生クリームがたっぷりかかった苺ケーキ、キウイやパインを挟んだフルーツサンド、焼きたてマドレーヌに、ブランデー入りチョコレート。それらをレースペーパーに載せた姿を思い浮かべるだけでうっとりする。
 真っ白な(時にはゴールドやシルバーの)レースペーパーの繊細な切り抜きの中に浮かび上がるバラの花や、型押しされた蔓草模様の美しいこと――それが百円ショップの品だろうとも! ――一度レースペーパーを使えば、もうポテトチップスからフライドチキン、遂には柿の種やらさきいかまで、あらゆる食べ物をその上に載せたい誘惑に駆られてしまう。そうしながら私は、世のおばあちゃんたちがドアノブからピアノや黒電話まで、みんなレース編みで覆ってしまう気持ちを理解する。そう! レースはいとも簡単(ピース・オブ・ケイク)な魔法なのだ。レースさえあればどんなものも、醜いものさえ美しく見える(はず)。
 私は今日もレースペーパーの上に載せる品々を妄想しながらいつしか、載せるを凌駕し、何もかも包んで覆いたくなってくるのかもしれないと、考える。

左・中/ボストンのマーケットで見つけたシルバー(ゴールドもあり)のFancy DOILIESとRoyal Lace。王室風なイメージですがどちらもアメリカ製。右/エストニアのスーパーマーケットで購入したフィンランド製∅10㎝。

edit : Kisae Nomura
※この記事は、No.33 2016年9月号「&STATIONERY」に掲載されたものです。

&STATIONERY


作家・マンガ家 小林 エリカ

シャーロック・ホームズ翻訳家の父と練馬区ヴィクトリア町育ちの四姉妹を描いた『最後の挨拶 His Last Bow』(講談社)発売中。2021年夏、はじめての絵本『わたしは しなない おんなのこ』(岩崎書店)が発売。