猫がすることに飼い主は喜んだり、驚いたり。だけど我々の行動には猫なりの理由があり、なかには飼い主の思い込みも実はあるんです。内緒にしておきたい、でも知ると奥深い猫の本音を、動物学者の今泉忠明先生が解説。

凹んでいると寄り添ってくれたり泣いていると舐めてくれたり。猫って人間の気持ちがわかってるの?

いつもと違う様子を感じて調べているだけなんです。
猫は自分の縄張りで起きていることの変化に敏感な動物。飼い主が落ち込んでいるなど、いつもと様子が違うと気になるんです。飼い猫が涙を舐めてくれるというのも、水道から落ちる水が大好きな猫にとっては、「あ、こんなところから水が!」てなもので。猫が慰めてくれていると思うのは、それはそれで幸せだけど…実はただ、調べに来ているだけなんですね。ごめんなさい、身も蓋もないこと言っちゃって(笑)。猫は悲しい気持ちを多少は持っていると思いますが、もともと単独生活者。森の中で1匹で暮らしていくのに、寂しい、悲しいといった人間と同じような感情を持っていたら生きていけません。

子猫の時に嫌なことをした友人を5年経った今も会うたびに威嚇。猫って執念深いのでしょうか?

身を脅かす危険は生涯忘れず。でも、実は切り替えは早い方。
単に叱られたり、失敗したくらいでは猫はへこたれません。あくびや爪とぎ、毛づくろいなど転位行動をして気を紛らわしちゃう。野生の猫は1匹で生きていて、狩りの成功率はたった1割。9割は失敗するんだから、いちいち落ち込んだり、いつまでもひきずってはいられない。本来は切り替えは早いタイプなんですよ。でも、猫はカラダに危害を受けたことや、身を脅かす恐怖体験については一生覚えています。そうして猫は自らの身を守り、種として生き延びてきたんです。それを乗り越えて仲良くなりたいなら、ひたすら優しく空気のように接するのみ。猫の方から寄ってくるのを気長に待つしかありませんね。

テレワーク中に猫が邪魔をして仕事が全くはかどりません。気が済むまで相手すべきなの?

猫の方が立場が上。余裕がないならば軽く無視を。
飼い主と暮らす家を猫は自分の縄張りと思っていて、その日常の行動パターンをちゃんと記憶している。だから、いつも会社へ出かけて不在のはずの人が家にいると、侵入者とみなすんです。「いつまでもいるんじゃないよ」って。でも、飼い主は家にいるから「じゃ、仕方ない。いるんなら遊んでよ」という気分で、パソコンの上などに乗ってくるんですね。猫の方が立場は上なんです。適当に遊ばないと、いつまでも邪魔しにくるでしょうね。しかし、遊んでいる暇がない人は、猫の目を見ないでそーっと手で押し払うことが、猫の機嫌を損なわずにお誘いを断るコツ。軽く無視をすると、だんだんと諦めます。

今泉忠明先生 動物学者。今秋、テレビ東京のミニドラマで初実写化となった『ざんねんないきもの事典』(高橋書店)をはじめ、動物に関する著書が多数。

※『anan』2020年10月28日号より。マンガ・ねこまき(ミューズワーク) 取材、文・野尻和代

(by anan編集部)