■「ビットコインキャッシュ」という新たな仮想通貨
2017年8月2日未明(日本時間)に、仮想通貨ビットコインから派生して「ビットコインキャッシュ」という新たな仮想通貨が誕生しました。

ビットコインキャッシュとはどういうものか、ビットコインと違う点はなにかを簡単にご説明します。

■分岐前ビットコインを持っていた人に自動的に付与された
分岐前の時点でビットコインを所有していた人は、分岐後は自動的に同数のビットコインキャッシュも同時に持つこととなりました。もしも8月1日に3ビットコイン持っていた人の場合、分岐後は3ビットコインと共に3ビットコインキャッシュを持つことになります。

ただしビットコインキャッシュは誕生したばかりの仮想通貨であるため、厳密には「分岐前に、ビットコインキャッシュに対応すると表明したウォレットや取引所にビットコインを置いていた人」がビットコインキャッシュも自動的に持てることとなりました。

8月9日時点では、国内ではフィスコ仮想通貨取引所をはじめほとんどの仮想通貨取引所が8月1日前にビットコインを保持していた顧客に対して同数のビットコインキャッシュを付与することを表明しています。

派生する前まではひとつのコインだったために、こうした特別の事例が起こりましたが、この後はビットコインキャッシュとビットコインは通貨発行のタイミングや供給量、また対日本円や対ドルなどの価格も各々違う別個のコインとして動いています。

8月1日以前にビットコインを持っていなかったという人も、今はビットコインキャッシュを取り扱う取引所などでビットコインと同様に取引ができるようになりました。

■成り立ちの理由と、ビットコインとの相違点はなにか
ビットコインキャッシュはビットコインから派生したとあって基本的にはほぼ同質の仮想通貨ですが、ビットコインと異なる点は取引処理能力です。「ブロックサイズ」と呼ばれる取引データ処理の容量を、最大ビットコインの8倍にまで引き上げており、これが今回ビットコインから分岐した理由でもあります。ユーザーにとっては、ビットコインキャッシュはビットコインよりも安い手数料で送金を行うことが可能であるというメリットがあります。

ビットコイン取引のデータ処理容量の上限値は、約10分間に1MBまでと定められています。ただし、価格上昇と取引量急増によりビットコインは取引処理能力の上限値に急接近し、取引がなかなか完了しない、送金手数料が高くなるなどの問題が生まれていました。これをどう解決するかで複数の案が対立したことが、今回ビットコインキャッシュがビットコインから分離した一因となっています。

ビットコインはブロックサイズを引き上げずに「セグウィット(Segregated witness)」と呼ばれる施策を適用することで対応しようとしています。セグウィットは2017年8月下旬には適用される見込みです。ビットコインキャッシュはこれに同意せず、あくまでデータ容量の上限値を引き上げるという方法を実現するためにビットコインと袂をわかったことになります。

■誕生から1週間、いまの懸念点とは
ビットコインキャッシュに対していま懸念されていることは、ネットワークが安定できるか、また今後も仮想通貨として存続できるかといった点です。

ビットコインの発行にはマイニング(採掘)と呼ばれる取引承認作業が必要で、承認作業をしたものには報酬としてビットコインが支給されるため、マイナー(採掘者)と呼ばれる個人や営利目的の企業が多大な電力を消費してコンピューターに計算作業をさせています。セグウィットはこのマイナー達の得る利益に直接的に結びつかず、マイナー側から自己の利益を損なわない提案として産まれたものがビットコインキャッシュだという見方もあります。

8月9日時点でビットコインには多数のマイナーが存在しますが、ビットコインキャッシュのマイニングを行うのは、ビットコインキャッシュ分岐の立役者となったviaBTCというマイニング企業一社のみです。ネットワークの安定性などの面から、この状態を懸念する声が存在します。一方で、分岐直後には不安定だったビットコインキャッシュの通貨発行速度や価格推移は落ち着きを見せ始めています。

昨年同時期にもイーサリアムという通貨からイーサリアムクラシックという通貨が分岐しましたが、現時点では双方ともに一定のマイナーや取引量がありコインとして機能しているという例もあり、今後ビットコインキャッシュについても取引量やマイナー、ユーザーなどのプレイヤーがどのように変化するか、まだ動向を見守る時期といえます。

田代 昌之