MVや小説のイラスト、ゲームキャラクターのデザインなど、各分野での活躍が注目を集めている望月けいさん。自身の作品から、いま変革期を迎えていると分析する絵師界への想いも伺いました。

先駆者・望月けいさんが語る、絵師の今までとこれからのこと。

人の人生を変える絵が描きたかった。

「メイド」

子供の頃から絵を描くことが好きだったという望月けいさん。イラストレーターになりたいという明確な想いを抱いたのは中学3年生頃。友達との貸し借りで出合った漫画がきっかけだった。

「初めて漫画を読んでこんなに絵が上手い人たちがいるんだと知り、自分もかっこいい絵が描きたいと感じて描き始めました。Gペン特有の液だまりや線が少しずつ細くなるなど、当時に心惹かれたアナログ特有の表現は、今の私の絵にも残っています。また音楽が好きなのですが、学生時代にBUMP OF CHICKENのライブに行き、彼らが“短い時間”で人を感動させている様を目の当たりにしたことが漫画ではなく、イラストを描き始めた大きなきっかけ。漫画などストーリーのあるものではなく、自分も“短い時間”で人を感動させられるもの=一枚絵のイラストを描きたいと思うようになったんです。当時から、絵には世の中に対する怒り、理不尽さや生きづらさみたいなものを込めています」

媚びることなく表現したいものを貫く。

「ゴシック」

「愛と正義ちゃん」

高校2年の時、絵を投稿するSNS「pixiv」にアップした絵を見た人から初めての仕事のオファーをもらった。

「今はどんどん絵に触れる年齢が下がり、高校生で仕事をしている人も少なくないのですが、当時は今ほどにイラスト的な文化が広がっていなかったので、珍しかったと思います。見つけてくださったことが嬉しいという想いはもちろんですが、自分の絵に自信があったので、“私の絵、いいもんな”という気持ちも正直あって(笑)。絵を描く時のアプローチとしては、まず、見た人にどういう想いを抱いてほしいかということを考えて、そのためにどういうエスプリにしようかと掘り下げていく。まず目に入るであろう色を最初に決めていくことが多いですね。ただ、私は、自分の描きたい絵があって、それを使いたいと思うクライアントさんに使っていただくという気持ちでいるので、お仕事の時も趣味の時と変わらないテンションで、自分の良さみたいなものは絶対に変えずに向き合っています。見てくださる人たちに刺さるようにと意識はしますが、媚びた感じで描くと、それが透けて見えてしまう。自分が訴えたいものや描きたい絵を重視することが、いいと思ってもらえる要因になっているのかなと感じています。これまでに、同業の方から良かったと言っていただいた『魔法少女は団地で待ちぼうける』という作品は、自分が人物だけでなく背景も描けることを見せたくて描いたもので、それまでの作品と一線を画すものでした。反響があると感じるのは一貫して、新しいことに挑戦した作品です」

「魔法少女は団地で待ちぼうける」

アーティストのような存在になっていきたい。

「バイク」

今、「絵師の界隈はどんどん広がっていき、変革の時期を迎えている」と、自身が身を置く世界を見つめる望月さん。

「絵の需要が高まり、絵を描く人が増えたことで、これまでと同じアプローチではいけないと思っている方もいらっしゃるし、もっと流行に乗ったりするべきなのだろうかと悩む方も多そうだなと感じています。ただ、私はイラストレーターも、音楽をやっている方々などに負けず、アーティストと呼ばれる存在になっていくのだろうと感じていて。そのためには私が絵を頑張って、まず“望月けいってかっこいいよね”と思われることが大事。だから妥協せず、かっこいい部分を見てほしいという想いに恥じない活動をしていくのみだと思っています。その一方で、自分が好きな音楽やファッションなどのカルチャーとのコラボレーションもできればいいなって。音楽でいうとMVやジャケットに使っていただくなど、コラボがしやすいものだと思うし、そういうところでイラストの世界や絵師と呼ばれる人たちの活躍が広がっていったらいいなと感じています」

KEI’S HISTORY
2012年:同人活動や歌ってみた動画のサムネイルなどの仕事を始める。
2015年:短大卒業後、フリーのイラストレーターとして活動を開始。れをる『極彩色』のCDジャケットのイラストが大きな話題に。
2016年:アーケードゲーム『CHUNITHM AIR』のキャラクターデザインを手がける。
2019年:個展「愛の形としてくれ」を開催。
2021年:初の画集『人間よ強欲であれ』を発売。

もちづき・けい ツイッターフォロワーは62万人以上、絵師界のトップを走り続けるクリエイター。イラストレーター。『Project:;COLD』のキャラクターデザインや『LOOPERS‐ルーパーズ‐』のアートワークを担当。

※『anan』2022年6月22日号より。取材、文・重信 綾

(by anan編集部)