四季折々に迎える歳時記を、京都の花屋『みたて』が植物を通して表現。一つの作品を通して、京都ならではの生活が見えてきます。

 

水盤に描く「初夏の額縁」。

 蒸し蒸しと蒸せる京都の6月、目に涼をもたらしてくれるのが夕暮れに飛び交う蛍の姿。大原や貴船、高雄といった郊外はもちろん、岡崎あたりの白川、哲学の道、下鴨神社といった街中でも目にすることができるのは、自然との距離が近い京都の魅力でもある。源氏物語の第25帖「蛍」には暗い部屋で光を放つ蛍が印象的に描かれ、和泉式部は夫との復縁を祈願に訪れた貴船神社で蛍を目にして「もの思へば 沢の蛍も わが身より あくがれいづる 魂かとぞ見る」と詠んだ。現代はもちろん、古く平安時代にも蛍は京に暮らす人々にとって心を揺さぶる存在だったのだ。
 5月の下旬から6月中旬にかけて蛍の姿を存分に眺めたあとは、蛍からイメージを膨らませた『みたて』初夏のあしらいを愛でたい。ホタルブクロは鐘のようなふっくらとした花を咲かせる野の花。かつて子どもたちが花の中に蛍を入れて光らせ遊んだことから、その名がついたとも伝わる。ホタルブクロの花を一輪、そっと置いたのは古い伊万里の水盤。縁を額縁に見立て、緑から黄、赤へと色づく小梅で初夏の彩りを添えた。可憐な白い花は色とりどりの梅の色で、一層際立つ。蛍の季節が終わってもなお、思いを馳せ、名残を楽しませてくれるあしらいとなっている。

photo : Kunihiro Fukumori edit & text : Mako Yamato
*『アンドプレミアム』2019年8月号より。


花屋 みたて

和花と花器を扱い、四季の切り取り方を提案する京都・紫竹の花屋。西山隼人・美華夫妻がすべてを分担し営む。