俳優としての活躍ぶりはもちろん、YouTube、LINE、洋服作り…。新しいフィールドを次々に駆け抜ける佐藤健さん。本人へのロングインタビューから、その軽やかで、芯の通った生き方の魅力を読み解いていく。

自身のYouTubeチャンネルのカメラも入っていたこの日、佐藤健さんは時折スタッフのことを笑わせ、終始リラックスしていた。役者という主軸をどんどん太くしながら、役から離れた姿を見せることにも積極的で、理想の一着を追求したい気持ちに駆られ洋服作りを始めるなど活動の幅をさらに広げている。

「一番のターニングポイントを挙げるなら高校卒業後、大学に行こうと思っていたけど、それをやめて役者の道に進んだことですね」

高2でスカウトされ、高3のときに若手俳優の登竜門とされる仮面ライダーシリーズの主演を、オーディションで勝ち取った。しかし先の保証は何もない世界。役者と並行して進学するのが無難といえたが、その道を選ばなかった。

「大学に行く理由が『なんとなく』で、具体的にやりたいことがあったわけじゃなかったから。そんなとき役者という選択肢を渡されて、唯一これはやりたいことだと思えたんです。進学も一応考えたけど、面倒くささが圧倒的に勝りました(笑)」

出演作はすべてがターニングポイントと言い切るが、来る仕事が変わったという意味で転機となったのが『るろうに剣心』だった。

「この作品以降主演のオファーが増えてきました。主演することで作品そのものをよくするために、もがくようになりましたね」

最新映画『護られなかった者たちへ』も、もがきながら関わったであろうことが伝わってくる、難しい役どころだ。東日本大震災後の宮城を舞台にした本作は、社会福祉の網の目からこぼれ落ちてしまう人々を通して、さまざまな立場からの正義を描いた社会派ドラマ。佐藤さんは被災者であり、不可解な連続殺人事件の容疑者とされる利根という男を演じている。

「世の中の理不尽なことに対して、怒りややるせなさを感じた経験は誰しもあると思うので、その気持ちを代弁するのがこの映画における自分の役目だと思いました」

児童養護施設で育った利根は、避難所で出会った同じように身寄りのない子どもや女性と、奇しくも本当の家族のようになっていく。

「親の存在や青春らしい青春も知らず、孤独な人生を送ってきたから、彼女たちと出会って家族の温もりみたいなものを感じて、救われたんだろうなと思います」

利根のように、人との出会いが人生を大きく変えることもやはりある。佐藤さんは20歳前後で、人間関係の大切さに気がついた。

「子どもだったからしょうがないんだけど、それまでは友達に対してちょっとした嘘をついたり、隠し事をすることもありました。だけどそれをしている限り、自分はずっと孤独なんじゃないかとふと思って。仲のいい友達には嘘も隠し事もなくして、自分に対してもそうあってほしいと思うようになりましたね。友達に限らず人間関係は、人生において間違いなく大事なものだから」

最近の大きな変化といえる、前所属事務所からの独立も、人との出会いや向き合い方を大事にしてきた末の前向きな決断だった。

「自分のやりたいことを、より自由にできる環境に身を置きたいと思ったんです。別に今までも抑圧されてきたわけではないけれど、興味の幅や種類がだんだん広がってきているし、この先たぶんもっと広がっていくんだろうなと思ったので。一緒に独立した神木(隆之介)やマネージャーなど、同じほうを向いている人たちがいたからできたことであって、ひとりだったらしていない決断です」

窮屈になってから環境を変えるのではなく、やがて来るいつかのために布石を打つ。これを実際に行動に移すのは難しいことのはず。

「自分の人生なのだから、やりたいことができたら何にも邪魔されず行動したいし、何をやりたいと思うかなんてわからないじゃないですか。だからいつでも自由でいられるよう、そこは先手先手で動いていきたいんですよね」

さとう・たける 1989年3月21日生まれ。埼玉県出身。最新映画『護られなかった者たちへ』は、10月1日(金)より全国公開。

シャツ¥143,000 リング、細 各¥49,500 太¥38,500(以上サンローラン バイ アンソニー・ヴァカレロ/サンローラン クライアントサービス TEL:0120・95・2746) イヤーカフ¥16,280(ノウハウ/ノウハウジュエリー TEL:03・6892・0178) その他はスタイリスト私物

※『anan』2021年9月22日号より。写真・成田英敏 スタイリスト・中兼英朗(S‐14) ヘア&メイク・古久保英人(Otie) 取材、文・兵藤育子

(by anan編集部)