家で食事をすることが増え、料理に合わせて器を選ぶ楽しさを感じている方も多いのではないでしょうか。陶磁器やガラス、漆器、世界各国の器など、17人の器好きたちに使い方を見せていただいた本誌No.67の特集「器と日々の生活」より、料理研究家・口尾麻美さんの器使いをご紹介します。

口尾麻美さんのキッチンは海外のエピスリーのような雰囲気。世界各国の日用品がここに集結。

世界の〝暮らしの器〞を取り入れた、ボーダーレスな食卓。

世界の料理をテーマに、旅先で出合ったレシピを紹介する料理研究家の口尾麻美さんは、現地の料理だけでなく、器も一緒に持ち帰る。自宅のキッチンには、市場やスーパー、問屋街、蚤の市などで手に入れた各国の器が所狭しと並ぶ。ベトナム、ウズベキスタン、トルコ、リトアニア、モロッコ、ロシア、フランス、イタリア、韓国、台湾、タイなど、ざっと十数か国。各国を旅しながら集めたものがほとんどだ。「高い食器は持っていません。毎日ドキドキしながら使うのはあまり好きではないので(笑)。それよりも家庭料理に登場するような素朴な器や地元のレストランで使われている業務用なんかに惹かれます」
 

10年ほど前に知ったベトナムのソンべ焼。ブルーラインは庶民の器。オールドソンべは現地でもなかなか手に入らない。
トルコのチャイグラス。「問屋街やほこりをかぶっているような古道具店で見つけるのが楽しい。言い値みたいなことも多いです(笑)
トルコのアンティークの小皿。モザイクのような柄が美しい。
洗練されたブルーの器はカンボジア製。少し歪んでいるのが味。

いま気に入っているのが、ベトナムのソンべ焼。フランス統治時代のものやブルーラインのものは、昭和の食卓にあったようなどこかレトロな佇まい。手仕事による模様がずれ
ているのもご愛嬌。また、うどんを食べる文化があるウズベキスタンの器は、赤や青、緑などの原色で描かれたアドラス柄がキッチュな雰囲気。ラフに釉薬がかけられた緑色の器はモロッコの「砂漠の器」。砂漠で暮らす人々が少しでも緑を目に入れたいという思いから作られたものだ。そんなふうに、暮らしに寄り添う器からは現地の生活が垣間見える。「料理だけでなく、その国の食文化を知るのが楽しいんです」

カラフルなウズベキスタンの器に、日本のうどんに似た「ラグマン」と呼ばれる郷土料理を。「日本にはあまりない、原色使いや柄に惹かれます」。ラディッシュにバターと塩を添えて。
こちらもソンべ焼。飯碗や平皿など、和食にも合うサイズ感。小鉢にしたり、煮物を入れたり。
〈アトリエ1627〉の器は、南仏の伝統的な器を現代風に表現。「どんな料理にも合って、我が家も出番が多い」。日本とマルセイユで購入。

 一方で、和食器がほとんどない口尾さん宅。でも「朝食はいつも和食。これに味噌汁を入れてます」。そう笑いながら見せてくれたのは、フランス〈アトリエ1627〉の色鮮やかな小ぶりのカップ。「料理教室では、国ごとに料理と器を揃えることはありますが、私の食卓ではバラバラ。使ってみてしっくりくればいいかなって」
 異国の日用品を日本の食卓にうまく取り入れ、暮らしを彩る。それこそが口尾さんの真骨頂だ。

口尾麻美
料理研究家

旅で出合った世界の料理を提案。著書に『まだ知らない 台湾ローカル 旅とレシピ』(グラフィック社)他多数。

photo : Ayumi Yamamoto edit&text : Chizuru Atsuta
※『&Premium』No. 67 2019年7月号「器と日々の生活」より

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