「上京したばかりの頃はR&Bのカバー曲をライブハウスで歌っていました。まだ10代で声も雰囲気も合わず、もっと素朴な歌が合ってるのかなと作ってみたのが『きえないで』という曲でした。BiSHでデビューしてからは活動を全うすることで精一杯。いつかソロ活動もしたいなと、ひとりでデモ作りをしていました。どこにも出す予定がない曲を作り続けるのは不安で。でも一方で、本当の気持ちを歌にできていたのかもしれないです」

現在は2度目のソロツアーで全国を駆け抜ける中、3か月連続アルバムリリースに挑む。まずは9月にデジタルEP『BORN SICK』で、自身のダーク・サイドを掘り下げた。疲れ果てた主人公が夜空を見上げる描写と、静かに熱を帯びていくような歌声が大きなドラマを生み出す「ペチカの夜」にはこんなメッセージを込めた。

「本当に疲れている時ってお花を見ても綺麗に思えないし色もグレーに見えたりするんですよ。それでも見上げた星はいつでも綺麗だから大丈夫、という歌です。星が綺麗とか空気が美味しいとか、まだ思えているなら逃げられる元気もあるはずだから、逃げる方法を考えてもいいんじゃないかなと思います」

10月にリリースしたデジタルEP『DEAD HAPPY』ではポップ・サイドに振り切った。加藤隆志(東京スカパラダイスオーケストラ)とコラボしたナンバー「ZOKINGDOG」はサビの〈ワンワンワン〉のフレーズも斬新かつキュート。

「歌詞を書いている時に言葉が嫌になったことがあって。言葉は人を生かしも殺しもする。自分が言葉を操れるマインドじゃない時に、犬って羨ましいなと思ったんです。吠えることしかできないのに必死に何かを伝えてるじゃないですか。そこでボイスメモに『ワンワンワワンワン!』って歌ってみたのがきっかけ。あと、犬の絵を描いた時に雑巾をかぶせてみたら可愛くて(笑)」

そして11月。そんな楽曲たちに新曲とオープニングSEを加え、全17曲のセカンド・フルアルバム『THE ZOMBIE』がリリースされる。

「前回のアルバムで焦燥感や劣等感をさらけ出せて、でも病んでるだけじゃ何も解決しないじゃんと思った。今作では現実を受け止めて進んでいかなきゃいけないというポジティブなマインドまで少し成長できた気がします。人との出会いで音楽がより楽しいと思えるようになったし、私の音楽で泣いたり笑ったりしてくれるファンの方々がいてくれるから、現状に満足せずにまた新しいステップに進んでいきたいですね」

夢を叶え、アーティストとしての更なる欲望を抱く充実の日々。しかし、ひとりの人間としては課題もあるのだとか。

「アイナ・ジ・エンドの歌が好きと言われたら嬉しいですけど、忙しいばかりでちゃんと生活をしないと私の幼稚でひねくれた心が成長しないので(笑)。プライベートでの人との関わりをもっと頑張りたいです、それがいつかまた音楽になる気がするし。だからこの冬、もしお休みがあったら友達とドライブしたり、夜更かしして話をするような他愛ない時間を過ごしたいです!」

2nd AL『THE ZOMBIE』。ダークとポップの二面性を昇華した連続作品の集大成。11月24日発売。【初回生産限定盤(CD+BD+PHOTOBOOK)】¥11,000 【通常盤(CD+DVD)】¥6,380 【通常盤(CD)】¥3,300(avex trax)

アイナ・ジ・エンド “楽器を持たないパンクバンド”BiSHのメンバー。2021年2月にアルバム『THE END』をリリースし、ソロ活動を本格化。作詞作曲を自ら手がけ、唯一無二のハスキーボイスとパフォーマンスで魅了する。

※『anan』2021年11月24日号より。写真・岩澤高雄(The VOICE) ヘア&メイク・Tamayo Yamamoto+Sakura 取材、文・上野三樹

(by anan編集部)