■実の子どもでも、親のお金は勝手に引き出せない
みなさんは「実の子どもであれば、必要なときに親の預貯金をおろすことができる」「親の介護が始まったら、親の預貯金でなんとかしよう」と考えていないでしょうか?

最初に気をつけておきたいのが、そもそも預貯金は個人のものだということです。親子や夫婦であっても、本人の意志に関係なくお金を引き出すことはできません。

ATMを使う場合は基本的に本人確認のステップがないため、あらかじめ親からキャッシュカードを預かり、暗証番号を聞いておきさえすれば、代わりにお金を引き出すことは可能です。

でも、親が認知症や大きな病気などでうまくコミュニケーションが取れなくなってしまい、暗証番号を聞き出せなくなってしまうと事情が変わります。現在の金融機関では本人確認のルールが厳格化されており、子どもが通帳と印鑑を窓口に持参するだけでお金を引き出すことはできません。

一緒に親を連れて行くことができたとしても、その言動などから「適切な判断力がない」と金融機関の人に判断されてしまうと、子どもはもちろん親本人でもお金を引き出すことはできなくなってしまいます。

ここで「うちの親は認知症なので、私が代わりにお金を引き出したいんです」と伝えると、口座が凍結されてしまうため、その後は家族の誰かが治療や介護にかかわる費用を立て替えるしかなくなります。

■成年後見制度とは……メリット・デメリット
こうした場合、金融機関からは「成年後見制度」の手続きを進められることが多いです。

成年後見制度とは認知症などで判断能力が衰えてしまった人の代わりに、周囲の人間が後見人となり、その人の財産を不当な契約などから守ることができる制度。悪質な業者などの詐欺に遭うリスクをグッと抑えることが可能です。

一方で、成年後見人には次のような問題点があります。

・手続きに3カ月から半年、場合によっては1年ぐらいの時間がかかってしまう

・親が認知症になってから手続きする場合に使う法定後見制度では、子どもではなく弁護士や司法書士などが後見人として選ばれることが多く、子どもが「親の介護にかかる費用です」と言っても、後見人が認めない場合は親の預貯金などを使えない

・年に1回、裁判所に報告に行く必要がある

今すぐお金を払わなければいけない場合、成年後見制度では小回りがきかず、経済的に家族の負担は大きくなってしまいます。

■成年後見制度よりずっと手柄な「代理人カード」のメリット
こうした問題に備えるための方法があります。親がしっかりと判断できるうちに説得し、金融機関で「代理人カード」を作って、万が一の場合に備えてもらうことです。

代理人カードはどのタイミングでもごく簡単な手続きで作ることができますし、仮に親が将来認知症などになってしまったとしても、親本人と同じように、手元のカードで必要なお金を引き出せるようになります。

代理人カードの枚数制限や申請方法などは、各金融機関によっても異なりますので、利用している金融機関に確認し、ぜひ早めに備えておきましょう。

横井 孝治(介護ガイド)