ミネオラに住む双子の姉妹・マーナとマイラ。これが大原櫻子さんがシス・カンパニー公演 『ミネオラ・ツインズ〜六場、四つの夢、(最低)六つのウィッグからなるコメディ〜』で演じる役。マーナは、結婚こそが最上の幸せと信じて疑わない保守的で“善良”な女子高生。かたやマイラは、周りの良識なんかものともせずに自由奔放に生きる“邪悪”な問題児。ウィッグと衣装を取っ換え引っ換えしながら、真逆な性格のふたりの30数年の経過を演じていく。

物事の価値観が大きく変動した時代に、思いもよらない運命をたどる双子の物語。

「最初に戯曲を読んだときは、物語の軸が全然見えなくて戸惑いました。何度も読んでいくうち、ふたりの像がおぼろげに掴めたような気がしていたんですが、稽古に入ってみたら思っていたのとはどうやら違うようで…正直、まだ迷っている最中。今は真っ暗な部屋に閉じ込められていて出口が見当たらない状況です」

当初はふたりの対比を明確に演じていたというが、演出の藤田俊太郎さんから「もっと普通の大原櫻子でいいんだよ」と言われたのだとか。

「それってどういうことだ? って思っています。戯曲の中ではそれぞれの役の説明に極端に善良とか邪悪と書かれているので、今はとまどいながらも全力で、役として生きている感じです。ひとつ考えているのは、難しいことを考えず、言葉で説明できないことを全身のエネルギーを使って演じている女優の様が、コメディになるということなのかなと」

考え方も生き方も性格も、まるで真逆な双子の置かれる状況は、時間の経過による社会や価値観の変遷によって大きく変わっていき、ふたりの人生は予想もしない方向へ。

「どっちも、少し前までは赤だって話をしていたのに、次の瞬間には青の話をしているくらい感情が目まぐるしく動いていく役なんですね。戯曲のプロダクションノートに“常にホルモンの影響で興奮しているような状態で演じること”って書かれているんですが、そういう部分のことを言ってるんじゃないのかな? と説明されて、ちょっと納得したんです。ふたりは普通の人だけど普通じゃなくて、それぞれが自分の理想に向かって進めば進むほど、周りが見えなくなっちゃう感じがあるんですよね。物語的には社会問題だったり、ジェンダーの問題だったりが絡んできてシリアスではあるんですけれど、その中で生きている人たちは、ただただ必死で、その様子が笑えるのかもしれないです」

発せられる言葉は、迷いや悩みではあるけれど、これまでにだって、レズビアンをカミングアウトする少女や、出世のために夫をけしかけ王殺しをさせる妻など複雑な役に扮してきた大原さんだ。どちらの役も、わかりやすい苦悩で言い訳するのではなく、役の抱える運命に対する諦観を含んだ覚悟に、自ら全身で飛び込むように演じていた。その潔い姿を見ていれば、この役もやってのけるのだろうと確信させられる。

「自分でもわからないんですが、お芝居をやっていると自分の本当の姿が出てくる感じがするんです。生きているうえで、思っても口に出せない本音がありますよね。お芝居をしていても観ていても、それがえぐり出されて浄化される感じがして、私はそれが好きなのかもしれない」

共演するのは、小泉今日子さんと八嶋智人さんというユーモアを持ち合わせる達者なふたり。

「今回、17歳から51歳までを演じるんですが、この物語をご覧になった方が、これまでの人生にあった恥だったり隠したいことだったりを作品に垣間見て、エグいけど笑ってもらえたらなと思っています」

シス・カンパニー公演『ミネオラ・ツインズ〜六場、四つの夢、(最低)六つのウィッグからなるコメディ〜』 NYの郊外の町・ミネオラに暮らす双子のマーナとマイラ(大原)は、容貌は同じだが真逆な性格。1950年代から始まり、’69年、’89年と、変わりゆくふたりの姿が描かれる。1月7日(金)〜31日(月) 表参道・スパイラルホール 作/ポーラ・ヴォーゲル 翻訳/徐賀世子 演出/藤田俊太郎 出演/大原櫻子、八嶋智人、小泉今日子ほか 全席指定1万円 シス・カンパニー TEL:03・5423・5906(平日11:00〜19:00)

おおはら・さくらこ 1996年1月10日生まれ、東京都出身。俳優として活躍する傍ら、歌手としても活動。近作に主演ドラマ『つまり好きって言いたいんだけど、』など。

※『anan』2022年1月12日号より。写真・中島慶子 ヘア&メイク・植木 歩(OTIE) インタビュー、文・望月リサ

(by anan編集部)