70代で絵を描きはじめ、80代で一躍スター画家となった女性の作品と生き方を紹介する展覧会、生誕160年記念『グランマ・モーゼス展―素敵な100年人生』が世田谷美術館ではじまりました。本展の公式サポーターに、タレントの結城アンナさんが就任。ご自身でも絵を描かれる結城さんに、展覧会の楽しみ方や女性の生き方について、お話をうかがいました。

どんな展覧会?

【女子的アートナビ】vol. 228

本展では、グランマ・モーゼス(モーゼスおばあさん)と呼ばれ愛されているアメリカの国民的画家、アンナ・メアリー・ロバートソン・モーゼス(1860-1961)の絵画や愛用品、資料などを展示。最初期の作品から100歳で描いた絶筆、さらに日本初来日作品も含めた約130点が紹介されています。

グランマ・モーゼスは、ニューヨーク州の農家に生まれ、27歳で結婚。ヴァージニア州に移住し、農場を営みます。夫の死後、72歳のとき孫に贈るため刺繍絵をはじめますが、リウマチで続けられなくなり、絵筆をとります。

やがて絵が評判となり、80歳で初個展を開催。アメリカだけでなく海外でも作品が展示され、大統領からも表彰されます。名声を得た後も農家の主婦として自然体で暮らし続け、101歳で亡くなりました。

自然に囲まれた農村での暮らしを愛し、その風景や身近な出来事を描いたグランマ・モーゼスの作品は、素朴で温かく、優しさに満ちています。彼女のステキな生き方や作品の魅力について、公式サポーターの結城アンナさんに語っていただきました。

結城アンナさん!

モデル・タレントとして活躍されている結城さんは、スウェーデン生まれ。10代から日本で元祖ハーフモデルとして活動をはじめ、雑誌『anan』の草創期にも登場されています。

俳優の岩城滉一さんと結婚し、出産されたあと30代で専業主婦となり、60代から芸能活動を再開。北欧スタイルを取り入れた暮らしをインスタなどで発信し、そのシンプルで自然体な生き方は世代を超えて支持されています。

ネガティブなことが何ひとつない!

――まず、展覧会をご覧になって、全体的な感想を教えていただけますか。

結城さん つらいことがいっさい絵に出てこないのが、すごくステキです。農村での暮らしはいろいろ大変なことがあったと思いますけど、いっさい絵に出ていない。すごくポジティブ。見ていて私もハッピーになりました。ネガティブなことが何ひとつないのです。

――特に印象に残った作品はありますか?

結城さん 全部印象に残りましたよ(笑)。でも、すごく好きなのは《美しき世界》という作品。あまり人物は描かれていない風景の絵で、早い朝なのか夕方なのか、空がピンク色になっているのです。それを見ていると、「神様ありがとう。こんな美しい自然をありがとう」という画家の祈りのような気持ちをすごく感じたのです。

私もお散歩しているとき、特に朝の早い時間や太陽が沈むときの景色を見て、「神様ありがとう」と思うときがあります。その美しさを絵に表してくれたグランマ・モーゼスは、すばらしいなと思いました。

――自然への感謝が絵に表れているのですね。

結城さん すべての絵に感謝が出ていると思います。自然に感謝、身近にいる、がんばっている村の人たちに感謝。彼女はすべてに感謝しているということが作品から伝わります。

幸せのヒントがもらえるかも…

――グランマ・モーゼスは、テーブルなどにも絵を描いています。結城さんも、ご自宅の壁などに絵を描かれていますが、絵描きさんはいろいろなところに描きたくなるのでしょうか。

結城さん 私は画家ではないけれど、グランマ・モーゼスの気持ちはわかるわ。壁とかに絵を描くと、気持ちいいのよ。そういうことを、してみたくなるの。テーブルの絵などを見て、彼女に一歩だけ近づけたかな、と思いましたよ(笑)。

――ananwebの読者は20〜30代の若い方が多いのですが、その世代はこの展覧会をどんなふうに楽しめますか。

結城さん 絵というのは人それぞれ見方が違うので、楽しみ方をお伝えするのは難しいのですけど……。例えば、自分がたまにどこを向いているのか、自分はどういう人生を歩みたいのか、自分を見失ってしまうときがありますよね。そういうときに、このグランマ・モーゼスの作品を見ると、ちょっと安心するのではないかしら。

彼女はシンプルに暮らし、一生懸命働いて、遊ぶときは家族で遊ぶ。自然も動物も大事にしている。きっと嫌なこともあったはずですが、「どうにかなるさ」と思って生きていたのだと思います。そんな生き方が表れた絵を見ると、幸せのヒントがもらえるかもしれない。

グランマ・モーゼスは、映画館など何もないような自然のなかで、みんなでメープルシロップをつくったりして生活し、それを楽しんでいました。でも、何かつくらなければ食べていけないし、暮らしていけない。生と死が身近な自然のなかで生きているから、危険もある。クマが出るかもしれないし、嵐がきて作物がダメになるかもしれない。だから、みなで協力して暮らしているのです。みなで助け合って生きている様子が作品にあふれています。

やりたいことは、やる!

――グランマ・モーゼスが、80代でスター画家になったというのもすごいです。

結城さん 彼女は、子どものころからずっと働いていました。結婚前も、結婚してからも。働かないと、生きていけないのよ。別に絵を描いて稼ぐことに限らず、彼女はきっとなんでも自分ができることにトライしたのだと思います。すごくフレキシブル。自分でジャムを煮て売ったり、絵を描いて売ったり。もし絵がなければ、違うものをつくったのではないかと思います。

――グランマ・モーゼスは、リウマチで刺繍ができなくなっても落ち込まず、頭を切り替えて絵を描きはじめています。前向きに生きる姿勢にも驚かされます。

結城さん 彼女は、落ち込むタイプではないですよ(笑)。以前、老人ホームの社長さんから聞いたお話なんですが、女性はすごく順応力があるらしいです。老人ホームに来て、あまりうれしくはないけれど、ここでがんばる! と女性は前を向く。男性は、しゅんとなってしまうようです。

女性は、小さいときから「これは女の子だからダメ」といわれたりしているので、「じゃあしょうがないから、こちらにする」と切り替えることができる。状況の変化に慣れていると思います。

グランマ・モーゼスも、困ったり悩んだりせず、先に進む人なのでしょうね。あと、想像力と勇気もある。人に絵を見せるのは勇気がいります。彼女は絵を描いて、それをドラッグストアに置いてみて、値段もつけています。誰かに買ってもらえるかもしれない、という想像ができたのです。

――今を生きる女性も、見習える部分がありそうですね。

結城さん そうね。あまりクヨクヨしないことよ。やりたいことは、やる! 人が何をいっても、やったほうが勝ち。ダメだといわれても、やりたかったらやればいいのよ。もっと怖いのは、自分で自分にダメ出しすること。そんなことはやったらダメ。怒られるからとか、怖いから、失敗するからとか、そんなふうに考えるのは、もったいないわね。

若いころは…怖いもの知らず(笑)

――結城さんは10代からモデルとして活躍されていましたが、そのころはどんな女性でしたか?

結城さん めちゃくちゃ女の子していました(笑)。好きなようにやっていたわ。今考えると、あちこちに迷惑をかけていたと思うのですけれど……。あまり人のいうことを聞かず、好きなようにしていました。だから、怖いもの知らず(笑)。でもね、これをやるんだと思ったら、もうやるしかないの。人が何をいっても関係ない!

――すごくパワフルでいいですね。では今、若いころの自分にアドバイスするとしたら、どんなことでしょうか?

結城さん もうちょっと勉強しておけばよかったわね。言葉のレッスンもしましたし、良い先生もいましたし、良い学校に行かせてもらいましたけど、自分ではあまり勉強しませんでしたね。やはり勉強は大事。若いころはタダで勉強できるし、脳が柔らかいから、いろいろなことが入っていくでしょ。今やろうと思っても、無理ですからね。

――今後、挑戦してみたいことはありますか?

結城さん 新しいことは50歳のときにいろいろやりましたので、今は、今あることをもっと深く、ちゃんと時間をかけてやりたいと思います。暮らしでも絵でも、すべて磨きたいかなと思っています。

――今後のご活躍も楽しみにしています。最後に、読者の方にメッセージをいただけますか。

結城さん この展覧会は、見終わるとすごくホッとします。だから今の時代に合っています。ハッピーで前向きな気持ちにもなりますし、来てよかった、見てよかった、と本当に思いました。グランマ・モーゼスの人生の話も、少し知ってから見るのもいいと思います。画家のフィルターを通して絵になるので、そのフィルターの裏には何があるのか、その部分も大事だと思います。

――元気が出るお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

インタビューを終えて…

仕事、恋愛、育児、介護などさまざまな経験をされてきた結城さん。困難なこともあったと思いますが、グランマ・モーゼスの絵と同じように、結城さんの言葉も常にハッピーでポジティブ。聞いているだけでパワーがわいてきました。

インスタや書籍などで見られる結城さんのイラストも、ほっこり幸せな気分になるものばかり。まさにグランマ・モーゼスのようなステキな方でした。

2月27日まで開催!

生誕160年記念『グランマ・モーゼス展―素敵な100年人生』は2022年2月27日まで開かれています。ポジティブなパワーがあふれる展覧会、幸せのヒントを見つけに足を運んでみてはいかがでしょうか。

Information

会期    :〜2022年2月27日(日)※休館日: 月曜日(祝・休日の場合は開館、翌平日休館)、12/29(水)〜1/3(月) ※1月10日(月・祝)は開館、翌1月11日(火)は休館
会場    :世田谷美術館 1階展示室
開館時間  :10:00〜18:00(最終入場時間 17:30)
観覧料   :※日時指定制 一般¥1,600、大高生¥800、小中生¥500、65歳以上¥1,300

※最新情報などの詳細は公式サイトをご覧ください。