意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「AI婚活支援」です。

政府の目的は労働人口を増やすこと。対策は十分か?

政府は、2021年度から自治体が行う人工知能(AI)を使った婚活支援事業に補助金を出すことにしました。現在日本は晩婚、非婚が増え、少子化が加速しています。2019年の出生数は86万5239人と史上最少。コロナ禍の影響もあり、2020年は82万〜84万人に減少することが見込まれ、今年は80万人を割るといわれています。

近年、AI婚活やマッチングサービスアプリの利用は当たり前となりました。業界1位のペアーズの累計会員数は1000万人を超え、年間300万人ずつ増加。ビッグデータをベースにしたマッチングは、生活が多様化し、同じ嗜好の人と出会う機会が限られる中、相手の信用も保証される安心も伴い、需要が急増しているのです。

国や行政がAI婚活を支援するのは、労働、生産人口を維持するという大きな目的があるからです。自治体の生き残り策として、街コンを主催したり、市内で結婚する夫婦に住宅費用を免除するなど、婚活を支援するようになりました。「結婚したいけれどできない」という悩みは若い世代によく見られ、男性のほうが深刻です。「収入がない」「コミュニケーションが苦手」などの理由で、恋愛経験のない10代〜20代前半の男性が実は増えているのです。子供・若者白書によると、15〜39歳の非労働力人口のうち、家事も通学もしていない若年無業者数は2019年時点で74万人。病気や怪我に次いで「仕事をする自信がない」「探したがない」が、働かない理由として挙がっています。低賃金や非正規化が進み、自分の生活が安定しないことには恋愛や結婚しようという気になれない、という現実も見過ごしてはならないでしょう。

菅政権は、AI婚活支援のほかにも不妊治療の保険適用など、少子化対応策を掲げています。しかし、少子化対応策の予算は防衛費よりも抑えられています。成婚し、子供ができても、経済的な問題で第二子、第三子を諦める夫婦も少なくありません。これでは人口は減り続けてしまいます。政府はまず、生業を確保できる環境整備、安定した雇用、新しい産業の育成など、若者の生活基盤を積極的に支える必要があるのではないでしょうか。

堀 潤 ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。『モーニングCROSS』(TOKYO MX 平日7:00〜8:00)にメインキャスターで出演中。

※『anan』2021年2月17日号より。写真・中島慶子 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

(by anan編集部)