自分で自分を幸せにする、その力を身につけよう。

自己肯定感はよく聞くキーワードになりましたが、一体なに?

「自己肯定感とは、自分に対する主観的な評価だと思います」と言うのは、韓国の精神科医であるユン・ホンギュンさん。

「自分のいいところ、悪いところを含め、自己をどれだけ肯定的に捉えているかという感情です。私は診察を通し、“自分は幸せではない”と感じている人は、自己肯定感が低いことを発見し、この感情の重要性に気がつきました。一方、自己肯定感が高い人は、悪いことが起きたときも、自分は克服できると信じて迅速に対策を講じ、行動に移すことができる。精神的な回復も早いのが特徴です」

幸せな人生を歩むために、自己肯定感を健やかに育みたい。そのためには何が必要なのでしょう。

「誰か、あるいは社会の役に立っている実感。そして“自分らしく”生きていること。さらにストレスやトラウマなどがなく、安心・安全な状況に自分が存在していること。20〜30代は多忙ゆえ自分らしくいられる時間が持てない、また女性は社会的に弱い立場に追いやられることが多く、自己肯定感を育てることが難しい状況も実際にあると思います」(ユンさん)

また心理カウンセラーの中島輝さんは、「自己肯定感をコントロールできる=セルフケア上手になること」と続けます。

「自分で自分を満足させられる、つまり自分で自分を幸せにできるのです。自己肯定感は日々上下するものだから、回復法を知っておけば生きやすくなると思います」

ユンさんは自己肯定感との向き合いを自転車になぞらえる。

「小さいときは“なんでもできる”と思っているから、自転車に乗るのも怖くない。でも、勢いよく乗ると転んでしまうように、失敗を経験しますよね。そして自転車に乗るのが怖くなって、慎重になる。これが自分や感情を理解しようとする段階。そうしてうまく乗れるようになると、人生の山も谷も、うまく回避することもできる。また転んだとしても、傷の癒し方や乗り直す方法さえ知っていれば、もう怖くなくなります」

中島 輝さんが解説。自己肯定感の6つの要素。

中島さんによると、自己肯定感とは〈“6つの感”によって構成されている感覚〉。それぞれの“感”を知ることで、自分の自己肯定感は今どのような状態かが見えてきます。

“6つの感”が影響し合い、自己肯定感を構築する。

自己肯定感を構成する“6つの感”。中島さんは、これを樹木に例えて説明してくれた。

「自尊感情を根っことし、全体を支える幹は自己受容感、そこから自己効力感という枝が伸び、葉である自己信頼感で光を浴び、自己決定感という花を咲かせ、自己有用感である実をつける。この6つがバランスよく存在しているのが、自己肯定感が安定している状態。とはいえちょっとしたことで、木は揺れるもの。自分は今どの“感”が揺さぶられているのかを知っていると、感情の変化に対処できますし、また自己肯定感そのものを育むヒントにもなります」

根【自尊感情】

自己肯定感を支える“根”のような存在。どっしりしっかり、深く育てたい。

自分を大切にできる感情。

「自分に価値があると思えると、他者、環境すべてに意味を見出せる。それはすなわち、どんな場所においても、生きる意味や生きがいを見つけることができる、ということ。トラブルに遭っても、“きっとこれにも意味がある”と向き合い、乗り越えることができる。セルフイメージを高く持つことができます」

幹【自己受容感】

誰と会っても、何があっても大丈夫。折れない心と強い回復力の源。

「自分を含め人間は不完全なんだ――その概念を受け入れられる力が自己受容感です」

これがうまく働いていると、人は自分の長所と短所の両方を認めることができる。

「嫉妬を感じても、“人は人、私は私”と、受け止めることができ、他者に対しても、悪い面より良い面に目が向く。ポジティブにものを捉えられます」

枝【自己効力感】

問題にぶつかったときにも、思考し行動し、挑戦することができる。

あらゆる局面で行動する勇気を与えてくれる。それが自己効力感の最大のメリット。

「自分には何かを達成する力がある、幸せになる力がある、と思え、挑戦するときに背中を押し、やり抜く勇気もくれる。たとえ失敗しても、再挑戦する気力が湧き出してきます。逆にこの力が弱っていると、踏み込めなかったり、躊躇することに」

葉【自己信頼感】

自分の中に“未来への可能性”を見出し、それを信じて、進んでいける。

自己信頼感とは自分を信頼し行動できる感覚。今と未来の可能性を信じて生きる力。

「自分の力を信頼すると、“あれも、これもできる”と可能性を見つけられ、自信が生まれて人生が豊かに広がる。逆にこの力が弱いと、“私にはそんな力はない…”と、自分で自分に鎖をつけ、ポテンシャルを発揮できない状況を生み出すことに」

花【自己決定感】

日常は選択と決定の連続! “自分で決める”ことで人生に彩りを。

自分の意思で物事を決めていく。それが人生の幸福度を決めていく、と中島さん。

「いつも決まったことしかしない、あるいは他者から与えられた選択肢をこなすだけの人生と、物事を自分で選び決めていく人生なら、後者のほうが圧倒的に楽しいし幸せです。人生を自分でコントロールしている感覚と幸福度は比例します」

実【自己有用感】

周囲や社会との繋がりの中で、役割を果たし、感じる満足感。

人からありがとうと言われると人間は誰でも嬉しいもの。自己有用感とは、自分は何かの役に立っている、と思える感覚。

「“頼りになるね”であったり、“一緒にいると楽しい”などと言われると、承認欲求が満たされ自己肯定感が高まります。他者の人生と繋がっていることが実感でき、他者に対しても感謝の気持ちが持てます」

ユン・ホンギュンさん 精神科医、自尊感情専門家、ユン・ホンギュン精神健康医学科医院院長。著書『どうかご自愛ください』(ダイヤモンド社)が韓国で120万部の大ヒットを記録した。

中島 輝さん なかしま・てる 心理カウンセラー、トリエ代表、肯定心理学協会代表。著書に『書くだけで人生が変わる 自己肯定感ノート』(SBクリエイティブ)などが。

※『anan』2022年7月6日号より。イラスト・網中いづる 取材協力・キム・スヨン

(by anan編集部)