デジタル払いが経済の活性化を加速させる?

海外に比べて、日本のキャッシュレス化は遅れており、未だ現金決済が主流です。そんななか、厚生労働省の労働政策審議会では、給与の支払いを銀行口座を介さずに支払えるようにする議論が始まりました。

労働基準法では、賃金は通貨(現金)で、直接労働者に全額を毎月1回以上、一定の期日を決めて支払わなければならないことが定められています。ただし、労働者との合意があれば賃金を銀行口座や証券総合口座に振り込むことが、例外的に認められているのです。それが今後、PayPayやLINE Payなどの「ペイ」で支払える、給与のデジタル払い解禁に向けた検討が進められているんですね。

企業が個人口座に電子マネーでの給与支払いが可能になれば、振込手数料がなくなりますし、コスト削減や時間の短縮に繋がります。また、アルバイトや日雇いなど、有期雇用労働者への支払いも早くなるでしょう。銀行口座を容易に開けない、海外から来られた労働者の方も「ペイ」での支払いに代わっていくかもしれません。ただし、金融機関のような預金の保険制度がないため、それらの資金決済事業者が破綻した場合、どれだけ元本が保証されるのかという問題はあります。

現在、給与所得者は2019年年末時点で5990万人います。また、全国銀行協会が主要銀行を対象に調べた、2020年通期の「キャッシュレスによる払出し比率」調査によると、個人の給与受取口座からの出金は109兆円。そのうち現金が47.4%、キャッシュレスは52.6%で現金を上回っていました。内訳で一番多いのはクレジットカード払い。今後、振込手数料を取れなくなると、銀行はビジネスモデルを根幹から変えなければならなくなると思います。

現在、銀行以外で送金サービスを担う登録事業者の数は国内で80にのぼります。Googleが日本の個人送金サービスアプリを買収するという報道もありましたし、この分野の急成長は間違いないでしょう。これにより経済は一層速く回るようになりますが、それが持続可能な範囲なのかどうか。振り回されない注意も必要だと思います。

堀 潤 ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX平日7:00〜)が放送中。

※『anan』2021年9月15日号より。写真・中島慶子 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

(by anan編集部)

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