■見逃されやすいうつ病の症状




うつ病は誰でも罹る可能性がある、ごくありふれた病気という意味で「心の風邪」と呼ばれています。

しかし、うつが重症になればなるほど、元気を取り戻すまでに余計な時間や費用がかかってしまいます。うつはこじらせてしまう前に精神科を受診してケアを受けるのがベストです。



しかし現実には、うつ病の過半数の方は精神科を受診していません。その理由としては、精神科は敷居が高く感じてしまうことに加え、うつの始まりは日常のありふれた症状の場合が多く、うつ病と気づきにくいことが挙げられます。



うつの初期段階では、気分の落ち込みがあまりはっきりせず、頭痛、肩凝り、胃痛といった体の症状が現れることがあります。うつ病が背後に隠れているという意味で「仮面うつ病」と呼ばれる状態です。仮面うつ病について解説しましょう。



■仮面うつ病の症例




ある女性(30)を例に解説します。



昨年結婚後して2人の生活が始まったが、親戚付き合いが増え、自分の意見を譲らなくてはならない場面が多くなり、ストレスを感じていた。

最近になって、頭痛、肩凝り、胃部不快感が出現し、突然、動悸を覚えることがある。次第に、それらの症状は増悪し、「夜、眠れない」「記憶力が落ちた」「仕事に集中できない」ようになった。



病院で検査したものの異常は見つからず、「問題ない」と言われた。他の病院も幾つか受診したものの、結果はみな「問題なし」であった。最終的に心因性ではないかということで、精神科を受診し、うつ病と診断された。



この例でも気分の落ち込みはあまりはっきりせず、頭痛、肩凝り、胃部不快感といった身体症状が主体となっています。うつ病的な症状としては「仕事に集中できない」「記憶力の低下」ぐらいでしょうか。



治療としては一般のうつ病と同様に抗うつ薬で症状はよくなります。「病は気から」という格言通り、体の不調の原因は心という場合もありますので仮面うつ病にはご注意ください。

中嶋 泰憲(医師)