■離婚するにもお金がかかる!
「好きになった相手が既婚だっただけ」や「不倫は文化だ」などと、浮気を容認する意見もありますが、ちょっと待ってください!

浮気をそんなに簡単に考えてはいけません。不倫が原因で離婚となると、精神的なダメージはもちろん、お金も色々と必要になってきますよ。 そこで、今回は「離婚の時に必要になるお金」をご紹介しましょう。

離婚といっても色々なケースがあるため、「慰謝料はいくら!」などとご紹介することはできません。そこで、離婚カウンセリングで活躍中の「離婚110番」主宰、澁川良幸さんに、慰謝料についてお話を伺いました。

澁川良幸さんは、離婚および家庭問題のカウンセリングやコンサルティングをしています。相談者を第一に考えるコンサルティングは好評とのこと。離婚について年間3600件ほど、累計では約3万5000件の相談を受けています。最近では弁護士事務所さんからの社内研修の講師のご依頼も増えているとのことです。

■慰謝料は不法行為への賠償だが、請求がなければ払う必要ナシ

ガイド:浮気をしてしまい、離婚するはめになった場合、慰謝料は必ず払わなくてはいけないのでしょうか?

澁川さん:これは意外に難しい質問ですね。離婚を考える上でとても重要な要素でもあります。

というのも、まず、慰謝料という概念を正しく理解していない人が多いのですが、慰謝料というのは、どちらかの不法行為がなければ、発生しないものです。 精神的苦痛に対する損害賠償ということですね。 そして、当たり前のようですが、請求されなければ払う必要もないのです。

つまり、どんなに浮気をしても、パートナーに請求されなければ、慰謝料を払う必要がありません。「こんな浮気男からお金なんてもらいたくない!」と請求をしないという妻もいれば、「支払い能力のない妻に請求しても仕方ない」と、最初から慰謝料をあきらめている夫もいます。

■物的証拠がないから慰謝料を請求できない…わけでもない
また、浮気をしてしまい慰謝料を請求されても、証拠がないから払わないという人もいれば、早々と観念して支払う人もいます。 協議離婚の場合なら、証拠があろうとなかろうと、2人で払うと決めたら払うことになりますし、浮気をしているのは確かであっても、証拠が集められないからと請求をしないケースもあります。 厳密にいうと、証拠が必要なのは裁判になってからですからね。

ただ、ここ数年、物的証拠が乏しくても、状況証拠がそろっている場合、裁判官が不貞行為を推認できるという点で不貞が認められることもあります。証拠がなくてもいいということではありませんが、大きな証拠がなくても不貞行為が認められる場合もでてきています。

ここ1〜2年のトレンドとしては、夫が妻を浮気(不貞行為)で訴えようとすると、妻が夫をDVで訴えるという事例がとても多くなっています。浮気にしても暴力にしても、証拠があればあるほど有利ではありますが、証拠が揃っていなくても調停や裁判で相手をうまく追い詰めることで有利な結果になることもあります。

証拠がまったくないと厳しいかもしれませんが、証拠が乏しくても諦めずに請求をしていけば、慰謝料だけでなく、養育費や財産分与といったトータル的な金銭面で有利になることは十分考えられます。

■慰謝料は100万〜500万円、平均200万〜300万円程度
ガイド:では、浮気が原因で離婚をする場合、慰謝料はいくらくらいなのでしょうか?

澁川さん:だいたい、100万円から500万円くらいですが、相場的には年々少しずつ下がって来ています。ここ数年の平均的な金額では200〜300万円前後になっています。 最近では、浮気相手への損害賠償請求も一般的になっており、そちらの相場が100万〜150万円程度なので、配偶者への慰謝料と合わせると300〜400万円くらいといったところですね。

ガイド:「浮気相手への損害賠償請求」とはどういうことですか?

澁川さん:第三者への慰謝料請求ともいわれています。要は不倫相手に対して、その不倫が原因で婚姻関係が破綻し、精神的にも苦痛を味わったことへの損害賠償として慰謝料を請求することができるのです。 ですので、慰謝料を請求される側としては、不倫相手の配偶者からも請求される恐れがあるということですね。

また、この浮気相手への慰謝料請求をする人が増えてきました。妻が被害者であった場合、相手の女性に対して請求をかけるのは当たり前という風潮になっています。

■慰謝料の決め手は婚姻期間
ガイド:慰謝料が決まる要因は何ですか?

澁川さん:一番は、「婚姻期間」と「内容」ですね。婚姻期間が長くて、かつ、悪質だと高額です。 また「収入」も影響します。例えば、支払い者の年収が1000万円と300万円だった場合を比べると、請求された慰謝料が500万円のケースでは、年収が多いと請求額も通りやすいです。年収が低いと慰謝料額も少なくなる傾向にあるようです。近年の経済格差が影響していると思われます。

例えば、婚姻期間が30年くらいで、浮気の証拠がたくさんある。なのに、あくまでシラを切りとおし、妻に苦痛を与え続けたというケース。夫の収入がそれなりにある場合だと、慰謝料額は500万〜700万円くらいですね。

それに、ドメスティックバイオレンス(家庭内暴力)も加わっていれば、さらに100万〜200万円くらい上乗せされることもあるでしょう。

ガイド:婚姻期間が短いと慰謝料も安くなるのでしょうか?

澁川さん:婚姻期間が10年くらいで、200万〜300万円ほど、 婚姻期間が3年程度であれば100万〜200万円くらいでしょうか。

いくら悪質でないとはいっても、やっぱり浮気は浮気ですからね。 ちなみに、慰謝料だけで1000万円を超える例は、一般人の場合はほとんどありません。 ただし、財産分与を入れて数千万円から数億円というケースはあります。

■裁判になると証拠が重要
ガイド:慰謝料の相談で特に印象に残っている事例はありますか?

澁川さん:妻が、夫の浮気現場に乗り込んだのにも関わらず、裁判では不貞行為はなかったと言い切られたケースですね。結局、精神的慰謝料しか認められず、たしか、慰謝料は80万円くらいだったと思います。

ガイド:やはり、裁判になると証拠が大切だということですね。

澁川さん:他には、妻が夫のDVを訴えて離婚しようとしたのですが、夫側は妻の不貞を理由に離婚を拒否し、裁判では離婚が成立しなかったという事例があります。証拠は妻が男性と2人きりで車に乗っているだけの写真数点でした。妻は、子どもの同級生の保護者である男性(つまり同級生の父親)に学校行事のあとに車で3回ほど送ってもらっただけという主張でした。このような非常に薄い証拠でも裁判官が採用することもあります。つまり、裁判においては証拠も重要ですが、裁判官の印象も重要ということです。

■経費をかけても慰謝料は取れないケースも
ガイド:慰謝料を請求する側から見た時、何か気をつける点などはありますか?

澁川さん:よくあることですが、探偵社に200万円も300万円も払い、その分をのせて慰謝料を500万円や600万円などと請求するケースです。結局は、慰謝料が100万円前後となり、赤字になったというケースがありますね。 やみくもに経費をかけても、慰謝料は取れないんですよ。

結婚2年目程度で離婚裁判をし、弁護士の費用が慰謝料の何倍にもなってしまった、なんて笑えない話はたくさんあります。

協議離婚、調停離婚、裁判離婚のそれぞれでも請求額を変えたほうが良いケースもあります。協議では相手方や相手方の親の顔色を見て、調停では調停委員の顔色を見て、裁判では裁判官の顔色を見て、それぞれ請求額をよくよく検討する必要がありますね。

■弁護士とのトラブルにも注意
また、最近では離婚弁護士とのトラブルが増えています。昔と違って今では、離婚を弁護士に依頼する割合は高くなっているのですが、それにつれて、弁護士トラブルの相談も急増しています。弁護士との問題は離婚のお金の問題に直結しています。

複雑さを増す離婚案件に対応できず、依頼人と弁護士のトラブルが頻発し、最近では弁護士を3人も4人も変えているという人も珍しくなくなっています。

弁護士に依頼しても、事案が進まない、話さえ聞いてくれないなどのトラブルが続き、次々と弁護士を替えていくわけです。そうすると、何度も着手金を払うことになりますし、時間も無駄になり、結局不利な展開になります。最初に良い弁護士を選ばないと、離婚問題が解決する前に資金がなくなってしまうことになりかねないのです。進め方がまずいと、取れるはずの慰謝料も取れませんからね。

最近では男女ともにモラハラ(モラルハラスメント)事案がとても多く、それに伴い、離婚弁護士トラブルも一層増えています。モラハラ当事者が相手の場合、相手方の性格には複数のパターンがあるのですが、弁護士をあいだに入れた場合、相手方の出方は大きく2つのパターンに分かれます。一つは弁護士を入れた途端に大人しくなるパターン。もう一つは、弁護士に思いっきり噛みついてくるパターンです。そのほかにも複数のパターンがあるのですが、特に後者の場合、依頼人を守るはずの弁護士が被害者になってしまい、相手方との交渉を途中で投げ出してしまったというトラブルが続出しています。モラハラ事案の場合、充分な成功事例を持った離婚弁護士に依頼しなければいけませんね。慰謝料を取る以前の問題になってしまいます。

ガイド:最後に、自分が浮気をしてしまい離婚を考えている人に一言をお願いします。

澁川さん:いろいろな経緯はあるのだと思いますが、過去を振り返るだけでは建設的な未来は築けないでしょう。「今」をありのままに受け入れ、自分と周りの関係者のことを大切に考えましょう。 決して、自暴自棄になってはいけません。必ず、道は開けます。

最近ではバツイチ、バツ2も珍しくなくなっています。前向きな再出発はけっこうなことですが、同じ過ちをなんども繰り返さないように気を付けましょう!

ガイド:不謹慎とは思いますが、自分の浮気が原因で離婚を考えている人にとって、慰謝料は少しでも少ないほうがいいと思います。慰謝料が高額にならないために気を付けることはありますか?

澁川さん:早く解決しようとするあまり、相手の言い値で慰謝料を決定してしまったり、あせって公正証書を作成したり、開示しなくてよい証拠や材料を提供して慰謝料額を高くしてしまうことがあります。あわてて余計なことを言ったり提出したりしないことですね。

責めないから何があったか全て書きなさいと言われ、書いて提出したら、それを証拠に取られて、法外な慰謝料を請求されたという事例はたくさんあります。そんな馬鹿なと思うかもしれませんが、そのときになると混乱してしまって、そういうことはよくあります。

また、相手方や相手方弁護士が言うことを鵜呑みにして法外な要求に応えようと自分をボロボロにしてしまう人が多いのも最近の傾向です。相手方のみならず相手方弁護士も自分たちに有利なことしか言わないのですから、過度な要求に振り回されず、自分や自分の家族のためになる着地点を冷静に考えていただきたいですね。

ガイド:逆に、相手に浮気をされて離婚を考えている人にも一言をお願いします。

澁川さん:「浮気をされたのは自分のせい?」「 自分が悪かったから?」 そんなふうに自分を責める必要はまったくありません。 いいんですよ。相手を責めて、攻めて、なじっても……。 周囲がなんと言おうとも、戦ってもよいのです。戦わなくてもよいのです。

浮気されて離婚しないなんておかしい、もっと慰謝料を取ればよいのに、などと言われたり、逆に、お金に執着し過ぎなんじゃないの? とか、相手からはお金なんて取れないよ、などと言われることもあると思います。でも、自分の人生です。あなた自身が納得できることを堂々としてもよいと思いますよ。

あなたが、自分と大切な人のために選択した道なら、どの道を選んだとしても、それは正解なのですよ。 今は、泣いても怒ってもかまいません。 いつか笑える日のために、がんばりましょう!

■慰謝料は請求があって払うもの
慰謝料とは「精神的苦痛に対する損害賠償」とのこと。つまり、被った精神的苦痛に対する慰謝・損害の賠償という意味合いなのです。なので、慰謝料は離婚の原因をつくったほうが支払うものです。

では、どのような時に慰謝料を払う必要があるのでしょうか?

●不法行為があった
不倫、暴力などの不法行為に対しての賠償としての慰謝料です。性格の不一致や義母との折り合いがうまくいかないなどの理由では、基本的には慰謝料の請求はありません。

●パートナーから請求があった
慰謝料は、請求されなければ払う必要もありません。つまり、不倫などの不法行為をした人が、パートナーから請求をされて慰謝料を払うということです。

■財産分与や養育費が発生することも
慰謝料と同じように、離婚時に金銭のやりとりがあるのが「財産分与」。慰謝料と混同しがちですが、慰謝料と財産分与とは別のものです。損害賠償の慰謝料に対して、財産分与は夫婦共有の財産を清算するもの。ですから、財産分与は、不法行為などがなくても実施できます。

また、子どもがいる場合は「養育費」も必要になってきます。両親が離婚をし、子どもと一緒に住まなくなっても、養育の義務があるということ。子どもが高校または大学卒業まで支払うことになります。

離婚には、財産分与や養育費の支払いが必要だということです。また、離婚の原因が不倫などの不法行為であれば、慰謝料も必要になるということですね。

いかがでしたか? 離婚となるとお金の面だけでも大変ですね。もちろん、精神的なダメージは計り知ることができません。浮気なんて……と軽い気持ちで考えていてはいけませんよ!

福一 由紀