■年上妻からのマインドコントロール
先日、内閣府の女性に対する暴力についての専門調査会がまとめた、DV=ドメスティック・バイオレンスの新たな対策についての提言が発表されました。

注目されたのは、裁判所が加害者に対し被害者に近寄らないよう命じる「保護命令」申し立ての範囲が“身体的な暴力”だけとなっている現状について、“精神的な暴力”や“性的な暴力”なども含むよう、保護命令の範囲を拡大すべきと指摘している点です。

“精神的なDV”や“性的なDV”は見た目でわかるけがや傷などがないため見過ごされがちですが、実は身体的な暴力よりも深刻である場合もあります。

■コロナ禍のプレッシャーで妻のDVスイッチが入り…
耕太さん(仮名・34歳)が打ち明けてくれたのは、9歳年上の妻から精神的に痛めつけられていることです。もともと2人の姉を持つ末っ子の耕太さんは、女系家族でのんびり育ったおとなしい性格。

年上の人からあれこれ言われても、反発せずにニコニコと受け入れるタイプで、職場でも年上の女性たちに圧倒的に人気があったそうです。やや小柄で童顔なところも、まさにお姉さまたちのアイドルという感じです。

耕太さんの妻も取引先で出会った年上女性。彼女からの熱烈なアプローチに押されて結婚したのが2年前。当時から二人の関係において主導権は妻が握っていましたが、半年ぐらい前からその関係がだんだんゆがんだものになってきました。

きっかけは、妻が職場で管理職に昇進したこと。もともと売り上げノルマの厳しい職場でしたが、コロナ禍もあり業績は急降下。営業チームを束ねる彼女にとってはプレッシャーとストレスがまともに降りかかる過酷な日々となったのです。それに対して耕太さんのほうは、IT業界でコロナの影響も少なく、むしろ在宅勤務ができて楽になったという日々。

「妻にとって、在宅勤務でずっと家にいる僕は、のんきに何の仕事もしていないように見えたのかもしれません。まずは、以前は折半していた家事を、家にいる僕が全部やるように担当を変更しました。在宅勤務といっても、昼間はずっとパソコンの前にいてそれほど自由な時間はないのですが、昼休みに掃除機をかけるなど、僕なりに工夫をして家事をこなしていました。でも、彼女にとっては、僕の家事が満足のいくレベルではないみたいで、一つ一つに対して毎日ダメ出しがあります」

洗濯の手順、買い物をする店やタイミング、掃除機のかけ方など、彼女の指示は詳細に及び、その通りにできていないと耕太さんにとがった声で嫌味を言います。

「先日、米を研いだときのことです。彼女からは『ボールとザルを使ってやるように』と指示されているのですが、急いで内釜で研いでいるのをタイミング悪く見つかってしまったんです。それを見た瞬間、いきなり彼女の形相が変わって『このクソ野郎! 指示した通りにできないなんて最低! 会社なら左遷よ。あんたはゴミ同然』と怒鳴られました。そしてそのあとはリビングに正座。なぜ指示通りに米を研がなかったのか、その理由を説明した後、どんなところが僕のダメな点なのかを自己開示させられ、延々と彼女の罵声を浴びました。こんな些細なことでなぜこんなに罵倒されるのか、と疑問が湧いてこないわけではないです。でも、僕が彼女の指示通りにやらなかったので、自分が悪いのだと思っています。次からは彼女を怒らせないようにしなきゃ、と思ってしまうんです。辛い毎日です」

妻への反発どころか、すっかり自分が悪いと思いこみ、マインドコントロール状態に陥ってしまっている耕太さん。在宅勤務で外に出かけることが減り、仲間と息抜きができなくなり、余計に逃げ場のない状態になっていると考えられます。

■男性もDVの対象になり得る
耕太さんの場合、今はまだ言葉の暴力ですが、妻が酔ってワインの瓶で殴りかかってきた、義母と一緒になって蹴られた……などという話も耳にします。何年か前の事例では玄関のたたきで正座させられて妻に背中を踏まれ、怪我をしたという事例など、言葉から徐々に暴力へとシフトしてゆく、想像を超える話をいくつも聞きました。

コロナ禍で以前よりも在宅率が高い環境下では、誰にも気づかれないまま、家の中の閉鎖空間で繰り返される精神的なDV。コロナ禍の中、普段より精神的なストレスを抱える人が増え、それが弱者への言葉の暴力に向かっている場面が増えているのではないでしょうか。

DVの被害者は女性だろう、と思い込みがちな我々の意識も変えていく必要があるでしょう。

三松 真由美(夫婦関係ガイド)