July.23 – July.29, 2021

Saturday Morning

Title.
Reason To Believe
Artist.
Karen Dalton カレン・ダルトンの歌声を初めて聴いたとき、身体が「わ、これ知ってる」と直覚した。「好き」とかの感情を超える直観の出合い、きっと誰にでもあると思う。
だから、大好きなジャケットの「1966」は、レコードプレーヤーの横にしまわず作業場に置いている。絵を描きながら、チラと視線をやっては「ともだち」みたく思っている。
アルバムを2枚だけ出して消息を絶った彼女は、ステージで歌うというより、歌いたいときに歌いたい歌を歌いたい分だけ歌う、そんなミュージシャンだったんじゃないだろうか?
アメリカン・インディアンの血をひく彼女の根源から聴こえるのは、ひとりの域を漂わせる歌声。平日はたくさんの人に会う。
だからこそ、ひとりの時間をゆったり味わいたい土曜の朝に、素朴で飾らない孤高の歌声を。
アルバム『1966』収録。

Sunday Night

Title.
I Remember
Artist.
Molly Drake 「I Remember」を聴いていると、モリー・ドレイクの心象風景にワープする心地になる。綴られた光景と時間とナイーブな感情が、次々立ち上がってくるよう。
例えば「私が覚えているのはオレンジで、あなたが覚えているのは埃」という詩なんてとても綺麗で、この2行だけで私は絵が描きたくなる。
いつまでも続くと思っていた夏、一緒の景色を歩いていても、それぞれに見ていることも覚えていることも違う。
「we」だった私達は「you and me」だった——。
もともと家族に聴かせるのみだった彼女の歌は、ご主人が自宅で録音したらしく、各曲歌い終えたとき彼の声もかすかに聞こえる。
とある回想にしばし耳を傾けた気分になる1曲。そして自分の思い出もほんの少しだけ振り返る。
『The Tide’s Magnificence: Songs And Poems Of Molly Drake』収録。


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画家 平松麻

1982年生まれ、東京都出身。油彩画を主として展覧会での作品発表を軸に活動する。2020年6月〜2021年末まで、朝日新聞夕刊連載小説、柴田元幸新訳「ガリバー旅行記」の挿絵を担当中。森岡督行『本と店主』(誠文堂新光社)、村上春樹・アンデルセン文学賞受賞の講演テキスト『MONKEY vol.11』(SWITCH PUBLISHING)、穂村弘『きっとあの人は眠っているんだよ 穂村弘の読書日記』(河出書房新社)、三品輝起『雑貨の終わり』(新潮社)など挿画も手掛ける。マッチ箱に絵を描くシリーズ「Things Once Mine かつてここにいたもの」も発表中。