意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「干ばつ」です。

干ばつを機に広がる紛争。世界に関わる問題。

世界で異常気象が広がっています。日本や台湾が台風や大雨の被害を受ける一方で、アメリカやヨーロッパではこの夏、熱波が続き、干ばつが深刻な状況に。8月に欧州委員会の欧州干ばつ観測所は、欧州の6割以上の地域が干ばつの危険にさらされており、渇水状況は、過去500年で最悪と発表しました。アメリカではカリフォルニア州や中西部で干ばつが発生。中国は長江流域を中心に干ばつが続き、山火事も相次いで起こりました。アフリカの干ばつも拡大しており、西アフリカでは、干ばつと紛争により過去最悪の食料危機にさらされています。

干ばつにより水が枯れてしまうと、農作物が生産できず飢餓に陥ります。人々の暮らしが貧しくなれば、奪い合いが始まり紛争が広がります。すると、世界中の武器がそういう場所に集中し、武装勢力が活動を活発化させるために、拠点を置くようになります。

西アフリカのブルキナファソは、比較的治安の安定していた国でした。ところが、気候変動により水がめが枯渇し、貧しさから紛争当事国に変わってしまいました。ブルキナファソ、マリ、ニジェールなどのサヘル地域では、イスラム過激派組織の略奪が相次ぎ、市民が家を追われ難民になっています。そして、マリでは’20年と’21年に、ブルキナファソでは今年の1月と10月にクーデターが起きました。洪水や干ばつで農作物の収穫量減少が深刻化、ニジェールは’21年の穀物生産は前年比39%減少、マリでは15%減りました。’21年11月時点でブルキナファソの約260万人が食料危機に瀕していました。

WFP(国連世界食糧計画)は、食料を届けるだけでは根本解決にならないので、干ばつ地域で食料の生産ができる取り組みに力を入れ始めました。砂漠化した土地に半円状の窪みを作り、雨季に雨が溜まるようにし、緑化を進めるというものです。草の根的で時間のかかる方法ですが大事な試みです。

8月のTICAD(アフリカ開発会議)で、日本政府はアフリカ地域に対して官民総額300億ドル規模の資金投入を約束しました。支援を行うことが、結果的に世界の平和につながることを知っていただきたいと思います。

ほり・じゅん ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX平日7:00〜)が放送中。

※『anan』2022年11月9日号より。写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

(by anan編集部)