意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「静岡水害と災害報道」です。

自治体の連携と報道の重要性を再確認した一件。

9月23〜24日、台風15号の影響で静岡県は記録的な大雨に襲われました。川の氾濫、土砂災害により、静岡市清水区の水道を供給する川の取水口が破損し、区の8割にあたる約6万3000世帯で断水し、1週間経っても半数程度しか復旧がなされませんでした。

静岡の災害に関しては報道量も少なく、自衛隊の派遣も遅れました。被害は10月17日時点で、死者3名。全壊、半壊、一部損壊、床上浸水、床下浸水合わせて8448棟です。SNS上では「なぜこの被害をメディアは伝えてくれないのか」という不満が相次ぎました。投稿された映像や画像を見ると、町全体が水に浸かり、大規模な土砂災害が起きており、山間部では孤立した集落も生まれていました。時期がちょうど安倍元総理の国葬と重なったため、さまざまな憶測や不信感を招き、静岡県が自衛隊派遣要請を行ったのが災害発生から2日後だったということにも不満の声が膨らみました。

マスコミは、各地の災害を都道府県の発表で知り取材に動きます。今回の件は、実は静岡市と静岡県の連携がうまくいっておらず、掛川市などは被害状況がすぐにあがりましたが、静岡市のみ翌日の夕方まで、被害が県に知らされていませんでした。報道も自衛隊派遣も、それが原因で初動が遅れてしまったのです。

報道のないなか、SNSを利用している人は、被害状況や給水などの情報を入手できましたが、そうでなければ、何が起きているのか、どういう支援が得られるのかもわからない状況が続いていました。これから報道は、自治体の発表と市民発信の両方を使い、いち早く伝えることが必要になるでしょう。

発生翌日に清水区に入り、取材をしたところ、飲料水は比較的入手できたけれど、トイレを流したり、体を拭くなど、生活用水が圧倒的に足りず、給水があっても何に溜めて運べばいいのかとても困ったと話していました。

静岡県は地震や富士山噴火に備えて防災訓練を徹底しています。それでも当事者になると戸惑うことが多くあったと言います。災害対策には平時からの綿密な準備と、各所連携する仕組みの必要性にあらためて気付かされます。

ほり・じゅん ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX平日7:00〜)が放送中。

※『anan』2022年11月16日号より。写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

(by anan編集部)