のようなことがいくつも該当するようなら、あなたの心の健康には赤信号がともっていると思います。さらに、もしも、その不調が原因で日常生活に深刻な支障が生じているようなら、心の病気に近くなっている可能性もあります。心の病気は、できるだけ早期に精神科(神経科)を受診して、治療を開始することが、病気の予後を良好にする大原則。ぜひ、精神科(神経科)の受診をご考慮ください。

■嫉妬のエネルギーをポジティブな方向に向けてみて!
嫉妬心は誰の心にも時に生じる、言わば人間の自然な感情。状況によっては、嫉妬心がどうしても避けがたいものだとすれば、その時、生じた嫉妬心を病的にさえしなければ、嫉妬心を制したことになります。

その際、まず心身に充分な余裕があるか否かは大切なポイント。仕事もプライベートも順調な時と、何か深刻な心配事を抱えているような時とでは、心のあり方は全然違うもの。とはいえ、この厳しいご時勢では、充分な余裕を持つこと自体、なかなか容易なことではないでしょう。それでも、やるべき物事の効率を上げてみる、と同時に、心身のコンディショニングを整え、ストレス対策もしっかり取ってみる……など、できる限り、心身に余裕を生み出していきましょう。

次に嫉妬心で、気をつけていただきたいことは、誰かを妬んでしまった時、そのわだかまりをどう発散させているかです。もしも、その相手の悪口を言って、心のわだかまりを発散させたとしても、その効果は一時的。やはり、そのエネルギーは、何かポジティブな方向に向けたいもの。例えば、もしも自分が成し遂げたい目標が、しっかりあれば、そのエネルギーを注ぐ先ははっきりしてくるはず。

それでも、自分がどうしても欲しいものを身の周りの人が持っていたりすれば、思わず、うらやましく思ってしまうかも。その際、もしも、その妬み心が、「けしからん!」といったネガティブな方向に向かいやすい人は、その心的反応は、ご自身の心の健康を損ないやすいということには、どうかご留意ください。

中嶋 泰憲