生活リズムが崩れてうまく寝付けない、睡眠時間はとっているのに寝起きがスッキリしない…。長引くコロナ禍のなかで、睡眠の悩みを抱える人も増えている模様。

良質な睡眠のために、睡眠のメカニズムを知ろう。

“十分寝たのに眠い”“睡眠時間が短くて脳が休まらなかった”。そんな実感から、睡眠に自信がない人も多いのでは。作業療法士の菅原洋平さん曰く、睡眠について学ぶ機会が少ないので、間違った知識や情報を持った人も多いそう。

「“睡眠中、体と同じように脳も休んでいる”と考えられていたのは昔の話。最新の研究では、眠っている間の脳は、日中の自分を支えるためにさまざまな働きをしていると考えられています。例えば、よく知られる“レム睡眠”と“ノンレム睡眠”のメカニズムにもしっかりと意味があります。深さの異なる眠りの繰り返しによって脳が自分を進化させているんです。例えば、嫌なことがあった日は眠りが浅かったり、よく眠れないという経験がありませんか? これは、嫌な記憶を定着させないために、あえて脳が行っていること。つまり日常の出来事によって、日々の睡眠サイクルは変動するのです」

まずは下の図で、基本の睡眠のメカニズムや睡眠の役割を知ろう。

寝ている間、こんなことが起きている。睡眠のメカニズム。

睡眠中の脳波は、大きく5段階に変化。就寝直後から、睡眠段階(1)(2)(3)(4)と徐々に深いノンレム睡眠へ。再び浅くなってレム睡眠を迎える。これを1サイクルで、一晩に3〜5サイクル繰り返されるのが一般的。段階ごとに脳の働きや体の状態をチェック。

レム睡眠

夢を見たり、外部の危険を察知したり。脳は密かに“感情記憶”を整理中。

体は寝ていても、脳はいつでも目覚められる準備状態。起きた後も覚えている夢は、このときに見ているといわれ、脳は日中に起こった出来事に対する感情の記憶の整理も行う。

ノンレム睡眠:睡眠段階(1)〜(2)

寝ているような、寝ていないような…。ぼんやりした浅い眠りの段階。
はっきりと寝ている自覚はない、最も浅い眠り始めの段階。「ベッドに横にはなっていたけれど、一晩中眠れなかった」という人は、この段階のまま朝を迎えていることが多い。

ノンレム睡眠:睡眠段階(2)〜(3)

脳はじっくりと長期記憶を保存。体は寝返りや歯ぎしりをする程度に動く。
眠りながらも体は動くのが特徴。脳内では、その日の出来事や覚えたことなどを、海馬からより広い神経ネットワークに移行させて、長期記憶として保存する作業を行っている。

ノンレム睡眠:睡眠段階(3)〜(4)

地震が起きても気づかないほど、ぐっすりと深いノンレム睡眠へ。
心拍数と血圧は低く、呼吸もゆっくりになる深いノンレム睡眠の段階。代謝を落として無駄なエネルギー消費を避け、疲れを癒す。脳内は、日中の出来事を反復するなど活動中。

CHECK1

睡眠中の脳内では“アップデート”を行っている。
睡眠中の脳は、実は大忙し。「例えば、記憶の整理は重要な作業の一つです。翌日のストレスを減らすため、日中に起きた嫌な感情の記憶は、レム睡眠中に消去します。また、その日に起こった出来事や、初めて動かした体の使い方の反復練習を行ったり、脳内の情報を結びつけてアイデアを作るといったことも、睡眠中に行っています。こういった作業が行われることで、眠っている間に、よりよい明日の自分を作っているといえます」

CHECK2

日中の行動によって睡眠リズムは日々変動する。
“毎日規則通りの睡眠サイクル”なんて現実的ではない、と菅原さん。「デスクワークで頭を使った日と、運動した日とでは、体や脳の疲労具合が異なるため、睡眠時の作業工程も変わります。つまり、睡眠のリズムは日中の行動によって変化。出張の疲れが3日後にやっと取れたということもあるように、何日もかけてリカバーすることもある。大切なのは、日中の自分のパフォーマンスを上げるために自分の睡眠を調整するという意識です」

CHECK3

“起床時間”を揃えることが睡眠サイクルを整える鍵。
良質な睡眠のためのリズム作りに最も重要なのは、“起床時間”を揃えること。「子供の頃から“早寝早起きをしなさい”と教えられてきた人が多く、規則正しい生活を心がけようとすると“毎日22時には寝よう”などと就寝時間を決めがちです。ところが脳は、起床時間を揃えないと就寝時間を揃えることができないつくりになっているんです。規則正しい生活を心がけるならまずは、起床時間を決めることを強くおすすめします」

菅原洋平さん 作業療法士、ユークロニア株式会社代表。ベスリクリニックでは薬に頼らない睡眠外来を担当。整体リズムや脳の仕組みを活用した企業研修を全国で行っている。著書に『あなたの人生を変える睡眠の法則』など。

※『anan』2021年9月8日号より。イラスト・加納徳博 取材、文・若山あや

(by anan編集部)