June.18 – June.24, 2021

Saturday Morning

Title.
光と水
Artist.
日向敏史 数年前の初夏、ある女性に恋をしました。
彼女と会う朝の時間は楽しいものでした。
この音楽を聴くと、当時の記憶を思い出してしまいますね。
先日彼女を数年ぶりに街で見かけました。
まるで時が止まったような不思議な感覚になりました。
現在と過去がすれ違っていくように、心が揺れているのを感じました。
僕らは互いの存在に気づきながらも、目を合わせることはありませんでした。
それは不思議と心地の良いもので、それで良かったと思えるものでした。
大人になってから経験する恋は、どこか爽やかな感情に包まれています。
帰り道、海岸沿いの国道を車で走りました。
この曲が車内で流れていました。
私にとって初夏の恋の思い出を優しく呼び覚ましてくれる一曲です。
アルバム『ひとつぶの海 Reality In Love』収録。

Sunday Night

Title.
宇多野
Artist.
冥丁 手前味噌で恐縮なのですが、こちらを六月の夜の一曲として選びました。
二十代の後半は、京都の嵐山周辺で暮らしていました。
伝統と非伝統が混ざりこむ嵯峨野の空気感と、人気のない夜の静けさがお気に入りでした。
ある晩、そんな日常の気配を引用した音楽を作ってみたいと思いつきました。
音楽を単なる内面的な自己表現に使うのは勿体ないと思ったからでした。
過去のヴァイナルを引用するよりも、目の前にある風景を出来るだけ引用してみたかったのです。
特別なことをしたいわけではなかったんですよね。
「宇多野」は、夜な夜な広沢池に赴き、様々な印象を引用し制作しました
先祖代々詠まれてきた広沢月詠の系譜に、御一緒させて頂くような気分でしたね。実際それは恐れ多いことですが、自国と感覚的な繋がりを持つことが重要だと思いました。些細でありながらも、いつも側にある偉大な日本の姿を今後も大切にしたいです。
初夏の夜に聴いて頂きたい一曲です。
また京都で暮らしたいと思いました。
アルバム『小町』収録。


『&Premium』特別編集
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音楽好きの“選曲家”たちが月替わりで登場し、土曜の朝と日曜の夜に聴きたい曲を毎週それぞれ1曲ずつセレクトする人気連載をまとめた「&Music」シリーズの第2弾。 小西康陽、青葉市子、七尾旅人、長田佳子、テイ・トウワ、中嶋朋子……、 23人の選曲家が選んだ、週末を心地よく過ごすための音楽、全200曲。 本書のためだけにまとめた、収録作品のディスクガイド付きです。 詳しくはこちら


電子音楽家 / 音楽プロデューサー  冥丁 / MEITEI

先一昨年、民間伝承の新解釈として『怪談』を発表し、藤田は冥丁として活動を始めました。翌年、日本の夜を表現した『小町』を発表し、2020年には、古美学乃風刺と題した『古風』の発表へと続きます。いずれの作品も彼の美意識に基づいて制作された珠玉の音楽作品になっています。 *冥丁 - 藤田による日本の印象を音楽にするプロジェクトの呼称。