エリザベス・アーデンとヘレナ・ルビンスタイン。美容に少しでも興味がある人ならば、知っているであろうこのふたり。しかしそれを繋ぐのが“vs.”となると穏やかじゃない。女性の社会進出が困難だった20世紀前半に、自らの名前を冠したコスメブランドを立ち上げ、革新的なアイデアと戦略で成功を収めたふたり。互いを強く意識しながら、共に時代を切り拓いたふたりの姿を描いた舞台『エリザベス・アーデンvs.ヘレナ・ルビンスタイン‐WAR PAINT‐』で、アーデンを演じるのが明日海りおさん。

「“vs.”とついてはいますけれど、場面としては入れ違いで描かれていくんですね。あの時代に、家庭を顧みずに事業に没頭し美を追求する信念って、はかり知れないものがあると思うんです。そのふたりが互いをすごく意識し合っているのも、やっぱり相手を認めているからで、第一線を走り続けた者同士のシンパシーのようなものがある。対立しながらも、ふたりがリンクしていく部分があったりするのも面白いです」

その宿命のライバルを演じるのは戸田恵子さん。ドラマ『ショムニ』のファンだったそうで恐縮しきり。

「初対面のときこちらはすごく緊張していましたが、パワフルでとてもあたたかく気さくにいろいろ話してくださいました。取材で一緒にお話しさせていただいても、ひと言ひと言の説得力だけでなく、言葉の表現が豊かでわかりやすいんです。そこにいろいろ経験を積まれたからこその嘘のない素直なラフさも感じて、本当に素敵だなと思っています」

題材が題材だけに、コスメの話題はもちろん当時の流行を反映させたファッションなど、見どころ満載。

「ヘレナさんは絵画にも精通していますし、ミュージカルとしても、いろんなバリエーションの曲があり楽しんでいただけると思います。なにより、戸田さんがいてくださることで、お芝居がしっかり重心のあるものになると思います」

宝塚歌劇団を退団して約3年半。近年は舞台のみならず映像作品でも活躍。ドラマ『大病院占拠』のセンセーショナルな映像で視聴者数を稼ぐ動画配信者など、これまでのイメージにない役にも挑戦している。

「映像では全然馴染みのなかったような設定や役をいただいたりもするので、自分でも毎回びっくりしています(笑)。それも巡り合わせですし、純粋にいろんな方とお芝居をするのが好きなんです。現場に行って感じをつかんで演じるのも楽しいし、あとでオンエアを見て動きを研究するのも面白い。舞台に比べてお芝居する時間は短いですが、その代わり、カメラが回り始めたときの集中した空気や、テイクを重ねて徐々に熱を帯びていく感じも好きです」

役を理解し表現するという意味ではこれまでと変わりはないが、見せ方の違いにまだまだ戸惑うことも。

「声も表情も出すぎて、映像では不自然に見えるので、抑えなきゃ抑えなきゃってやっていた時期もあったんです。でも、いろんな俳優さんを拝見していると、やっぱり熱い方のお芝居に目が行くんですね。取り組み方や考えが深かったり、厚みがある方って、全然動いてなくても目から滲み出るものがあって、画面がそれで埋まってしまうくらい。それをカメラさんがどう切り取るか、監督さんがどう編集するかで見え方も変わります。私は必死に抑えなきゃって思っていたけれど、最近ようやく、そうじゃなくて凝縮するっていうことなのかなと感じ始めています」

宝塚在団中も、舞台の幕が開いてもなお作品や役を追求し続け、深く厚みのあるものに仕上げてきた人。

「もっといろんな現場を経験して学べたら嬉しいなと思っています。今回のように1クールのドラマを終えて舞台に入る経験は初めてのこと。いま自分が舞台で芝居したときにどうなるか、まったく未知なのでちょっとワクワクしているんです」

ミュージカル『エリザベス・アーデンvs.ヘレナ・ルビンスタイン‐WAR PAINT‐』 美への情熱とビジネスの才覚で、自身のブランドを全米屈指の地位に押し上げたアーデン(明日海)とルビンスタイン(戸田)。ふたりの熾烈な戦いは、やがて思いもよらぬ方向へ流れてゆく。5月7日(日)〜17日(水) 東京・日生劇場 脚本/ダグ・ライト 音楽/スコット・フランケル 歌詞/マイケル・コリー 翻訳・訳詞・演出/G2 出演/明日海りお、戸田恵子、上原理生、吉野圭吾ほか S席1万4000円 A席9000円 B席4500円 TBSチケット TEL:0570・068・489(平日11:00〜17:00)  大阪、愛知、京都公演あり。

あすみ・りお 1985年6月26日生まれ、静岡県出身。宝塚歌劇団花組トップスターとして高い人気を誇った。2019年の退団後は、ドラマ『おちょやん』『コントが始まる』など、舞台のみならず映像作品でも活躍。

ブラウス¥58,300 パンツ¥63,800(共にVINCE/コロネット TEL:03・5216・6516) イヤリング¥23,100 バングル¥71,500(共にブランイリス/ブランイリス トーキョー TEL:03・6434・0210) 靴はスタイリスト私物

※『anan』2023年5月3日‐10日合併号より。写真・佐藤航嗣(UM) スタイリスト・大沼こずえ ヘア&メイク・山下景子 インタビュー、文・望月リサ

(by anan編集部)