お金に働いてもらい、時間をかけて資産を増やそう。

「難しそう」「リスクが心配」というイメージだけで、投資を避けてしまうのは損。目的やリスクを減らせる手法を学び、支出の見直しで減らせたムダを、将来のゆとりに変えていこう。

1、お金を増やす方法として、なぜ、投資がおすすめ?

投資の第一の目的は、「儲けることではなく、自分のお金を守ること」と、ファイナンシャルプランナーの坂本綾子さん。「物価が上がれば、100万円で買えたものが100万円では買えなくなります。資産の価値を将来も維持するには、せめて物価の上昇程度には増やしていく必要があります」。過去を見ても、物価に勝ってきたのは株価。「超低金利の預金では物価に負けますが、投資を使えば年平均3〜5%で増やすことは十分期待できます」

定期預金と投資、35年後にはこんなに差が出てしまう可能性が。
毎月3万円を定期預金に積み立てると35年後には1260万4221円に。利息は4221円。一方、毎月3万円を仮に利回り5%の資産に積立投資すると35 年後には3371万円になる。

※対象が価格変動する実際の投資では成果は異なる。
出典/『ほったらかしで3000万円貯める! お金と投資の超入門』坂本綾子監修

2、“分散”“長期”“積立”。覚えておきたい3つのキーワード。

投資は元本保証がないためリスクはある。しかし、“分散”“長期”“積立”さえ守れば、初心者でもリスクを減らして手堅く取り組める。

【分散】
異なる値動きの資産を組み合わせ、安定した成長に。
分散とは、投資先を複数に分けること。一つの資産だけに投資していると、その資産の価格変動が損益に直結するが、複数の資産に分散していれば、一つが下がっても他でカバーできるのでリスクを減らせる。「具体的に何を分けるのかというと、“地域”と“資産”です。例えば、国内の株式と債券、海外の株式と債券の4つに分けるなど、異なる値動きをする複数の資産に投資することで、リスクの軽減が期待できます」

【長期】
短期的には下がっても、長期では右肩上がり。
「株価は上がったり下がったりを繰り返しながら成長するもの。短期的に下がることはあっても、長期で持つことで資産が増える可能性が高まります」

【積立】
価格が下がった時は自動的にたくさん買える。
安い時に買いたくても、相場は誰にも読めない。そこで活用したいのが、積み立てで買う手法。「積み立てならタイミングを読む必要がなく、価格が下がった時には多く買えます」

3、“分散・長期・積立”投資にぴったりなのが、投資信託。

「投資信託とは、一つの商品に株式や債券など複数の金融商品が組み合わされた、いわば資産の“福袋”。少額から買え、無理なく分散・長期・積立投資ができます」。商品に迷ったら、国内外の株式と債券が入ったバランス型を。「20〜30代なら価格が下落しても再び上昇するまで待てる時間があるので、価格変動が大きくても成長を期待できる株式比率の高いものでOK」

4、投資信託、積立投資はNISAとiDeCoで!

NISAもiDeCoも国が後押しするお得な制度。どちらも、通常の投資では利益にかかる約20%の税金が非課税となり、分散・長期・積立投資に適した投資信託を購入できる。「iDeCoは自分で作る年金。毎月積み立てる掛け金が全額所得控除になり、節税効果が高いのでよりお得ですが、60歳まで引き出せないのがネックです。ライフイベントが控える20〜30代は、いつでも引き出せて自由度の高いNISAを優先的に使うのがおすすめ」

【NISA】来年から新NISAが登場。保有も投資も一生涯できるように。

※金融庁「NISA 特設ウェブサイト」を参考に作成

現行のNISAにはつみたてNISAと一般NISAがあるが、初心者におすすめなのは積み立てでしか投資できない、つみたてNISA。「取扱商品は金融庁の定めた条件を満たす長期分散投資に向く投資信託が中心。安心して選べます」。来年からの新NISAにも対象商品は引き継がれる予定。非課税保有期間と投資可能期間は無期限になり、投資枠も大幅に増える。「つみたてNISAは今年で終わりますが、投資した分は引き続き20年間非課税で運用できます。新NISAとは別枠なので、今年中に始めるのが得策」

【iDeCo】自分で年金を作って上乗せする。強制力と税制優遇が魅力。
老後資金づくりならiDeCoが選択肢。毎月積み立てたお金を60歳以降に一括、年金、またはその併用で受け取れる。途中で下ろせない不便さはあるが、強制力が欲しい人には逆にメリットに。「毎月の掛け金は全額所得控除に使え、年末調整や確定申告で所得税と住民税を減らせるほか、受取時の税金も優遇されます。特にフリーランスなど退職金や年金が少ない人は検討を」

iDeCoの特徴とは?

  1. 税金がいろいろ優遇される。掛け金が所得控除。運用益は非課税、受取時も控除対象。
  2. 定期預金、投資信託などから自由に組み合わせられ、途中で変更も可。
  3. 毎月5000円から1000円単位で始められる。
  4. 転職、退職、結婚しても資産を持ち運べる。
  5. 60歳まで引き出せないデメリットも。
  6. 加入時や毎月の手数料は自己負担。

5、口座を開設しよう! つみたてNISAの始め方。

今からつみたてNISAを始めておけば、新NISAの口座開設は、同じ証券会社なら自動的にできる見込み。手続きが面倒でなく、取り扱う投資信託も豊富に揃う、ネット証券で始めてみよう。

【ファンドを選ぶ】
つみたてNISAで買える商品は、金融機関によって異なるため、自分が買いたい商品を決めてから金融機関を絞っていくのがセオリー。「迷ったら国内外の株式と債券が入るバランス型でスタートを。自分で組み合わせたい人は、国内株式と海外株式のインデックスファンドを選んで」

【金融機関を選ぶ】
つみたてNISAは銀行や証券会社などの金融機関が窓口。「給与口座がある銀行で始めるとラクですが、銀行は株式を販売していないので新NISAでは成長投資枠の投資範囲が狭まる点に注意。柔軟な投資をしたいなら、商品が豊富で売買手数料も安い楽天証券、SBI証券などがおすすめ」

【口座を選ぶ】
つみたてNISAの口座を開設するにはまず、その金融機関の口座を開く必要がある。証券会社の場合、ここの選択が少々複雑だが、「特定口座」の「源泉徴収あり」を選ぼう。「その他を選ぶと、もしNISA以外で金融商品を買った場合、税金の計算や申告を自分で行う必要があります」

【積立額を決める】
ネット証券の場合、IDとパスワードが届いたら口座にログインし、購入商品と積立額、積立日などを設定する。「投資信託は一つの商品内で分散が利くので、何種類も購入する必要はなし。バランス型なら1つ、国内・海外株式のインデックスファンドならそれぞれ1つずつで十分です」

【メンテナンス】
積立が始まったら、日常的にはほぼやることはない。年に1度、資産状況を確認する程度で十分。「頑張るのは、“売らない”ことだけです。資産が減っている時は相場が下がってたくさん購入できる時期。不安でも焦って売らなければ、あとで成長してきます。上級者はリバランスを」

坂本綾子さん ファイナンシャルプランナーとして20年以上活動。書籍の執筆のほか、家計相談やマネーセミナーを行う。『子どもにかかるお金の超基本』(河出書房新社)など著書、監修本多数。

※『anan』2023年5月24日号より。マンガ・サヲリブラウン 取材、文・大上ミカ(カクワーズ)

(by anan編集部)