■住宅ローンの金利は上がっても、不動産投資ローン金利は上がらない?
昨年(2016年)の秋頃から「ローン金利が上昇」というニュースがたびたび流れています。

確かに、2016年に市場金利がマイナス金利となり、夏頃に長期金利(10年国債利回り)が最低水準を付けたあと、長期金利はじわじわと上昇を続けています(図1参照)。

住宅ローン金利も、こうした動きを反映して少し上がっているようです。たとえばA銀行の10年固定の適用金利は、今年(2017年)3月が0.55%、4月が1.05%と、0.5%引き上げられています。変動型や3〜5年の短期固定の適用金利は1%以下が続いているものの、やや金利が上がった印象は否めません。

不動産投資向けのローンはどうでしょうか。借り手の属性や物件ごとにオーダーメイドで組み立てられる不動産投資ローンは、適用金利の全体の動きが見えにくいものです。

最近の取引案件の融資実績を見ていると、適用金利はほとんど変わっていないようです。金融機関によって、せいぜい優遇幅が0.1〜0.2%縮小した程度でしょう。

もちろん、中長期的には市場金利の動きは影響してくるでしょう。

しかし、経済情勢の大きな変化がなければ、当面は従来と同じように、オーダーメイドの傾向が続くのではないでしょうか。つまり、借り手の職業や収入、資産背景や投資目的などの属性と、対象物件のエリアや評価によって、金利が決められるということです。

次に、金融機関ごとの現在の金利水準や傾向を紹介しましょう。金融機関の種類によって対象とする顧客層や物件についてある程度の棲み分けが進み、金利水準もそれぞれに対応している状況です。

現在、メガバンクは、主に富裕層を対象に1%以下の超低金利で融資しています。ただし、頭金が最低1〜3割は必要です。頭金ゼロのフルローンは基本的に扱っていません。また、物件単体で収支に問題がないかどうかを重視しています。

一方、首都圏を中心に展開する有力な地方銀行も、富裕層向けに1%前後というメガバンクに次ぐ低金利での融資を行っています。親族などに資産がある場合や、共同担保の設定ができる場合は、フルローンを実施するケースもあるようで、この点がメガバンクとの大きな違いといってよいでしょう。

これらは、低金利は魅力ですが、サラリーマン投資家が新規の融資を組むのは難しいことがほとんどです。

一部の都市銀行や中堅の地方銀行、信用金庫などでは金利は2〜4%台とやや高めですが、サラリーマン投資家にも積極的に融資をしています。

たとえば、B銀行は、大都市圏では2%を中心に±0.3%の融資が基本です。地方や郊外の物件を購入する場合には、金利は3.0〜3.5%となります。

■金融庁・日銀の規制強化の影響は?
金利動向と同様に気になるのが、金融機関の融資姿勢でしょう。昨年(2016年)12月頃から「不動産投資ローンの急増に対して金融庁・日銀が監視を強化」といった報道が出ていましたが、2017年3月26日には、日本経済新聞一面に「アパート融資、異形の膨張 16年3.7兆円 新税制で過熱」というインパクトの強い見出しで記事が掲載されました。

この記事では、金融機関の不動産向け新規貸出額が、2016年にバブル期を上回って過去最高を記録したこと、中でも個人の貸家業(賃貸住宅オーナー)向けは3.7兆円に達し、前年比21%増と膨張していることが指摘されています。

さらに、アパート建設ラッシュで空室だらけに陥っている地方都市の存在や、金融庁が「融資残高を伸ばしている12の地方銀行を抽出し、詳細な契約内容の提出を求めた」とあります。

日本銀行の『金融システムレポート』(2017年4月)にも、「九州などで一部の銀行が、経済の実勢に比べ貸出を大幅に増やしている。地域によっては、賃貸住宅の空室率が高まっており、これまで以上に入口審査や中間管理の綿密な実施が重要」という分析が出ています。

こうした動きを受けて、今後は金融機関への当局のチェックが厳しくなり、不動産向け融資が抑制されるのではないかと心配する声も出ています。

結論からいえば、私が銀行や信用金庫の融資担当者にヒアリングした限りでは、金融当局からの指導は特に入っていないようです。収益物件の中古ストック流通については、アパート建築ほどの過熱感が出ていないためかもしれません。

ただし、当局からの指導とは別に、金融機関自身が地方圏の状況を警戒し、以前より厳しい見方をしているという印象はあります。大都市圏や地方中核都市の中心部以外では、空室率が上がっているにもかかわらず、物件価格が上昇して想定利回りが低下しているからです。

空室率をこれまでよりも高めに設定して試算すると、収支が合わなくなってしまうケースも少なくありません。その結果、金融機関の与信審査が通らずに融資が見送られる場合もあるのです。

数年前に地方圏への融資を再開していたメガバンクもありましたが、最近は消極的になっています。これは当局の指導による引き締めではなく、金融機関ごとの経営判断といえるでしょう。

■借り換えなら、サラリーマン投資家でもメガバンクから融資を受けられる
ローンの借り換えも、以前と変わらず活発です。むしろ新規融資よりも各金融機関が力を入れているともいえます。

メガバンクや有力な地方銀行は富裕層を主要なターゲットとしているため、サラリーマン投資家に対しての新規融資は厳しいのが現状です。しかし、借り換えについては、サラリーマン投資家からの依頼にメガバンクや有力地銀も応じてくれるケースがあるのです。

これには二つの理由が考えられます。

一つは、借り換えの申し込みをする賃貸オーナーは既に何年かの返済実績を作っていることです。これが信用の強化につながります。もちろん、収支に問題がなく、キャッシュフローが黒字になっていることが前提です。

二つ目は、3〜5年くらい返済すれば、元金がある程度まで減っていることです。当初の新規購入時にはフルローンで組んでいたとしても、借り換えるときに必要な借入額は物件価格の7〜8割に減っているわけです。つまり、メガバンクがもとめる頭金1〜3割相当という条件をクリアしているともいえます。

最近、3件の収益物件を持つサラリーマン投資家が、全ての物件のローンを借り換えた例がありました。

最初に買ったときは、3〜4%の高金利で融資を組んでいましたが、すべての融資をあるメガバンクに一本化し、1%台の借り換えに成功したのです。金利負担が2%前後も軽くなり、キャッシュフローが劇的に改善しました。

なお、借り換え時には、各種手数料に加えて、元の融資先に対する短期一括返済のペナルティがかかることがあります。こられの諸費用を含めてメリットがあるかどうかを検討しましょう。

また、物件の条件によっては、借り換えができない場合もあります。

たとえば、築10年の木造アパートを購入して5年後に借り換えをしようとすると、残った耐用年数は7年しかありません。返済期間を残存耐用年数以内にする金融機関が多いため、融資を受けるのが難しくなるわけです。

なかには耐用年数を超えた長期の融資をしている金融機関もありますので、個別に検討してみる必要があるでしょう。

■一棟物件のデフォルト・リスクは低い!?
以上のように、首都圏の金利水準や金融機関の融資姿勢は、新規・借り換えともに、まったく悪化していません。不動産向け融資が抑制されるかのようなマスメディアの報道とは、ズレがあるようです。

地主が賃貸住宅を新築する場合のアパートローンと、既存の収益物件を購入する時の不動産投資ローンを区別せず、十羽ひとからげに論じられていることが、混乱する原因の一つともいえます。

表面利回りの高さに惹かれて地方物件を検討している場合には、融資環境が厳しくなっていると感じるかもしれません。

しかし、それはあくまでも、そのエリアの空室率が高まって収支に赤信号がともっている物件だから、融資承認が下りにくいと考えたほうが妥当でしょう。賃貸ニーズのあるエリアで収支に問題のない物件をきちんと選べば、借り入れが難しいということはないはずです。

過剰融資によって、返済不能になる「デフォルト」が増えるという報道もあり、一部では、そのような例もあると聞いています。しかし、全体的な傾向ではないと考えてよいのではないでしょうか。

ある地方銀行の定期的な調査では、不良債権になっている事例は、マイホームとワンルームマンションなどの区分物件が中心で、投資用の一棟物件はほとんど含まれていないことが判明しています。不良債権というのは返済の滞っているデフォルト・リスクのある案件です。

日銀『金融システムレポート』でも「不動産市場は全体として過熱の状況にはない(中略)不動産市場に負のショックが発生しても、金融システム全体に与える影響は限定的」と指摘しています。

マスメディアの報道は、情報源やリスクの可能性として活用はするべきですが、そのために不動産投資を必要以上に恐れるのはナンセンスでしょう。

現在、物件価格のほうは右肩上がりから横ばいに移っていますから、焦らずに購入判断ができる状況といえます。こういう時期こそ、基本に立ち返って、エリアと物件を吟味して、良い物件に出会えるチャンスを逃さないようにしてください。

宮澤 大樹