May.20 – May.26, 2022

Saturday Morning

Title.
Pitorouchka
Artist.
Agnès Chaumié 3回目の土曜日の朝は、フランスの童謡を紹介したいと思います。童謡と言っても侮ることなかれ、アニエス・ショーミエは長年に渡って幼児向けの音楽を専門にしたアーティストで、フランスらしい単純で明晰なメロディーを、驚くほどクリエイティヴな演奏と歌で聴かせてくれます。この「ピオットルシュカ」という曲は、おそらくロシア起源のメロディーでしょう。文化的な繋がりは私たち個人の人生より遥かに古く深く、現代人の都合だけで戦争をして良い理由などは無いと、過去と未来へ思いを馳せながら平和を願う朝です。このアルバム「私の小指が言いました」では他にも「ヒバリ、やさしいヒバリ」、「農家の娘」など有名な可愛い童謡も聴くことができます。
アルバム『Mon Petit Doigt M’a Dit』収録。

Sunday Night

Title.
Rachenitza Op.18
Artist.
Pancho Vladigerov / Svetlin Roussev / Elena Rozanova 僕は最初に学んだ楽器がヴァイオリンでした。ヴァイオリンを習ったことがある人には分かる、楽器を手にした途端に心が激しく動いていく感覚を伝えてくれる曲です。ブルガリアのユダヤ系作曲家、パンチョ・ヴラディゲロフ(1899-1978年)によるヴァイオリン小品で、この曲はヴァイオリニストにもほとんど知られていません。楽器の駒(ブリッジ)の近くで奏される冒頭の主題(メロディー)はユダヤ的な哀愁があり、次第にラプソディックな展開をしていきます。日曜の夜に聴くと、夜闇に紛れて心だけが遠く旅をしにいく気持ちになります。ブルガリア出身でフランスに学んだヴァイオリニストによる演奏も素晴らしいと思います。この曲を通じて、東欧やユダヤ系のヴァイオリン文化の豊かさをあらためて知ることになりました。
アルバム『Pièces Pour Violon Et Piano』収録。


『&Premium』特別編集
『&Music/土曜の朝と日曜の夜の音楽 Ⅱ 』 好評発売中。

音楽好きの“選曲家”たちが月替わりで登場し、土曜の朝と日曜の夜に聴きたい曲を毎週それぞれ1曲ずつセレクトする人気連載をまとめた「&Music」シリーズの第2弾。 小西康陽、青葉市子、七尾旅人、長田佳子、テイ・トウワ、中嶋朋子……、 23人の選曲家が選んだ、週末を心地よく過ごすための音楽、全200曲。 本書のためだけにまとめた、収録作品のディスクガイド付きです。 詳しくはこちら


作曲家 阿部海太郎

クラシック音楽など伝統的な器楽の様式に着目しながら楽器の今日的な表現を追求し、楽曲のみならず、コンサートの企画やアルバム制作など、すぐれた美的感覚と知性から生まれる音楽表現に多方面より評価が集まる。舞台、テレビ番組、映画、様々なクリエイターとの作品制作など幅広い分野で作曲活動を行う。音楽を手掛けた作品に、インバル・ピント&アブシャロム・ポラック演出『100万回生きたねこ』、『百鬼オペラ 羅生門』、森山開次演出・振付『星の王子さま ーサン=テグジュペリからの手紙ー』、NHK『日曜美術館』テーマ曲、ドラマ『京都人の密かな愉しみ』など。最新アルバムは『Le plus beau livre du monde 世界で一番美しい本』。 Photo : Takashi Homma