■ヨソのお宅で一大事
先日、子どもを連れてお伺いしたお宅で、娘が催しトイレをお借りしました。5歳になり自分で最初から最後まで始末できると言うため、親はその間も楽しく歓談していたのですが……。

「おかぁさ〜ん……。」とトイレから情けない声が。

スワ、何か粗相しちゃった!?と焦ってトイレを覗くと、水を流しながら娘が便器を覗き込んで言うのです。

「ぜんぶ、流れない……。」

「そういうときはブラシをお借りすればいいよ!」。思ったより大事でなかったのでホッとしながら便器の後ろ側を覗きます。ふつう、便器の脇や後ろ側にトイレブラシって置いてありますよね。でも、「ブラシ、無かったの……。」

この時点でぴんときました。このお宅の奥さんはきれい好き。で、逆にトイレブラシを常駐させていないのです。「ちょっと待ってて!」と娘をトイレに残し、事情を話しにリビングに戻りました。

奥さんは恐縮しながら(案の定!)今人気の「流せるタイプ」の使い捨てトイレブラシを出してくれたので事なきを得たのですが、これが娘でなくて私自身だった場合、「あの、流れなくて……。」と言いに行けたかどうか。考え込んでしまいました。

■ウチのトイレで一大事!?
そしてこれは逆の事案。娘がもう少し小さい頃、我が家に男の子のお友達とそのママが遊びに来たことがあります。

男の子はオムツが外れたばかりで、オシッコがまだじょうずにできない時期でした。「ママ、オシッコ。」と言ってトイレに向かったとき、結構ギリギリのタイミングだったのでしょう。男の子はオシッコを少々、便器の周辺に飛び散らせてしまった様子でした。

当時、我が家のトイレにはマットが敷かれておらず、飛び散ったオシッコはマットに吸い取られること無く、トイレの床に一目瞭然。

親子でトイレに行ったきりしばらく戻ってこないので心配して見に行くと、必死にトイレ床をトイレットペーパーで拭き掃除しているママと、申し訳なさそうな顔で私を見上げる男の子が。

正直「悪いことしたなぁ……。」と私は後悔したのです。だって、マットさえ敷いてあれば、こんな気遣いは無用だったのですから。

■マットやブラシは誰のため?
「掃除するヒト」の意見は大事。でも使うヒトが気持ちよく使えるトイレ、という視点でも見てみて欲しいのです。ここ数年割合定期的に(?)メディアに出てくる話題に「男性の座りション派○○%! ビックリ!」というものがあります。

情報ソースはサニタリーメーカーの調査から街頭インタビュー等までいろいろですが、総括するとどうも20〜30代では半数近くの男性が日常的に大小ともに「座って」用を足しているようです。

掃除をする身にとってはありがたい話ですね。何せ男性の排尿時の飛び散りは半端ではないので。「座りション派」には、自分自身が自分の排尿している自宅のトイレを掃除するようになって、汚れっぷりに嫌気が差し、座るようになったという声が多いのも印象的です。

かくトイレ内の事象には、排尿排便という使用者としての当事者視線と、主に掃除という管理者としての当事者視線が入り混じって語られるのが通常です。

そして場所が場所(住まいの中でもとりわけ汚れやすく、汚れが気になりやすい)であるゆえに、家庭のそれにおいては最近「管理者側」の声がよく通るようになりました。本当は家庭外、公共性の高いトイレにおいてもそういう声が当たり前に浸透すべきだとは思うのですが、公衆トイレではなかなか「管理者としての当事者意識」などは抱きづらいようですね。

駅トイレなどの使い方の荒さからくる汚れに対して、不愉快に思っているその当人がまず「汚さない」意識を持たない限り、いつまでも汚いトイレ使用に甘んじなければならない負の連鎖はどこかで断ち切らないといけないです。話がずれました。元に戻しましょう。

かく、家庭内トイレにおいて重さを増す「トイレ管理者としての当事者視線」に基づいたトイレの設えは確かに家事を合理化し、住まい全体からみても衛生状態を良化するのに貢献しているとは思うのです。

しかし、そういった管理の徹底はときに、純粋な「使用者側」の人権を侵してしまう可能性があるということに、少しだけ意識を向けて欲しいと思うのです。人権とか言うとおおげさに聞こえますが、やっぱりいい大人が申告しづらいと思うのですよ。「私のウンチが流れませんのでブラシを貸して下さい」なんて。

皆さん、そんな事態に陥ったらいったいどうしますか? トイレットペーパーを手にとって、便器の中に手を入れてウンチをこそげ落とせるでしょうか。素手で。もともと素手でのトイレ掃除に慣れていれば別ですが、そうできることではないと思いますが、いかがでしょうか。

紆余曲折あり、現在我が家のトイレには、週に数回と、こまめに洗濯できる小ぶりの「綿マット」が足元に、ふつうの「トイレブラシ」も常備し、通常のトイレ掃除は私が(趣味的に)素手で行っています。トイレブラシは主に家人や来客が使っているようですが、使用頻度はさほど高くないようです。たまに便器の水たまりに突っ込んだ状態で漂白したりして衛生を保っています。

藤原 千秋